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本で釣れました~冒険者令嬢は恋愛よりも本をとる  作者: 東川 善通
冒険者令嬢はリリースを希望します
13/20

こぼれ話:兄妹似るものです


※ベルトラン視点

※ベルトランの学生時代の話


 講義室に入った瞬間、俺の口からは溜息が漏れる。あからさますぎんだろ。

 階段状になった教室。前の方にギュッと固まる生徒。ちらちらと後ろを振り返ってはくすくすと笑う声。


「別に後ろの方でも問題ねぇんだけどな」


 板書が見えないこともねぇし、声も聞こえないってこともねぇ。というわけで後ろの方でも全く問題ねぇ。むしろ、後ろの方で万々歳だ。

 前の席の連中たちとは違って、人がいない分、広々と使える。隣の席を気にしなくてもいい。気を遣う必要がない。

 ダメな点を挙げるとしたら、友人ができねぇってことだろうな。ま、ウチのような貧乏貴族とは関わりたくねぇってことだろうがな。


「よかった、後ろの席空いてるじゃないか」


 そう言って、俺の隣にわざわざ腰を下ろした変わり者がいた。


「レオ」

「皆、全体的に散らばればいいのにね」


 折角、広いんだから勿体ないよねと笑いながらいうソイツはこの国の王太子であるレオカディオ・リヴァングストン。王都に来てできた今の所唯一の友人。寂しい奴とかいうな、わかってるから。普通だったら、友人という関係にもならないだろう正反対の立場だが、俺が王太子だというのを知らずに声をかけたことがきっかけで友人になった。まぁ、世間知らずだったからな。


「それにしてもわざわざ皆で示し合わせてるのかな?」


 そうじゃなきゃこんなあからさまな光景になってないだろうな。小さく返事をするように呟けば、くだらないねと苦笑いをレオは零す。


「レオも誘われたんじゃないのか?」

「ん? まぁ、そんなことも言われたような気がするけど、ベルと一緒の方が楽しいからね」


 正直、覚えてないというレオ。勇気を出して誘ったやつが可哀想だな。そんな言葉を交わしていれば、教員が講義室に入ってきた。ちらりとこちらを見たが特に何も言うこともなく、存在などなかったかのように授業を始めた。


「意識改革は必要かもね」


 小さくそう呟かれたレオの言葉に俺は無駄じゃないかとも思った。スティングラー家はいいイメージを持たれないように動いてきたのだからこのままでいい気もするが、妹アルセリアの将来のことを考えると悩ましい所だな。

 授業を聞きながら、俺は講義室で浮遊する精霊たちを眺める。階級の低い奴ららしくはっきりした姿を持ってない。ぷわぷわと色とりどりの光の玉が浮いている感じだ。まぁ、レオの精霊はくっきりしていて子獅子と子狐の姿をとっている。たまーに俺にじゃれ付いてくるのは勘弁してくれ。遊んでやりたいのは山々だが怪しい奴になるから。


「……ん?」

「どうかした?」

「いや、何でもない」

「そう? 分からない所があったら聞いて。ここらへんはもう履修済みだから」

「あぁ」


 ちょっと気になるやつがいて、思わず口に出てたらしい。レオに声をかけられた。まぁ、精霊の事でもあったから、何でもないと言ったが、レオからしたら授業で分からない所があったのだと思ったらしい。履修済みなら出る必要がないだろうに。いや、個別授業だけでは得られない経験を積ませるためか。

 それはともかく、気になるやつを改めてみる。はっきりとした輪郭を持っているからかなり階級の高い精霊だな。にしても、ドラゴンっていうのは珍しい。……ぐでーんと主人の頭の上でゴロゴロしてるが。


『パルウィン家の跡継ぎか。いい精霊を持ってるな』


 そう言ったのはレオとは反対に座る深紅の髪に橙の目を持つ女騎士サラがそう感想を零す。血の流れ的に俺の曾祖母ではあるが、サラは精霊なんだからな。余談だがスティングラーの血は死後精霊に昇格するらしい。サラがなっているし、初代もなっているから間違いなくそうなんだろうな。

 それにしても、ドラゴンを頭に乗せている奴、ルーサー・パルウィンは公爵家の跡取り息子。火の魔法が得意で、剣術も優秀。将来は騎士団に入るだろうなんて言われている。とまぁ、噂程度に聞いた話だが。

 ドラゴンという姿が珍しくて眺めていたら、ばちりと目が合った。呆然とこちらを見つめたかと思うと突然、にたぁと笑う。

 いやまて、なんだそれ。だいぶ、ブサイクだぞ。隣ではやっばい、ブサイクすぎと爆笑の声が聞こえる。俺も思いっきり笑いたいところだが、無理だ。辛い。

 よし、見なかったことにしようとレオの方を向いたら、いつの間にjかレオの頭に移動してきていたらしいブサイクドラゴン。


「ふんぐッ」


 レオの頭の上で変顔をするな。吹き出しそうになって耐えるために机に伏せたが耐える声はレオには聞こえていたらしい、心配される。


「ベル、どうしたんだ? 大丈夫かい?」

「だ、だいじょぶだ。ちょっと気管に唾が入った、だけだ」


 吐き出すようにけほけほと咳の真似をする。ちらりとドラゴンをみたら、ゲラゲラと笑った後にルーサー・パルウィンの許へと戻って行った。あの野郎、覚えてやがれ。






 その後、ルーサーと友人になり、俺はドラゴンの変顔に悩まされることになる。いい加減にしろよな、くそドラゴン。






 そして現在。


「コーエン、それ、やめて、ズルい」


 執務室でゲラゲラと笑うルーサーと変顔を披露するドラゴン。俺はこれをどう処理すればいいんだ。つーか、アル、お前、責任持てよ。


『ちなみにアルちゃんもベルちゃんも陥落した顔はこれー』

「やめてー、お腹捩れるー」

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