第84話 高額スキル
休憩もそこそこに2区画ほど北にある創成川公園にて偵察隊と合流した。
「無事でしたか。さいとーさん。ルイさんも」
「はい。なんとか」
少しだけ安堵した顔を見せた田辺さんカイザーだが、硬い表情から厳しい状況が読み取れる。
「女帝エンプレスと市松君イキリトの2名がデスペナとなりました。数匹の幻影蛾ミラージュモスもイースト界にトレインしてしまっています。バーニングのマスターおよびモモカさんには即時イースト界の立ち入り禁止措置の周知をお願いしました」
「……了解いたしました。今回無念にもデスペナとなった方には冒険者ギルドからEP補償をしておきます」
「蛾も上手く3日間くらいで消えてくれるといいのですが。イーストのモンスターでは相手にならないと思います」
今回の威力偵察クエストでは参加報酬1万EP、デスペナ者には3万EP補償の条件としていた。市松君イキリトは前回のイースト攻略でも参加してもらったサポートメンバーの1人だ。
エーテル圧の低い界に侵入したモンスターは時間が経つと自然消滅するらしい。しかし、消滅までに主を獲られる可能性もある。
「後はモモカの手腕ですか」
「そうですね。一当てした感じですと、どちらにせよ少しずつイーストに釣って削っていく勝負になると思います。イースト界も上級界にしておいた方がいいかもしれません」
「カイザー、私からもいいでしょうか?」
デスペナを食らったのに蚊ほども感じていないかのようないつもの表情で脇に立っていた佐藤女史エンプレスがここで口を開いた。
「何故今まで敵の情報がなかったのかはさておき、魔法による遠距離攻撃に、単純な物理攻撃の無効。本格的に魔法使いの運用を考える必要があるのではないかと思います」
たしかに、中級風魔法の風幕ウィンドベールなら初級魔法は防げるし、ふわふわと物理攻撃を躱してしまう幻影蛾も攻撃魔法なら当たるだろう。
しかし、ヘイト管理もできないとなると魔法使いでは中々厳しい。
「そうですね。物理職も上級スキルの取得が必須になるでしょう。魔法使いも……どうしましょうかね」
上級技スキルにヘイトを稼げるものがあるんだろうか。後は必中スキルとか。ありそう。
「私は次は魔法使いビルドでいきます」
おお……初めての魔法使い希望者。佐藤女史エンプレスは思い切りがいい。流石、女帝。
「公表していませんでしたが、実は魔法使いには先があります」
……え?
こちらに視線を向け、佐藤女史エンプレスが続ける。
「四大属性を全て買うコンプリートすると火と水に特効の氷属性と、地と風に特効の雷属性が現れます。これも必須になるかと」
なんだか皆、なんやかんや隠し事してんな。なんだそりゃ。
「各100万円ですが」
俺は、再び吐き気を催した。
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