第82話 帝、揃い踏み
ススキノ界の攻略計画では2週間かけて計4回の威力偵察の後、1ヶ月間の準備期間をとり、北海道外からも助っ人も呼んで攻略開始となる。もちろん冒険者ギルドの運営や自分たちのレベルアップも並行だ。
冒険者ギルドの土日昼間の受付バイトにはモモカが立候補してくれた。時給は千円だ。
しかしながら、モモカはイースト界の主でありプレイヤーとの取引ができないため、必要に応じて徒歩1分の自分を呼び出してもらう形になった。行ったり来たりが面倒なので餃子バーの屋根裏部屋に居座りそうではある。HPを作ったりなんだりとPCでの作業もまだまだ多いし、モモカを一人で置いておくのも防犯的に不安な面もあるので丁度いいと思う。冒険者ギルドの認知度アップのために界主受付嬢としてSNSも始めてもらった。
冒険者ギルドへの登録は、ギルド員に住所氏名とスマホの個人間送金アプリを登録してもらい、報酬の受け渡しは現金を扱わずとりあえず個人間送金アプリで一元化することにした。初日で30数名の登録があり、この3日間で200名を超えた。良いスタートとなったがマスターからは「他のお客さんいるのにそんなにさばけないわー」とクレームがあり結局夜も自分が餃子バーの屋根裏部屋に居座ることになってしまった。
他の人たちがイースト界で稼ぎだしたのを横目に、ギルド業務で忙殺されているうちに田辺さんがやってきた。
「順調そうですね、斉藤さん。攻略計画も拝見しました」
「少しバタバタしてますね。早く落ち着きたいところですね」
「女帝がいるって聞きましたが......」
女帝 マーチネット 京都の上級界を統べる主として君臨していた彼女は女帝の二つ名を持つ有名プレイヤーだ。
数々の技スキルを保有しているだけでなく4大属性魔法の上級までコンプリートしている変態な彼女は、言わずもがな主の座を禅譲し初期値ステータスで出向してきた佐藤女史だ。
「......嬉々としてプレイヤーライフを楽しんでるみたいです」
「......それはよかったと言っていいのですかね?」
「冒険者ギルドのアドバイザーとして助かってはいますね」
「一応、今後の国の予算編成にも関わるんですけどねぇ」
「上には上手くやるから早く詠唱短縮をとせっつかれてますね」
「......なるはやでお願いします」
「......善処します。ところで明日の偵察メンバーに編成してしまっていますが大丈夫そうですか?」
「もちろんです。そのために来ましたから!」
「では明日14時集合ですのでよろしくお願いします」
「はい!ではまた明日!」
去っていく後ろ姿からも、満ちたやる気を感じる田辺さんは心なし若返っているかのようだった。
若干流れに置いて行かれている感はあるが、自分もただ作業に忙殺されていただけではない。
何もしなければノンアクティブな炎狐しかいなくなった今のイースト界でなら、消火を使えばどこからともなく炎狐を呼び出せて、ホテルの部屋から出なくてもEPを稼げるのだ。
―STATUS―
Name: さいとー
HP: 150 / 150
MP: 250 / 250
LC: 100
EP: 249332
ちょこちょこと暇をみつけては火矢連発で炎狐を瞬殺してきたのだ。EPも25万あれば突発的なEP買取希望にも対応できるだろう。
まずは明日の威力偵察でデスペナルティを食らわないことだ。
「......俺、明日の威力偵察を乗り切ったら、EP売って火魔法上級を買うんだ」
俺は、佐藤女史が上級魔法を持っていることに少しばかり対抗意識を感じていた。
カクヨムコン5に挑戦中ですので、カクヨムアカウントをお持ちの方はあちらも応援よろしくお願いします!
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888380619
カクヨム、待ラノが若干先行してます。




