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第78話 ススキノ火災その後


「では今後の計画からお願いできますか?」


 眼鏡越しの冷めた眼差しと硬質な声が有無を言わせない雰囲気だ。面倒なことになってきた。


「明日、提出します」

「お願いします」


 ススキノ火災から1週間、燃えはしなかったもののススキノの自宅に避難勧告が出て立ち入り禁止になっていたり、北海道庁に役人達の対策室が設置されて田辺さん(カイザー)もやってきたり、冒険者ギルドに正式に発注があったりで、めまぐるしく過ごすなかで1番の面倒はこの発注確定とともに内閣府から管理官として冒険者ギルドに出向させられてきた佐藤女史だ。うちにはまだ内勤する事務所などないのにだ。


 ぴっちりとしたダーク系パンツスーツに身を包み、化粧映えしそうなのにスッピンメイクと公務員然とした彼女だが、面倒なことにクソ(Another)ゲー(Dimension)上級者だった。面倒なことこの上ない。


 普通、こういう時って中身も知らない偉そうな奴が派遣されてくるのがセオリーだろう。


 なんでガチで中級界の経験値効率がどうたら、冒険者ギルドの損益分岐点がどうたらの話までせねばならぬのか……解せぬ。


「それはそれとして個人的に詠唱短縮獲得支援を発注したいのですが」


「それは……もう少し体制が整うまでお待ちいただけますか」


「……優先度をもう少しあげていただけませんか? ギルドにも悪い話ではないでしょう。スケジューリングをお願いします」


「前向きに善処します」


 職務より自己強化に前のめり過ぎる。表層心理のスカウターは、硬い外殻の内側は巨乳美人さんであるとアラームを上げているがどうでもいい。手の内を明かしたくなさ過ぎる。


「……ではそろそろ出ましょうか」


「そうですね。ホテルは同じところに変更しましたので、冒険者ギルドメンバーとして戻ってから飲み直しましょうか」


 グイグイ来る。自分の評価基準が確立していて自分が認めた能力しか評価しないタイプの非常に厄介なパターンだ。


「いえ、計画を立てねばなりませんから」

「期日は切っておりませんが」

「いえ、明日には」

「上への報告は適当にやっておきます。それより詠唱短縮の優先度を何とかしていただきたいのですが、その辺は戻ってからお話ししましょうか」

「そうですね。……明日には何とか」


 グイグイ来る。人選ミスやろ。何なのこの無表情で職務プレッシャーを纏うガチ勢。すげーやりにくい。


 俺はこの粘着質な何かをどう撒くかを深刻に考え始めた。これ以上のプライベート浸食はマズい。


 俺は自覚している。



 勘違い体質なのだ。


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