第67話 捻くれた報い
寒い……。
頬から伝わる痛むような冷たさに目を覚ます。
身体を起こすとずきりと頭が痛んだ。喉の渇きと胃の不快感が、アルコールが半端に代謝されて残留していることを示している。
どうやら床で寝ていたようだ。
ベッドに目をやると、二つあったベッドがくっつけられている。
合体したベッドの真ん中で大の字に寝るピンクのキャミソール姿のルイさんと、両脇にすっぽりと収まるようにカオルさんとモモカがルイさんの肩を枕に眠っていた。
百合百合が山脈を押し上げる良い眺めではあるが、どうしてこうなった。
なぜ、俺は床で寝ているのだ。
……帰ろう。
明かりを落とし、書き置きを残してホテルを後にした。チェックイン時に料金は支払い済みだし、オートロックなので問題ないだろう。
朝日が昇り始めた空は、突き抜けるような晴天だった。
車も歩行者も疎らな、どこか現実感のない殺風景な札幌駅を横目に、俺はゲームを起動する。
「激情。渇望。内なる衝動。火矢」
目に映った敵を、ただひたすら狩る。
獲得したEPを最大MPに振りつつ、ただひたすら狩る。
狩った。
多くなってきた人を避けるように札幌駅北口地下歩道に侵入し、狩った。
地べたを這い回る虫のように、半ば機械のように狩りまくった。
報われない。
そうだ。俺はいつも報われない。
俺のことを公平に評価してくれる人間はいなかった。過去も現在も。そして恐らく未来でも。
だから今もこんな所でこんな事をしている。
鬱々とした気分で敵を探し求め、ただひたすら狩る。
「……火矢」
そして、俺は報われてしまう。
人間にではなく、このクソゲーに。




