第56話 継続検証の断念
朝風呂に入って朝食バイキングを堪能していた俺は悩んでいた。
昨日の5時間詠唱しっぱなしの検証作業に、いい加減嫌気がさしていたのだ。もう一泊して検証を続けるか非常に迷っていた。
チーム的には耐火くらいまでは詠唱短縮を獲得しておくべきだ。
しかし、5時間独りで喋りっぱなしは想像以上にこたえていた。毎日コツコツ1時間とかじゃないと集中力も保たない。
「⋯⋯引っ越すか」
会社を辞めてしまえばススキノに住む必要もなくなる。物も少ないので引っ越し費用もそれほどかからないだろう。
とりあえず、掃除の雑音が大きくなってきたホテルをチェックアウトした。
田辺さんとイーストメンバーに、300回で消火の詠唱短縮を獲得した事をスクリーンショット付きで報告すると、皆の反応が凄まじかった。やはり隠れ魔法所有者は多いらしい。
最大MPが少ないと自然回復が間に合わず、苦行時間が延びてしまうので挑戦する際は気を付けて欲しい。
最大MPが170になった俺でも分間MP8しか回復しないので、消費MPが多い魔法の検証作業には二の足を踏んでいる状況なのだ。
―Skill―
火球 cost: 8
消火 cost: 10 詠唱短縮
火矢 cost: 15 詠唱短縮
耐火 cost: 18
石礫 cost: 10
耐土 cost: 15
土槍 cost: 18
土壁 cost: 22
力水 cost: 10
濃霧 cost: 15
癒水 cost: 20
霧域 cost: 22
突風 cost: 6
無風 cost: 10
竜巻 cost: 16
風幕 cost: 20
現状だと、火球か突風くらいしか試す気になれない。先が長い。
耐火はボス戦である次の土曜日までに詠唱短縮が出来ていると、再詠唱時間だけでなく、詠唱文が短くなると詠唱成功率も上がるためMP効率が良くなってチームに貢献できるだろうが⋯⋯一気にやろうとすると恐らく倍の10時間耐久レースだ。
杖効果で消費MPが減ると言っても2分に1回詠唱でもMP回復量が足りないから、もっとかかるのかも知れない。
引っ越すにしても明日からとはいかないので、毎日2時間、低難度界のカラオケボックスにでも通うか⋯⋯。昼間は安いし、それなら何とかやれそうだ。
気晴らしとEP稼ぎに札幌駅北口地下歩道に潜ってみたが、詠唱短縮の火矢ならサックサクで、敵が足りないくらいだ。一息で詠唱でき、詠唱失敗もほぼ無い。
中級火魔法の火矢の詠唱短縮を獲得した効果は大きかった。
これなら狩場を変えてもいいのかも知れない。敵が近づいてくる前に2発はいける。
まずは、長期休暇になると高難度になってしまうホクダイよりも安定して稼げる界を探してみる事にした。不動産屋はその後だ。




