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第40話 明日の敵は今日の友


 ガランとした部屋に、買い込んだ生活物資を下ろす。本当に何もない部屋だ。


 明日からはここが生活の拠点になる。


 空虚な空間に、そこはかとなく感じる不安感。スマホの電波強度が不安定に動き回っているのが余計に増長してくる。


「⋯⋯帰ろう」

 俺はかぶりを振り、明日からの我が家を後にした。



 日曜日は独り身には晩飯の選択肢が少ない。

 定休日で閉店している餃子バーを尻目に、同じフロアにある串揚げ屋さんを今夜の晩酌処にすることにした。


「生、下さい」

 カウンターに案内されたので、とりあえずビールだ。揚げ物にはビール。炭酸で腹が膨れて食べすぎ防止にもなる。……多分、気のせいだが鉄板だ。


 席毎に伝票が置かれており、頼みたいものを自分で記入する方式の様だ。これはこれで楽しい。一本80円からとリーズナブルで、おでんまである。

 晩飯で油ものは胃もたれするので避けがちなのだが、たまにはいいだろう。


 80円の豚カツと120円の鳥肉大葉巻と紅しょうがをオーダーし、お通しのキャベツを齧る。


 ビールを喉の奥に流し込みながら、AnotherDimensionクソゲーの攻略サイトを徘徊する。アイテムやEP等、ゲーム内の相場が分からないと取引で失敗する可能性があるのだ。ある程度はつかんでおきたい。


「……流石はクソゲー」

 公式HPでEPをリアルマネーで売っていた。1EPあたり10円だ。……まぁ買う人いるなら運営も売るか。

 面白いのは買取もしている。1EPあたり3円で買取だ。ゲーム内通貨相当をリアルマネーで買い取るというのはどういう理屈だろうか。ゲーム上のデータなのだから運営ならいくらでもコストを掛けずに増やせる立場なはずなのだ。それを金を払って買い取る?


 考えても答えが出るものではないので、さらりと流してQ&Aなどを斜め読む。

 プレイヤー同士の取引だと顔を合わせる距離まで近づく必要があるが、運営との売買は流石に距離が関係ない……と思いきや「お近くのNPC商人とトレード下さい」とあり、相変わらずNPC商人いない僻地とかに優しくなかった。儲ける気があるのかないのか甚だ疑問だ。


「熱っ……」

 ソースの二度付けをしない様に気を付けていた紅ショウガの串揚げが、マグマの如く口内を熱気で蹂躙していく。


「……うまっ」


 明日、口の中がベロベロになっているだろうが、よいのだ。俺はこの瞬間を生きている。


「……追加注文、これでお願いします」

 120円の椎茸と150円のカマンベールで追撃戦だ。

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