第31話 主としての決意表明
「モモちゃんは界の主についてどの位知ってる?」
ルイさんが切り出した話題はそのうち聞き出そうと思っていた話だった。界の主の情報はネットで検索しても中々見つからない。
「え、えっと、上手く経営すれば稼げるってネットで見ました! 私、みんなの役に立つ仕事をしたいんです!」
「なるほど。YouTubeの口当たりの良い情報ね。それはまず忘れてね」
ルイさんが教師モードだ。コンタクトやめて眼鏡にすれば良いのに。脳内画像合成完了、スーツ似合う。間違いない。
「主である事を公開するのは実際のところデメリットの方が大きいの。あんなYouTubeの情報は初心者の主を嵌めるための情報ね」
嵌めるメリットなんぞあるんだろうかと疑問に思ったが、周りが神妙な表情だったので、したり顔で頷いておく。
「え、えっと⋯⋯嘘だって事ですか?」
「嘘ではないけど、都合良い事しか言ってないわね」
「そっ、そうなんですか!」
ネットの情報は大体そうだ。裏取りができない情報は鵜呑みにしてはいけない。主の情報は裏取りのできない情報がほとんどだったのだ。確信が持てない。
「まず、稼ぎだけど大まかに3つ。即時回復アイテムとかのリアルマネー課金アイテムの販売差益。協力店の広告費キックバック。そして、運営主催の討伐イベントの報奨金ね」
運営主催の討伐イベント⋯⋯そんなものもあるのか。
「面が割れていると、リアルマネー課金アイテムと広告費は⋯⋯安くしろと言われてウザいわ」
あー。そらそうだわなー。大した仲が良くなくても、とりあえず言ってみて安くなればラッキーみたいな奴はどこに行ってもいるしなー。
「そして報奨金イベントは⋯⋯失敗すると暴走して隣接界にもスタンピートを引き起こすの。討伐イベントでは一段上の敵が出て、上級であるほど報奨金も大きいんだけど、討伐に失敗するとそれまでの敵が逃げ出して、隣接界に流れ込んじゃうのがスタンピートね。上級で討伐失敗しちゃうと、ススキノみたいに迂闊にプレイヤーが間引きもできない超上級の界になって電波障害よ。エーテル圧を下げられない魔境になるの」
うはー。話が繋がってきたけど。うっはー。クソゲー感ハンパねー。やろうと思えば人為的にエーテル暴走も可能って事か。エーテル圧はよく分からんけども。
嵌める嵌めないの話も、恩を売っておいて課金アイテムの差益寄越せとか思い浮かんでたけど、そんな可愛い話だけじゃねーな。育てたプレイヤーの引き抜きなんかも日常茶飯事でありそうだ⋯⋯。
「主が積極的に周知してプレイヤーを集めやすいのは、主が顔出しするメリットではあるけどね」
流石にモモカも神妙な表情だ。
「モモちゃんはどうする? 顔出しして上級の稼げる界を目指すか、ドーリみたいに顔出ししないでそこそこの界にしていくか」
「わ、私は⋯⋯」
俯いたモモカが顔を上げた時、幼い風貌には似つかわしくない、決意のこもった眼差しを伴っていた。
「私は⋯⋯わっ、私を使い捨てた人達を見返したいっ! だ、だから、上を目指したい!」
それはモモカの、腹に秘めていた決意表明だった。
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