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第24話 ホクダイ界の地下


 俺の目的地は、札幌駅北口地下歩道。札幌駅北口の広場を囲む様に、地下に作られた歩行者用通路だ。

 ここは南北に延びた縦の歩道は歩行者が多いが、東西の横の歩道は歩行者が少なくガランとしている。


 ここならば⋯⋯。


 ゲームアプリのロビー画面から界IDを参照し、ホクダイ界である事を確認する。やはりここまでホクダイのエリアなのだ。


 北海道の高難易度帯と言われているホクダイだが、先日ルイさんに聞いたところによると実情はやや異なる。


 正しくは「学生の長期連休期間中のみ高難易度帯」である。今現在は火矢ファイアアロー一撃で屠れる非アクティブで低レベルな敵が徘徊するエリアだ。


 ここならば、3分に1体ペースでソロ狩り余裕なはず。

 念の為、攻略サイトで出現する敵情報の裏取りをしつつ、フィールドに入る。


 敵影無し。


 流石に見えない敵は倒せない。少し移動しよう。


 スマホをキョロキョロと左右にかざしながら不審者の様に歩く。無駄に広い地下歩道だ⋯⋯。



 しばらくいくと、しゃがみ込んだ小学生高学年くらいの女の子がいた。

 詠唱を聞かれたくないので足早に通り過ぎ様と思ったが、スマホの画面上では4体の脚が多い甲虫にわさわさと囲まれている。


「⋯⋯もし? 助けは必要?」


 顔を上げた涙目の眼鏡っ子がブンブンと首を縦に振った。眼鏡がブンブンしている。


 射線になるべく敵が入る様に位置取る。


「アロースタンバイ」

「イー・アスラーナ・ヤグニ。来たれ来たれ冥界の黒炎。矢を型取り我が敵を滅せよ。火矢ファイアアロー


 赤く輝く矢が3体を貫く。残り1体。


「アロースタンバイ」

「しなれマジカルボウ。張り詰めろマジカルストリング。貫け! 必中・必滅のマジカルハート。火矢ファイアアロー


 つつがなく詠唱を成功させ、2発で4体の敵を倒した。


「大丈夫ですか?」


「は、はい。ありがとうございます。た、助かりました」


「どうしてあんな事に⋯⋯」


「う、戦士の咆哮(ウォリアーロアー)を使ったら⋯⋯いっぱい来ちゃいました」


 戦士の咆哮(ウォリアーロアー)は遠くの敵を誘き寄せたり、近くの敵を怯ませたりするスキル⋯⋯だったかな。便利そうだけど。


「ソロだと危ないと思うよ」


「お、お願いしますっ! 私とパーティーを組んでもらえませんかっ? わ、私、死んだらチームから外されちゃって⋯⋯1人じゃ、やっぱり無理で⋯⋯」


 訥々(とつとつ)と涙目眼鏡っ子は語る。

 ポーターとしてホクダイ界メインのチームにいたが、運悪く攻撃を食らってしまい持ち物ごと全損。

 チームメンバーは怒り狂い、ドーリに行けとチームを追放されたらしい。持っているスキルは敵を釣る為の戦士の咆哮(ウォリアーロアー)と初級火魔法のみ。詠唱成功率も低くドーリに行っても戦闘力が足りない為、寄生プレイヤー扱いされてしまったらしい。


 とは言え、こちらも初心者だし、お荷物を抱えてもなぁ⋯⋯。


「わ、私、界の主になって、プロゲーマーになるのが夢なんですっ」


 ⋯⋯な、なんて(俺にとって)前途有望な若者なんだろうか! 眩しさに目が眩みそうだ。組もう。ぜひ組もう。


「よろしく頼みます。さいとーです」


「モモカです。だ、大学1年生です」


「⋯⋯大学1年という事は18歳?」


「あ、はい! 18歳になりました」

 よくて中学生くらいにしか見えない⋯⋯。合法ツルペターンは一部に人気なのではなかったか。学生なら女の子だと言うだけでチームに入れておきそうなものだけれど。


「大学はこの辺?」

「は、はい。藤です」


 あー。なるほど。女子大で女子メインのチームだな。しかし、私立の四年制大学行ってて夢がプロゲーマーって親泣かないのかな⋯⋯。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  はじめまして。  魔法の詠唱いいですね。国会議事堂界で、暇な議員さんが詠唱したりしないかな。
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