第110話 作戦立案:オペレーション・ネオンサイン
「さあ、おっさんたちの残業代をかけた大博打の話をしましょうか」
俺はホワイトボード(マスターがどこからか調達してきた使い古し)に、ススキノの地図を書き込んだ。
「名付けて『オペレーション・ネオンサイン』。ススキノの主——『虐殺の銀狼』は現在、南七条の『玉宝禅寺祖院』に陣取り、街全体からエーテルを吸い上げています。正面から突っ込めば、前回の二の舞です。電子機器が先に死に、敵の無限湧きに飲み込まれる」
関係者全員を招集しての作戦会議。総力戦のため全員集めるべきという意見に従って開催したが、少し大袈裟に感じていた。なんだよオペレーションネオンサインて。
「作戦の肝は、三段階の波状攻撃です」
俺は大通公園側に『第一波:外周掃討』と書き、青い丸で囲った。
「まずは第一波、モモカ、お前は創成川イースト界の主だ。ススキノと隣接している強みを活かして、境界線ギリギリで界の権限を行使してもらう。ススキノから溢れ出した敵がイースト界に流れ込まないよう防壁を張りつつ、逆にイースト界のモンスターをススキノ側へけしかける」
「私に……できるでしょうか……?」
「お前しかできないんだ、モモカ。イーストの主はお前だ」
モモカの瞳に、少しだけ覚悟の色が宿る。
「そして第二波はカイザー、エンプレス、そして札幌イーストの全チームで、ススキノの北方向から遊撃。目的は主へのエーテル供給を断つこと。外周に配置された雑魚敵を同時多発的に叩き、主の下へ流れるエネルギーを強引に消費する」
「圧力を下げれば、スマホの稼働時間も延びるというわけね」
佐藤女史が眼鏡をクイと上げ、納得したように頷く。
「第三波は『隠密潜入』。主の意識が陽動に逸れている間に、俺が中心部へ向かいます。ただし、俺はアプリを落とした状態で進む。ゲームを起動していなければ、界の防衛システムは俺をただの一般人としてしか認識しない。エーテル圧による機器の損傷も最小限で済むはずだ」
「一対一の距離まで近づくの!?」
ルイさんの驚きも無理はない。だが、俺は自殺行為染みた作戦の立案を続ける。
「だから、皆さんの陽動が『命』なんです。俺が主の目の前でスマホを起動し、最速で最大の一撃を叩き込むまで俺という存在をシステムから隠し通してほしい」
「第三波……というか、それは斉藤社長の『一撃』そのものですね」
田辺さんが、真剣な眼差しで俺を見た。
「失敗は許されませんが、その杖……使用後は弱体化するのでしょう?」
「ええ。だからこそ、道中で使うわけにはいかない。外周の雑魚処理も、すべて皆さんに任せることになります。俺はこの『獄怨の杖』を、最強の状態のまま主の喉元で最速起動して突きつける」
「一撃で倒しきれなかったら?」
ルイさんが当然の様に計画の穴を突いてくる。当たり前だよなぁ。
「走って南へ逃げます」
「……まぁ、でも他に手がないか」
全員の納得感は得られなそうなギャンブル作戦の決行は、三日後の深夜。
「さあ、各位。準備はいいな? クソゲーの管理者気取りの狼に、社会人の仕事の厳しさを教えてやろう」
俺はホワイトボードの盤面を勢いで叩いた。
それは、単なるゲームの攻略会議ではない。
自分たちの生活圏を取り戻すための、決死の経営改善計画だった。
新作「支配域の管理論」始めました
あと「札幌クソゲー」もラストまでプロット書いたので頑張って完走したいと思っています。
リアル土地買いたいので評価協力お願いしまーす!




