表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/107

第105話 高嶺の芋


 20時までレイドボスの補充を保証していた(モモカが手動で補充)創成イースト界が営業を終了する頃にはギルドに人が集まってきていたので、俺は一人そろりと抜け出した。

 後は打ち上げをするなり適当にやるだろう。


 創成イースト界の討伐イベントは順調な滑り出しと言っていい。


 上級難易度のレイドボスであるウッドジャイアントゴーレムに対して参加したレイドチームが5組総勢71名、ここ札幌で集められる最大戦力がほぼ集まったと見ていい。ボスの出現位置は3か所だったが討伐数は13にもなるだろう。稼ぎもそこそこになっているだろうし、ギルドの仕組み説明や今後のススキノ界への協力もある程度取り付けた。


「さて……今日はあるかな?」


 いつの間にか画像系SNSでフレンドでなっていた小料理屋さんのアカウントがあるのだが、海老芋という京都の芋を仕込んでいる画像が度々アップされていた。しかし未だにありつけたことがない。

 いつも仕込みの芋を眺めていただけなのだ。


 カウンターメインの小さいお店なので複数人で行くのには適さない。

 そもそも教えたくないのもある。独り用の店は確保しておきたいのだ。


 ススキノのネオンが灯り始めた36号線を進み、駅前通りを渡り客引きを掻き分け更に進む。タマゴのオブジェがあるビルの隣のビル。最上階は有名店が入っているビルだ。迷わずエレベーターで5Fのボタンを押す。


 暖簾を潜ると都合のいいことに他のお客さんは誰もいなかった。


「いらっしゃい。どうも」


「どうも」


 一人でやっている割にあまり愛想のいいタイプの大将ではない。それが俺には居心地が良い。


「ビールからかい?酒からかい?」


「お酒ととりあえず刺し盛で」


「はいよ」


「今日は海老芋あります?」


「ないよ」


「damm it!」


「良い芹入ってるけど芹鍋でどうだい?」


「……いただきます」


 やっぱり無いのか海老芋……。


 小ぢんまりとまとめられたお通しの揚げびたしでちびちびとやりながら考える。


 創成イースト界は順調だ。


 だが周辺の界はどうだ?


 情報サイトで調べてみるとドーリ界やその周辺の界は初級難易度で据え置き、今までであれば学生パワーで上級難易度界に引き上げていたホクダイ界は中級で止めたようだ。トッププレイヤー層が創成イースト界に流れてしまっているので堅実な動きだ。

 まぁ大学生なら稼げるところあるならそこに行くのが普通か。


 ドーリ界のレイドボスはマッドゴーレム。ホクダイ界のレイドボスはオークソルジャー。基本的にどのレイドボスを出すかは界主が決める。討伐報酬もボスによって違うらしいが、とりあえず足の速いボスは事故率が高いため忌避される。それで大体ゴーレム系やオーク系などの足が遅い系のボスがチョイスされるのだ。誰も常に走り回る事を強要されてしまうようなレイドボスと長時間対峙したくはない。リアル体力の問題が大きいのだ。


「お待たせ。芹鍋です」


 ちびちびと刺身がなくなるころに芹鍋がやってきた。なかなかのボリューム感。芹だけではなく鶏肉や他の野菜も彩りよくだし汁に浮いている。美しい。


「……gentle」


 優しい味だ。シャキシャキとした芹にふんわりと薄味のだし汁が絡む。青臭さが芹の野生を感じさせるのだがそれを強い味で誤魔化すのではなく芹の力強さを保ちつつ、優しく調和(エスコート)している。酒に合う。


 だが、海老芋もなかったことだし酒はこのくらいにしておこう。



 俺の狩りの時間だ。



すいません。作中の季節感無視の冬食材です。


アンタのことなんて全然気になってないんだからねっ!勘違いしないでよねっ!という方はブクマ登録を、アンタ続き書かないと死刑だから!という方は評価登録を何卒よろしくお願いします。


また下にもリンクがあるのですが新作の「異世界トイレ」もお時間がある時にでも読んでもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作の異世界トイレもよろしくです!

拙著ファンタジーには馴染めないコミカライズ第一巻、フロンティアワークスさんのFWコミックスから発売中!

再掲してますのでファンタジーには馴染めないもよろしくです!
― 新着の感想 ―
[良い点] 札幌舞台のストーリー応援してます。私にとって全部近所なのが良いです。個人的にはルイの働いてる店にいってみたいですw ノリでススキノ最強エンターテイメントのプッシーキャットが出てきたら面白い…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ