76話〜ドルマノフが知らず ネリウスが知る過去‥後編
ネリウスは森の中で待機し、ブラットは幻のリリアと森の中へ。
そしてブラットの力が……
ここはディクス村から少し離れた洞窟がある森の中。
ネリウスはブラットの力を確認する為に、地面に魔法陣を数ヶ所描き仕掛けを作っていた。
「さて、こんなもんでいいだろう。後は、あの子供がここに来るのを待つだけだが、何が起こるか楽しみだ」
しばらくして、ブラットはゲリュウデスにより幻を見せられ森の中に来ていた。
「ねぇ、リリアさん。探し物見つかった?」
「ん〜、もう少し奥の方かな?」
2人は更に森の奥に入って行った。
幻のリリアはネリウスが待つ場所までブラットを連れて来ると、
「この辺だったかなぁ。ねぇ、ブラット、ここで待っててね。すぐに戻るから」
幻のリリアはそう言うとブラットをその場に残し少し先の見えない所で姿を消した。
そして、ゲリュウデスはドルマノフに気づかれない様にこの森全体に結界を張った。
ネリウスはそれを確認すると呪文を唱えた。
すると、あらかじめ準備しておいた数ヶ所の内の一ヶ所の魔法陣が光り出しゴーレムが召喚された。
(さて、始めるとしよう。あの子供にどんな力があるのか試させてもらうとするか)
ブラットは目の前にゴーレムが現れ逃げようとしたが、もう一体のゴーレムが召喚されており逃げる事が出来なくなってしまった。
(な、何で?こ、こんな所にこんなのがいるんだ?それも二体も……)
そう思っているとゴーレムの一体がブラットを見るなり襲いかかってきた。
ブラットはそれを見て、泣き出しそうになるが、昨日父親に言われた事を思い出し泣くのはこらえた。
しかし、あまりの怖さに、どうしていいか分からずに震えていた。
ゴーレムはブラットを、右手で薙ぎ払った。
ブラットは少し先の洞窟まで飛ばされ、入り口の右側の岩に身体を強打した。
至る所に傷を負い出血も酷かったが、元々打たれ強かった為、よろけながらも立ち上がる事が出来た。
……その頃ドルマノフは、身支度を整えた後、ブラットの様子を見る為に仮の自宅を出た。
……さて、場所は戻り。
その光景を見てネリウスとゲリュウデスは、
“ネリウス、このブラットと言う子供。思っていたよりもかなり打たれ強い様だな。流石は英雄王ガルドと魔族の元女王カトレアの子供”
(エッ?ゲリュウデス様いま何と言われました?まさか、この子供がガルド様とあの魔族の血を受け継いでいると言うのですか!?)
“ああ、我もうかつだったが。恐らくは他の神……いや、ガルド側についているグランワルズ辺りが、このブラットが神に選ばれたものだと分からぬ様に、何らかの力を使い守っていたかもしれんな”
(そうなると、その力を引き出すには、この方法では手緩いかもしれませんが。ゲリュウデス様、どうしたらよいのでしょう?)
ゲリュウデスは少し考えた後、
“そうだな……ネリウス、お前はそのままゴーレムを使いブラットを肉体的にいたぶれ。我は、幻を見せ精神的にいたぶる”
そう言われ、ネリウスは呪文を唱え始めた。
ゲリュウデスは数体のあらゆる魔物の幻をブラットに見せた。
ブラットはそれを見てよろけながらも立っていたが、あまりの数の魔物とゴーレムが数体も襲いかかってきたので逃げようとした。
しかし、怖くて身体が動かなくなってしまった。
(ど、どうしよう……こ、こんなの無理だよ。な、何で、こんなに魔物がいるんだ?ヒィクッ、怖いけど逃げられないし……)
幻の数体の魔物と数体のゴーレムは、ブラットをいたぶるように攻撃を続けた。
ブラットは段々と意識がなくなりそうだったが、
(このままじゃ、強くなれず何も出来ないまま終わっちゃう。ごめんなさい父さん、村の外に出るなと言われたのに、僕は……だけどこのままじゃ、死ぬのは嫌だ!まだ、やりたい事沢山あるのに……)
そう思いながら無意識のうちに、両手を広げかざし力一杯に魔力を込めていた。
すると、その両手から黒い光が放たれ辺り一面に広がり幻の数体の魔物とゴーレムはそれに触れると苦しみ出した。
そして、ゲリュウデスは幻の魔物を生み出していた為に、一瞬だけ自分に跳ね返ってきたが、咄嗟に結界を張り防いだ。
ネリウスも、その力が放たれたのを見て慌てて自分に結界を張った。
そして、幻の数体の魔物は消し去り、数体のゴーレムはもがき苦しんでいたが、一体のゴーレムを覆っていた黒い光が激しく光り出し、ゴーレムの巨体が、まるで風船が割れる様に弾け消えた。
すると、もう一体のゴーレムは覆っていた黒い光が激しく光り出したと思うと、それは小さくなり光りは消え、そこには小さくなったゴーレムがいた。
もう一体のゴーレムはというと、やはり覆っていた黒い光が激しく光り出し暴発した。
そして、そこには石の剣が置かれていた。
ネリウスとゲリュウデスは少しの間呆然としていたが、我にかえり辺りを見渡して見ると、黒い光が覆っていた木や草などにあらゆる変化が起き、森を覆っていた結界も消え去っていた。
(これは、まさかとは思うが)
“ネリウス、確かにこれは、この世界を創り変えてしまうほどの強大な力だ!だが、まだ完全には目覚めてはいない。これが、自分の意思で自由に操れる様になれば厄介だな。だが、この力を……いや、ブラットをこちら側に引き入れる事が出来れば……”
(ゲリュウデス様。それでは、ブラットをこのままスカイネーブルに連れて行き、今の内に……)
そう話をしていると、ドルマノフが激しい光と音を聞きつけて来たのに気がつき、咄嗟にゲリュウデスとネリウスは結界を張り姿と気配を消し隠れた。
ブラットは攻撃を受け横たわり苦しんでいたが、ドルマノフがそれを見つけ、魔法で出血を止め傷を直し眠らせた。
「これはいったい!?何があったというのじゃ!だが、あの黒い光は……あの時ワシが見たものと同じじゃったが、まさかここで、何かがブラットに起きたと言うのか?それに、この光景は……やはりブラットの力は、あらゆるものを破壊し創り変えてしまうほどの力。これは、このままブラット本人の自覚無しに、力が目覚めてしまえば、取り返しのつかない事になりかねない」
ドルマノフは少し考えた後、
「ふむ。やはり、今の内に封印をし、今日あった事の記憶は消し忘れさせた方がいいじゃろう」
すると、ドルマノフは近くに洞窟があった為そこにブラットを運んだ。
そして、ゲリュウデスとネリウスはそれを見て様子を伺う事にしたのだった…。
読んで頂きありがとうございますヽ(^o^)
ついにブラットの本当の力が…そしてこの後…
次話も気まぐれ不定期に投稿しますので、よろしくお願いします(*^ω^*)







