あなたと私。②
幼い頃、俺は親から捨てられた。
まだ小学生だった。意味もわからず置いてかれて、雨に降られて、びしょびしょになった。
そんな中、一人、傘をさしてくれたんだ。
「こんなところで、何してるんだい?」
あの時の俺にとったら、この人は、恩人だ。
あの時、あの場所で拾われてなかったら、俺は、死んでたのかもしれない。
それくらい危険な状況で、あの場を凌いでいたんだ。
彼は、俺に大量の食料と着るものを与えてくれた。
綺麗でいい匂いがする洋服。美味しいご飯に、甘いお菓子。当時の俺からしたら、天国だった。
中学に上がれば、スーツをくれた。
それは綺麗なストライプのスーツ。まるで、自分はこの世界の住人だ、とでも言っているようだった。
「お前に、いい仕事がある。」
いい仕事。
大分、手馴れて来た。まだまだ慣れないことばかりなのに。一つ一つの言葉が胸に刺さってくる。
その仕事の内容を聞いて、やる気しか出なかった。
得意分野、やってやろう。
その気持ちしかなかった。ていうか、それしか考えられなかった。
「任せたぞ、湊。」
「お任せください。」
大丈夫。
任せてくれればいいから。
この仕事は、俺のだから。誰一人触れさせない。
見たことない景色を、今。
見せてあげます。