あなたと私。①
私は、将来やりたいこととか、全然決まってない。むしろ、やりたいことがない。
別に、やりたいこともないし、したいこともない。
「お嬢!」
「外ではそう言わないで、って何回言った?」
「すいません、」
私は幼い頃、両親を亡くした。引き取られたのは、母側の祖父の家。
今まで、祖父の存在を知らなかった私は、ただただ恐怖でしかなかった。
私の祖父は、いわゆるそういう裏社会の人。
ニュースとかで時々見かけるけど、私には関係がないと思っていた。
それなのに。
「お嬢、もう少し女の子らしくしたらどうですか。」
「別に、女の子らしいとかいらない。」
スカートなんて大嫌い。
だから、スカートなんて履かない。それじゃ、ダメなの?
私の祖父の家は大阪。
今まで私が過ごして来たところとは、あまりにも環境が違いすぎて、私自身が戸惑っている現状。
これから、私はここで暮らすのに。
「真奈。」
「……初めまして。」
「そんなに畏まらなくてもいいじゃないか。」
「いえ、これからお世話になるので。」
「そうか。今日から私がお前の親だ。」
「……はい。」
たった少しの会話で、思ってしまった。
「私、この人苦手だ。」と。
今日から、私は宮坂組の跡取りになってしまった。
「お嬢。初めまして、」
「えっと、」
「お嬢の護衛をさせていただきます、高木です。」
「あ、はい。」
「……はい。」
お互い人見知りだからしょうがない。
でも、どこか、ミステリアスな雰囲気。
私の好きな部類に、入るのかも。
中学生ながら、私は彼をそんな目で見ていた。
彼の本来の目的を知らずに。