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拝啓、お母様。ソフィアは妹をゲットしました


 唯ちゃんが泣いちゃうほどに美味しい朝食を済ませたら、次は何をするべきか。私の答えは決まっていた。


「唯ちゃんはとりあえず、私の家に住むのがいいと思うの。ここに居続ける理由ももう無いでしょ?」


「……いいの?」


「もちろん!」


 内心ちょっぴりドキドキしながら聞いたんだけど、二つ返事で呆気なく了承が得られた。これも私の人徳の成せる技だね! ……ふ、ふふふっ!


 たちまち笑顔が込み上げる。

 唯ちゃんに気味悪がられる可能性があると分かっていても、この喜びの感情は抑えられそうになかった。


 ……唯ちゃんが家に来る。私の家に、一緒に住む。


 ……ううぅ〜、ひゃっほう! 最強に可愛い妹、ゲットだぜぃ!!


 やー、やっぱり美味しいお菓子は最強の交渉道具だよね!! 国の偉い人とかが無駄金使って馬鹿高い会食とかしまくる理由が良く分かろうというものよ!


 美味しいは正義!!

 人の心の防壁を崩すには、幸福に漬け込んで頭をバカにするのが手っ取り早い!!


 それにほら。私ってば王様から神との橋渡し役として任命された聖女様でもあるからね! 今の今まで、何故か魔物討伐のお仕事しか振られた記憶はないけど、一応聖女としての任命受けてるからね! 唯ちゃんを保護する立場としてはこれほど適当なものもないでしょう!


 魔物やら喋るぬいぐるみやら、果ては神様メイドまでも迎え入れてきた懐の深い我が家である。今更神様が一人増えたくらいでごちゃごちゃと言う者もいるまい。……訂正、お母様くらいしかいるまい。


 そのお母様にしたって相手が神様ともなれば最終的な陥落は確実だ。


 お母様ってば神様相手には笑っちゃうほど弱いからね。むしろ文句言われるのが今から楽しみですらある。


 なにせ現役女神のヨルさえ霞む、世界の始まりを創った原初の創造神様が相手なんだ。もしもお母様が「何処の子ですか」的な迂闊な発言なんかしちゃったりしたら、後から唯ちゃんの正体を知った時には一体どんな言い訳をするのかとかさ、考えただけでもう、もう……っ!


 たっのしみで堪んないよね〜!!


 ふふ、うふふ。うふふふふふふ!!


 八つ当たりされると怖いから、程度なところで止めてあげないといけないかもね! なにせほら! お母様は私に弱みを見せることを殊更に避けていらっしゃるご様子ですし?


 お母様を一生揶揄(からか)うネタが入手できるかもしれない好機に、私のテンションは自然と上がる。やはり甘いものと人の不幸は最高だな。


 どちらも美味しい蜜の味! なーんちゃってね! あはは!


「……あの、ソフィアさん。もしかして、まだ眠かったりします?」


「よく分かったね」


 気分良く妄想に浸っていたら唯ちゃんに突っ込まれたので素直に返す。


 そうとも。私は多分、まだ深夜テンションが抜けてないんだ。

 それもこれもこの空間が白すぎるからだと思うよ。落ち着いて眠れないよこんなの。


 とはいえ、普段より処理能力の落ちた脳でも理解できることはある。


 まだ付き合いの短い唯ちゃんが私の様子がおかしい事に気付いてくれたというのは、私にとって望外の喜び――


「頭が時々揺れていたので……」


 ――だと、思ったんだけどねぇ……。


 えー、そんな? そんな理由?? 私そんな見てわかるくらい揺れてた?


 おかしいなあ。そこまで眠気が残ってる自覚は無かったんだけど……。


「ふわぁ……あ」


 ……とか思ってたのに、あくびが出たね。タイムリーに過ぎるあくびが出たね? わぁい、これは一目瞭然だぁ。


 あんなに立派なあくびを披露しておいて「眠いと言っても少しだけどね」とか言っても通る気がしない。

 下手したら生暖かい目で見られて実妹に妹扱いされる悲劇が降りかかるかもしれないともなれば、つまらない意地を張っている場合ではない。折角降って湧いた姉の座を手放すなんて死んでもゴメンだ。


 ――ふむ。私はどうやら自分で思っている以上に眠かったらしい。これはすぐに対処せねばならない問題だ。


 私は眠たい。確かに眠たい。

 でもここでは気持ちよく寝れないさあどうしよう。


 魔法も使えるようになって万能に近い力を取り戻した私でも、流石にこの状況で「こんなこともあろうかと!」とアイテムボックスから天蓋付き安眠特化型ベッドが取り出せるような準備なんてしていない。アイテムボックスの中にあるのは、せいぜいタオルやハンカチなんかの日用品関連。あとはお菓子とかサンドイッチとかおやつとか……あ! 材料用のミルクあったじゃん! 朝のの時これ飲めばよかったー!


 まあ過ぎてしまったことは仕方ない。紅茶は紅茶で美味しかったしね。


 ともあれ、そんなわけで私が満足する睡眠環境を確保するためには、この場所は不適切なのである。


 では何処が適切なのかといえば、それは勿論――


「それじゃ、ぱぱっと我が家に帰りますか」


 やっぱ自分の部屋が一番安心して眠れるよね。あそこなら防御機構も万全だし♪


 唯ちゃんを連れ込んで二度寝とか、想像だけでも犯罪的な魅力があるよね。ふふふ、これから寝に帰ろうと言うのに、ソフィアお姉ちゃんてばちょっぴり興奮してきちゃったよ唯ちゃん。これはどう責任を取ってもらいましょうねぇ。


 やっぱりここは抱き枕になってもらう? いやいや、一緒にお出掛けなんてのも捨てがたい。


 あ〜〜、めくるめく妹のいる生活の実感が、幸福がァ! 私の理性を蕩かしていくよう〜〜!!


眠くても妄想は止まらない、止められない。

なんだったらこの子、寝てる時でも妄想してますからね。

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