魔道具の知識を深めよう
魔道具は高い。
それでも、知る価値がある。私にとっては、特に。
だって科学の知識を活かせる分野はここしかないと思うのだ。
それに、魔道具の作り方なんて珍しそうな知識を得られるのは貴族の特権ぽいし。せっかくの環境、使わなきゃ損だよね!
貴族の特権というか、お母様の趣味の延長かもしれないけど。
やっぱりお金持ちじゃないと研究とかやってられないよね。魔道具も材料ぜーんぶ高いみたいだし。
まぁ高い高いと言うけれど。
実際、どれだけ高いのかは知らない。
ていうか、聞きたくもないんだけど。
これからバラバラに分解するってのに値段とか知りたくない。
作業中に「あっ」とか言われたらどれだけ心臓に悪い事か。
直せなくなっても弁償出来ませんからねっ!
「今日は魔法陣の内容には触れませんよ?」
「なんだあ」
「なんだとはなんですか」
そういえば初回の授業だったね。
教材に選ばれるだけあってランプは工具いらずで簡単に分解できた。
中からは二枚の円盤と魔石。
魔石に綺麗な装飾がされてるのは暴発防止の仕組みらしい。
もちろん適切な手順で外すことも出来るけど、無理に外したり壊したりすると、溜め込んでた魔力を緩やかに拡散させる。
これがホントの石化か。そんなの金貨が石ころに変わるようなものだよ、怖すぎ。
まあそんな理由もあって、魔道具は専門家以外は修理しないのが基本だとか。だから家電かよ! っていつまでツッコミ入れればいいのかな。どこまでも家電のイメージが抜けない。
ついでだから個人的に気になってた魔石の液漏れについて尋ねてみた。
古くなった魔石が起こす液漏れ現象。
その雫には魔力が凝縮されていて、様々な用途があるため重宝されるのだとか。
なお、わざわざ魔石から採るものではないらしい。
ってちがーうよ。
漏れた液じゃなくて液漏れという現象に興味があるんですよお母様。
魔石って石じゃん? 中身も石じゃん? 水どこから湧いたの? とかそーゆーはなし!
当たり前の疑問だと思うのに、どうにもお母様にはその不思議さが伝わらない。
その挙句の答えがこれですよ。
「そういうものですから」
そこは研究してないのかと。それでよろしいのかと。喉まで出かかったけど我慢した。
だって冷静に考えなくても大抵の事は「魔法だから」で済みそうだし。むしろその答えを予想してた。
斜め上の答えだったけど、そーゆーものなら仕方ない。
そもそも魔物が湧くのからして意味不明だし、倒せば消えて魔石を落とすとか神が作ったとか、真面目に考えるだけ馬鹿らしくなるよね。
ちなみに魔力の詰まった雫は疲労回復、健康増進にも効果があり、【魔水】の名で親しまれているのだとか。
私も飲んだことがあるらしい。驚愕の事実である。
あとどうでもいいけど魔水ってネーミング、麻酔っぽくて医療品の印象あるよね。
実際は多分、健康ドリンクみたいなものだと思う。
魔水だからって聖水の対ではないのだ。残念でした。
なお聖水は未発見のアイテムである。その効果や如何に。