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謎は全て解けた!……多分合ってる!


 魔力が扱えるようになったおかげで、何故この部屋では魔力が存在しないように感じられたのかを完璧に理解した。


 これ浸透圧だわ。


 この部屋に魔力が無かったんじゃなくて、私の身体の中にだけ魔力が無かった。魔力を感じられるだけの魔力が無かっただけで、魔力自体は普通に存在していた。それが答えだと思う。


 十中八九間違いないとは思うけれど、万が一ということもある。


 念の為に唯ちゃんにも確認してみることにした。


「唯ちゃん。この部屋にも魔力はあるんだね? 私の魔力総量が低いから体内の魔力を引きずり出されていただけで、むしろ魔力濃度は他のどの場所と比べても格段に高い水準にある。……そういうことなんだね?」


 半ば確信と共に問いかけた言葉は、リンゼちゃんに似ていながらも幾分か素直さを増した表情に迎撃された。


「……そうなんですか? ごめんなさい。私、外の事は分からなくて」


「あ、そうだよね。こっちこそ気付かなくてごめん」


 …………聞けば答えが返ってくることが当たり前だなどと、私はいつから考えていたッ!?


 創造神。世界の理。魔力のある世界。


 なるほど、要素を羅列すれば唯ちゃんこそがこの異世界を構築した存在で、その性質をも知悉しているのが当たり前だと考えてしまうのも仕方の無いことだろう。


 けれども私は! 唯ちゃんも私と同じ被害者の一人に過ぎないのだと知っていたのに! 何故!! 唯ちゃんなら答えを知っていると思い込んでた! 確信していた!?


 そんな理由、少しでも考えれば直ぐ分かる。


 私は未だに、唯ちゃんとリンゼちゃんをどこかで「同じ存在」だと認識しているということなのだろう。


 ……まあ、聞けば大抵のことには答えてくれちゃう困った時のリンゼちゃん頼りが過ぎたと言えば、それまでの話なのかもしれないけども。

 頼りになる存在が身近にいたら頼っちゃうのは当然だよね。私ってほら、まだ子供だし?


 そう考えると、私よりも幼い唯ちゃんがこんな何も無い場所に独りきりで閉じ込められてるって状況は、やっぱり限りなく異常だよね。実際に何年ここにいるのかは知らないけれど、もし私が同じ状況に押し込まれたら一ヶ月も持たずに寂しさで死ぬ。精神的に死亡しちゃう。んでその後、復讐の為だけに生きる鬼として蘇るのだ。


 ……こうして考えると、今の私も大して変わらないな。

 ただ人には恵まれてたから全ての意欲を復讐に向けることはなかった。ちゃんと自身の楽しみを見出すことを最上の目的として行動できてる。魔法使ったり考えたりするのも楽しいしね。


 だからこそ唯ちゃんの凄さが際立つ。


 私だったら間違いなく悪鬼羅刹と化して残りの人生復讐に全ツッパしてる状況なのに、唯ちゃんってば恨み言のひとつも言わないんだよ? ご主人様の言いつけに従う忠犬のようにいい子なんだよ?


 こんなに可愛い忠犬だったら私が欲し……げふんげふん。


 自分の娘を異世界にポーイして音沙汰無しとか実父にあるまじき行いだよね!! そんな毒親から、私は唯ちゃんを守る権利があると思います!!!


 そして自身の置かれていた環境が世間の普通とは掛け離れていたことを知った唯ちゃんは、その狭くて苦しい世界から救い出してくれた私のことを殊更(ことさら)に慕って、「お姉ちゃん、お姉ちゃん」とどこへ行くにも私の後を着いて来く愛らしい妹として近所でも評判になり、そのうち「あそこの美人姉妹が……」と井戸端会議で噂されるような存在へと……。


 ……ふふ。うふふ。ふふふふふふ!


 いやー、胸が高鳴るね! 唯ちゃんとの平凡な日常、とても良いと思います!


 あ、愛妹のいる幸せ生活を妄想してたら思い出した。

 そういえば私、この世界に来る前から可愛い妹とか欲しかったわ。


 優しい兄姉も憧れではあったけど、お母さんと似た性格の年上兄姉なんていたら最悪通り越して極悪だからね。鬱陶しさが二乗して四倍? 私、精神的ストレスで過労死しちゃうわ。


 けれど妹だったらその心配はない。


 年長者は私。家庭内カーストでも最下位脱却。

 お母さんからのウザ絡みの標的を分散できて、被害者同盟を作れれば反抗作戦の幅だって広がる。万一反旗を翻されても体格も力も私が上。簀巻きにしてこちょこちょ地獄にでも落とせば姉の偉大さを知らしめることが出来るだろうさ。ふはははは!


 ……簀巻きこちょこちょのあたりで、リンゼちゃんに起こった悲劇を思い出した。実妹を強制失禁させたらむしろ私の方が立場弱くなりそう。


 やっぱあれだね、押さえつけて無理やりってのはよくないよね、うんうん。


 お母さんと(唯ちゃん)に反撃の簀巻きお漏らしを強要される光景を想像して、思わず全身に怖気が走った。


 やる。あの母親なら絶対にやる。「どーせなら徹底的に懲らしめちゃいましょう!」とかいって録画の準備まで整えて確実に実行する。


 そんで私の誕生日の度にその動画を流して「あんたって本当に浅はかよね〜」とか言ってゲラゲラ笑うんだ。その光景が容易に想像できる。ビールに利尿剤でも混ぜてやろうか。


 ……まあ、そんな反抗も心配も。元の世界に戻るまでは不要なんだろうけどさ。



 しかしこれだけの思考をしても経過時間が極僅かというのは実に素晴らしい。


 やっぱり私は、もう魔法のない生活は送れそうにないと、改めて思った。


ソフィアがすっ飛ばした浸透圧の説明をします。

……と意気込んで書いてたら500文字超えちゃったので、一言で説明します。

「浸透圧とは、薄い方が濃い方へと流れ込む現象の事である」

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