魔道具のことを知ろう
というわけで、お母様に魔道具作りを習うことになった。
どういうわけかって? 暇な時間が増えたってだけです。
ともかく、そんなわけで魔法の開発の時だけでなく、お勉強の時間にもお母様と一緒にいることになった。もう私のお目付け役みたいなものだね。
お母様の仕事は研究らしいのに私が呼べばすぐ来るし。
私も将来はお母様と同じ職にありつきたいと思っちゃうのも仕方ないと思うの。
さておき。
魔道具の作り方を学ぶ前に、魔道具の構造を知らなくてはならない。
魔道具とは何か。何で構成されているのか。
よく知らない頃は、魔石電池で動く異世界家電の認識でいた。
大体合ってるからまた困る。
今では魔石から魔力の供給を得て魔法を起こす道具だと知ってはいるけど、内部構造だって電化製品と大差ない。
電気の代わりに魔力が使われているだけで、あとは刻まれた魔法陣が魔石から吸い上げた魔力で魔法を発動させる。
単純といえば単純、なんだけど。
魔法陣。
難しい部分が集約されてますよね。
魔法陣って聞いただけで苦手意識があるんだけど、頑張る。
魔道具について学べば魔法陣にも詳しくなれるなんて一石二鳥じゃん。これは頑張るしかない。と思うことにしたい。しよう。思い込め、私。
「これを分解してみましょうか」
道具の構造を知るにはバラすのが一番とばかりに取り出されたるアイテム。オシャレなランプ〜。
これ前に魔道具で見たことある。お母様が作者で民衆に絶大な支持を受けているとかいう、光量調節機能付きのランプだ。
「これ知ってます。お母様が作られた人気作だとか」
「それなりに普及はしてますが、人気作と言えるほどのものでは無いですよ? 灯りは備え付けのものが一番効率的ですし」
なんか勘違いしてそう、ってことでさらっと解説してくれた。
魔道具は高価な嗜好品だ。とても値が張る。
その原因として、まず動力源たる魔石が高い。
次に、魔法陣を描くインク。インクの材料である魔力を通す素材は霊薬の素材にもなるため需要が多い。これも高い。
最後に、魔法陣を描く素材。
高価な魔法陣用のインクで刻んだ素材に魔力を流すことで、少しずつ劣化が進む。避け得ないそれを何度も耐えられるようにするためには、魔法陣を描く材質にも気を配る必要がある。優秀なスコアを出す材質は当然のように希少だ。つまり高い。
なんて見事な三重苦。
その結果、魔道具はとてもお高いから平民で持つ者なんて殆ど居ないし、貴族は自身で魔力を扱えるから魔石をわざわざ使う魔道具はあまり普及しないとのこと。聞けば納得、そりゃそうだーなお話でした。
そうなるとこの間の魔道具屋がどこぞの金庫かなにかに見えてくるんだけど、あの店はインクも基盤の材質も数回で壊れるような低品質のものにしているからコストはそんなにかからないそうだ。
とはいえ、安いはずもなく。
お母様が研究費として資金を援助しているからこそ今も元気に魔道具を作れているんだそうな。
魔道具って、お金かかるのね。
前日には指導要項を策定済み。ソフィアの先生役を密かに楽しみにしていたアイリス様であった。