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たまには弄ばれるのもアリかもしれない


 お姉様を正気に戻す代償に、私の女としての自信はズタボロにされましたとさ。


 え? 元からそんなもん無かっただろうって?


 うるせえ。手前様の顔面もズタボロにしてやろうか。

 脳内カイルがうるさすぎてマジ脳内に除草剤撒きたい気分なんですけど!?!!?



「ソフィア、落ち着いた?」


「はい。ご心配をおかけ……あーっと。……心配させてごめんね、おねーちゃん」


「かわいいっ!」


 ちょろっと上目遣いしただけで身体がぎゅむぎゅむ抱きしめられる。こんな扱いにも慣れてきました。


 そういや私って昔からこんな扱いでしたよね。

 うん、段々と思い出してきたぞうー。


 お姉様の膝上に拘束されながら、過去を振り返ることで現実逃避を図る。十三にもなって姉の膝の上に座らされてるとか正気のままじゃいられませんよね。


 ……いや、マジで正気の沙汰じゃないんですわ。お姉様の頭がおかしいとかではなく、私がここに座れることがね。物理的に無理なく座れることがおかしいよねって。


 まるで豚が木に登るかのように現実味のないその事実にこそ、私はショックを受けている訳でして、はい。


 私の勝手な想像だけど、多分学院のお友達にこんなことしてるのがバレたとしたって「その歳で……?」なんて引かれることはないんじゃないかと思うんですよ。でも同じことをミュラーがしてたら驚かれると思う。そーゆーところが私の苦悩の原因です。


 なんだったら話を聞いてる最中は愛想笑いで流しながら、後に裏で「ソフィアってこの歳にもなってお姉さんの膝の上とか座ってるんだって! 信じられなくなぁい!? きゃはは!」みたいな陰口でも言っててくれた方がまだ安心できそう。私は皆と同じなんだなって、比べられる対象なんだなって、いっそ安らぎすら感じられそう。


 もちろん悪口言った人の顔は確実に記憶するけど、それとはまた別の話でね。

 やっぱり陰口って良くないから、本人に直接教えてあげるべきだと思うんだよね。「人の悪口は自分の評判を落とすからやめた方がいいよ」って。なんなら「もちろん私も、貴方が悪口を言うような人だってことはずっと覚えておくし、もし仮に貴方の家族に出くわしたりしたら、貴方が普段している行動の中で印象深い出来事を話すこともあるかもしれないね。自分の行動に自分で責任を取るのは当然だよね?」って、親切に警告までしてあげちゃう可能性だってあるんじゃないかな。


 取り返しのつかない事態が起こる前に矯正する機会を与えてあげた優しい私に対して「んなことしてるからドSなんて呼ばれんのよ」とか意味不明なことを言ってきた友人もいたけど、私としては無警告で背中を蹴り飛ばす方がよっぽどドSなんじゃないかと思うんだよね。「頭おかしいんじゃない!?」という正当な意見に対して「人を攻撃しておいて反撃されたら文句を言うのか。お前の方が狂ってるんじゃないか?」と言ってのけた狂人代表は、今も日本の教室で彼女基準の悪党を成敗して回ってるのだろうか。いやそろそろ警察のお世話になってる頃かな。


 向こうとこっちでどのくらい時間の流れが違うんだっけと考え始めて、思考が大脱線していることに気がついた。元々何考えてたんだっけ? そうそう、私の扱いが同級生に対するそれじゃないって話だったね。確か私の身長と見た目がアレで……ああ、思い出さなきゃ良かった。


 全ては成長しないこの身体が悪い。

 あとこれ。体重をかけると頭部を柔らかく受け止めるこの豊かな双丘が、私の負の感情を呼び覚ますのだ。


 平和は豊かな環境がなければ成立しない。


 貧相な荒野しか所有してない私では、そもそも心が荒むのも当たり前でしたか。私も勝ち組になりたい。


「はふぅううぅ〜。ソフィアって本当に抱き心地が良いのよね〜。特にこの肌! 二の腕! お腹! いつまででも撫でていられる自信があるわ〜!!」


「……あの、お姉様。寒いんですけど」


 ほっぺたと腕はまだしも、お腹は、あの。めくらないで?


「お姉様じゃないでしょ〜? 私のことは〜?」


「……おねーちゃん、さむいよ」


「私が温めてあげるわ〜〜!!」


 おひょう、くすぐったい! お腹撫で回すのやめてぇ!


 お姉様の要望には応えたというのに、何故私の要望は叶えられないのか。寒いと言っているのに何故肌蹴る面積を増やすのか。理解に苦しむ。


 実際には寒くないからそれはいいんだけど、他人に服を捲られるという行為って慣れてないからかめちゃくちゃ恥ずかしく感じるんだよね。リンゼちゃんでもしないぞこんなの。


 というか、この光景をお母様に見られたらお姉様の晩御飯とか無くなるレベルで怒られるんじゃないですかね。今すぐに止めるのが賢明だと思うよ私は。


 私が恥ずかしいのはね、いいんだ。かなり恥ずかしいけど、いいんだ。これはきっと私への罰だから。


 お姉様を悲しませてしまった罪を思えば、辱めくらいは甘んじて受け入れる所存であります。でもくすぐったいのはちょっちツラい。んっ、く……くふふぅ。


 あー、なんかこうやってお姉様に弄ばれるのも懐かしいな。

 昔はよくこうして着せ替え人形に……いや、あれはお母様の膝の上だったな。となるとお姉様のこの趣味はお母様からの遺伝か。なるほど。


「おねーちゃん、楽しい?」


「とーっても楽しいわよ!」


 そっか。ならもうしばらくこのまま弄ばれていようかな。


 私にしても不快という訳では無いし、これもお姉様孝行だと思って大人しく受け入れるのがきっと最善なんだと思う。


 ……でも、やっぱりお腹は、その。

 コンプレックスな部位でもあるし、少し手加減してくれないかなって。思う訳でして。


 あ、おへそも? おへそまで弄っちゃう? そこいっちゃうかぁ。


 ……せめて優しくしてね、おねーさま?


ソフィアは最近、自分の体型を変化させるとしたらどんなスタイルにするべきかと模型を作って真剣に検討してるみたいですよ。

でも顔がカワイイ系すぎて理想のスタイルとは噛み合わないのだとか。

贅沢な悩みですよね。

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