お兄様にとことんあまえよう
お姉様が家を出てから、私はお兄様との蜜月を迎えていた。
とまぁ、それは冗談だけど。
「ごろにゃーん」
「なに? それ」
かわいくあまえる子猫ちゃんも全然効果なしだけど問題は無い。
私が甘えてるって事実が大事なんだよー。
お姉様がいなくなって寂しくなるかと思ったけど、別に毎日常にお姉様にくっついてた訳でもない。
お姉様が学院に通っていた頃と似たようなものだ。
ただ、食事の場にお姉様がいないのが寂しさを募らせた。
それを、ほんのちょっと。騙すわけじゃないんだけど、ほんのちょーっとだけ、ああ寂しいなあ、誰か慰めてくれないかなあ、ちらちらってすると、お兄様が甘やかしてくれるようになったのだ。
私、愛されてるうー。
求婚されるのも時間の問題かな?
「僕ももうすぐ学院に通うことになってるから、今のうちに、ね」
理由なんかいいの。
甘やかしてくれるならなんだっていい。
でも今のうちにって言うなら存分に甘える。そりゃもう甘えますとも。
わざわざ許可を出してくれるなんて珍しいんだから、憂い無く一生の思い出になるレベルで甘えさせていただくに決まってるじゃありませんか。
でもやりすぎて二度と甘やかされなくなったら死ねるから程々にね。やりすぎ危険。
それに学院って通いだからね。
まあ自宅から通うとは言っても寂しくはなるけどさ、本格的にかまってくれる人もいなくなっちゃうわけだし。
また新しい魔法でも開発してようかな。
そういえばアイテムボックスの普及計画とかあったね。お母様と話さないと。
この間、魔道具屋で色々仕入れてたみたいだし、新しい授業の項目として魔道具製作どうですかね。
魔道具を自作できるようになったらヴァルキリー様を自律化したいんだよねー。
それはもはや魔道具の範疇に収まってないような気がするけど、それはそれ。
なんなら実戦形式の訓練の相手ができるくらいになれば一石二鳥なんだけど、流石にそこまで高望みは、ね。
他にも作ってみたい魔道具が無い訳でも無いんだけど、基本的に魔道具で出来そうなことって魔法で済んじゃうことが多いんだよね。
体に魔力流してると外気温に左右されずに快適空間が保てるからエアコンはなくていいし。しかもこれ、副次効果で風邪にもならないという便利仕様。一番お気に入りのこの魔法が便利すぎましてな。
魔法と魔道具を同時に学び始めたならまだしも、もはや寝ながらの魔法の維持だって日常的にこなしてるんだから今更魔道具作ってもねえ、って感じはある。
そうなるとやっぱり他人用になるよね。
疲労回復効果付きのアクセサリーとか作れたらお父様にプレゼントしてもいいし、ハンドミキサーがあれば私が作らなくても短時間でお菓子が食べられる。
あんまり広めると問題起きそうだけど、私の近辺くらいにはあった方が便利な物を配備したい気はする。楽なのはいいことだもんね。
「そろそろ満足したかい?」
「満足しましたけどお兄様のお膝にならいつまででもいられる自信があります」
「ソフィアは甘えん坊だね」
これだけ言っても引かれないんだもん! お兄様、好き!
どこまで許されるのか分からないから甘え方を徐々に大胆にしてたんだけど、何でも笑顔で受け入れてくれる。
これはもう私のすることなら全て許してくれるんじゃないかと勘違いしそうになるね。
嫌われないように程々に。
そう自分に言い聞かせてるのに、頑張って我慢してるのに、お兄様ったら頭まで撫でてくれちゃうんだもんなあ。
今はこの幸せを噛み締めとこ。
お兄様のナデナデはエッテのお墨付きなのです。すごく気持ちが良いのです。