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もはや私室以上の安らぎ空間


「前から思っていたのだけど、ソフィアちゃんってこの部屋のことをどう思っているの? まさかお菓子の出てくる休憩所とは思っていないでしょうね」


「……学院における避難所とは思ってます。二人とも優しいから、つい甘えてしまって……」


 お昼に引き続き、やってきましたお菓子部屋。……じゃなくて、ヘレナさんの研究室。


 何気に一日に二人も連れ込むのは初めてかもしれない。


 あらやだ私ってばビッチの才能があるのかも? なーんてアホなことを考えてたら、いよいよヘレナさんにお叱りを受けてしまいましたとさ。


 やっぱ友達連れてくるのはやりすぎたかな?

 でもでも、放課後に居心地の良い空間と言ったらここくらいしかないんだもんよー。私の部屋だとリンゼちゃんの無自覚爆弾が怖いし仕方ないじゃん!


「あの、お邪魔なようでしたら私、出ていきますけど……」


「それには及びません。注意しているようにも思われるかもしれませんが、あれでも生徒に頼られて喜んでいるのですよ。普段はソフィア様以外の方がこちらに来られることはありませんからね」


「シャルマ!!」


「ふふ、怒られてしまいました。……なので、もし宜しければ気兼ねせずに、こちらで休んでいかれてくださいね」


 空気を読もうとしたミュラーへの、茶目っ気たっぷりなシャルマさんの気遣い。


 笑顔と共に差し出された紅茶を受け取れば、ミュラーも自然と安らいだ表情を浮かべていた。


 あれこそが圧倒的癒し(パワー)

 シャルマさんが慈母と(私に)崇め奉られる所以(ゆえん)なのである。


「そういうことなら喜んで。……いい香り。ソフィアがこの場所を気に入っているのも分かりますね」


「恐れ入ります」


 はーまったく、ミュラーってば良いご身分ですこと!

 私とヘレナさんが実の無いやり取りをしている間になんて羨ましいことをしてるんだろうねっ!


 シャルマさんとの貴族的な遣り取りは私もやるけど、なんか私がやる時よりも貴族力が高い気がするんですけど! ミュラーとシャルマさんがいる辺りの空間から、仄かに高貴な香りが漂ってくる気配すらするんですけど!?


 ぐぬぬぅミュラーめ。初対面であんなにシャルマさんと仲良くなるとはなんて手が早いんだ。


 私がじっくりねっとりと信頼関係を築き上げてきたシャルマさんからあんなに優しい視線を向けられるだなんて、まるで仲の良かった親戚のおねーさんが一年振りに会ったら地元のアイドルになってたかの様な気分ですよう!!


 まーねー、誰にでも優しいのがシャルマさんの魅力なんだけどねー。それはそれって言うかこれはこれって言うかー。


 私がいない時なら構わないんだけど、私がいる時に他人優先されちゃうと寂しい気分になっちゃうんですよね。私もシャルマさんに「ふふっ」って笑いかけられたいよう。


 嫉妬に駆られた私は、この状況の遠因を作ったヘレナさんで憂さを晴らすことにしました。


「ヘレナさん、生徒からの人気無いんですか? 私が『いい先生だよ』って広めてあげましょうか?」


 純粋な善意を装って、さも「悪いことしたお詫びに」といった体で提案してみた。もしかしたら可愛らしく照れながら「……お、お願いできる?」みたいな展開もあるかと思ったけど、そんなことにはならなかったみたいだ。


「必要ないからやめて。そもそも私の本業は研究なのだから、生徒からの人気なんて必要ないのよ」


 やたら「必要ない」っての強調するね。それに人気が無いことも否定はしないんだね。なるほどなるほど。


「私はヘレナさんのこと好きですから。元気出してください」


 一応シャルマさんの笑顔をイメージして励ましてみたんだけど、想定したよりも憐れんでる感じが表に出てしまった気がする。ヘレナさんの人間関係が本気で壊滅的なことに割とダメージを受けてたのかもしれない。


「……慰められる理由は無いと言っているのよ。ソフィアちゃん、私で遊ぶのはやめてくれない?」


 おや、バレてしまいましたか。まあバレますよね。いつも何処かしらで似たようなことしてるからね。


「……えへ?」


 都合が悪くなった時の伝家の宝刀。秘技、笑って誤魔化す!!


 お母様に使うと返り討ちに遭うけど、それ以外では高確率で追求を免れるこの秘技がある限り、私に敗北はありえない。

 いやまあ、笑って誤魔化さないといけない事態にまで追い込まれてる時点で負けてるだとか、そういった正論は置いといてね。


 まあ、ほら、あれよ。ヘレナさんで遊ぶと気は紛れるけど、シャルマさんに構って貰えた時ほどの幸福感は得られないからね。勝ちだとか負けだとかはどーでもいーじゃないですか。


 下らない勝敗なんてぽーいとうっちゃって、私もシャルマさんに優しくしてもらおーっと。


「シャルマさん。私にもお菓子下さい」


「はい。ただいま用意しますので少々お待ちくださいね」


 見てくださいよ。シャルマさんがくすくすと微笑んだだけで、まるで花が咲き乱れたかのようではないですか。眺めているだけでも癒されるねー。


 このシャルマさんの癒し力があれば、世界平和だって叶うかもしれない。


 ラブアンドピース。愛は世界を救うんじゃないかな、多分。


 まあ世界を救う前に、今は私の食欲を救って欲しいんですけど。



 一足先におやつタイムを楽しむミュラーの姿を横目にしつつ、私は今日も、幸福を甘受する心構えをしっかりと整えるのでしたとさ。


ソフィア的リンゼちゃんの要素。

ちっさい。かわいい。無口ロリ。に見えて口煩い。博識。元女神。私より私の部屋の主。

対して、ソフィア的シャルマさんの要素。

かわいい。優しい。美しい。料理が神。心遣いも神。むしろ女神。幸福の象徴。

ソフィアにとってリンゼ<シャルマになるのも当然の結果ですね。

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