ロバート視点:大切な人
いつまでもこんな関係が続くわけ無いって分かってた。
それでも、煮え切らないぬるま湯の様なこの関係が、僕は好きだった。
この関係が続く限り、アリシアを独占できるから。
「プロポーズとはお互いの心に一生残るものでなくてはなりません。本来であれば二人の日々の積み重ねの結晶として沸き上がる言葉というものがございますが、今回は時間がないとの事で、僭越ながらこのブライが聞き及んだ求愛の言葉をいくつかお教えさせて頂きます」
「求愛……よ、よろしくおねがいします」
アリシアが結婚に興味が無いことは知っていた。
家族が大好きで、できれば家から出たくないということも。
それなら形だけの結婚をしばらく続けてから離縁すれば、男と、その、交わることもなく、家に長くいられるんじゃないか。そんなことを考えた。
もちろん、僕にそんな大それたことを言う度胸はなかったけれど。
でも、アリシアが相手なら……そんな関係もありかも、なんて、あはは。妄想はしたこと、あるんだ。
だからアリシアから婚約者になって欲しいと言われた時は本当に驚いたんだ。
なんで僕を選んだのか。
アリシアは美人だから、相手だって選びたい放題だったはずなのに。
彼女の妹、ソフィアさんの噂は聞いたことがあった。いい噂も、その……悪い噂も。
幼い頃からとても頭が良くて、王妃様の相談に乗って見事解決に導いたとか聞いた。
悪い噂は、呪われた子だとか、災いをもたらすとか、そういうやつ。
メルクリス家には優秀な子が何人もいるから僻んでるんだろうけど、それにしたって酷い噂だ。
ソフィアさんが生まれてから魔物が増えたなんて言うけど、こじつけにもなってない。
魔物が増えたのは事実でも、それを一人の女の子のせいにするなんて恥ずかしくないんだろうか。
ミランダに連れられてソフィアさんと初めて会った日。噂なんて当てにならないと思った。
アリシアが会う度に自慢するのも分かる、人形みたいに綺麗な子。
全てを見透かすような瞳が最初はちょっと怖かったりもしたけど、話してみれば普通のいい子だ。
仲良くなりたいと思った。
僕とアリシアを心配してくれたソフィアさんとロランドくん。……ついでに、ミランダも。
これだけお膳立てしてくれたんだから、僕も頑張ってみんなに報いなくちゃと思う。
プロポーズなんて、僕がアリシアにしてもいいのかなとは、今でも考えるけど。
そうしないとアリシアが別の男のものになる。それは、我慢できそうにないから。だから、勇気を出そうと決めた。
この年にもなって結婚の実感も持てないのは恥ずかしいけど。
それでも、アリシアが好きだって気持ちなら。
きっと、誰にも負けない。
雰囲気に流されてるだけとも言う




