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世のお父さんに同情しよう


 エッテが呼びに来たということはお父様の用事が済んだということだ。


 この後の食糧配達を済ませれば私のお仕事は終了。


 早くお家に帰ってお姉様の結婚対策に戻らねばならない。期日はこうしている間にも迫っているのだから。


 願わくば、お姉様にとってより良い未来を。

 願わくば、ついでに面白い展開を。


 プロポーズ指南とか言ってたし、横で聞いてるだろうお兄様の進化っぷりも楽しみだ。


 練習と称してお姉様とミランダ様をその手腕でメロメロにしてたりしないかな、なんて。

 まぁ実際にそんなことになってたら困りそうだけど。楽しそうとも思っちゃうよね。


「来たか」


 エッテの示した先にお父様がいた。


 近づく私たちに気付いてお父様の傍にいた人が一礼して去って行く。


 それに対して片手を上げてこたえる姿はお父様の癖に格好良かった。

 偉そうなのに、不覚にも頼り甲斐がありそうに見えるから困る。いや実際偉いんだけど。


 少なくとも頼り甲斐はない。私の知る限りない。残念ながら、ない。

 何度でも言おう。頼り甲斐はない。


「お父様、お仕事お疲れ様です」


 見た目だけじゃなく、頼り甲斐くらいは欲しいものだけど。


 そんな態度はおくびにも出さずに微笑みかけるのにも慣れてしまった。


 お父様のことは割と好きなのに、たまにはイイ所を見せて欲しいなーとも思うのに、実際に目にするのは魔物蔓延る森に妻と娘を送り出す姿とかもうね。男としてそれでいいのか。


「うむ、ありがとう。それと、喜べソフィア。お父様の優秀な部下達が頑張ってくれたおかげでソフィアの仕事はなくなったようだぞ」


「わぁ、嬉しいです!」


 それは素直に嬉しい。

 嬉しいのに、それ元々私の仕事じゃないよねと頭の片隅から声が聞こえる。

 あとなんでお父様がドヤ顔なんですかとか、一人称お父様とか娘に媚びすぎじゃないかとか、なんかもう次から次へとお父様をこき下ろす心の声が溢れ出てくる。なんぞこれ。


 私が元々性格良くないの自覚してるけど、それにしたってお父様に対しての嫌味がこれだけ浮かぶのが異常だってわかる。

 年頃の娘が父親を嫌うのってこれのせいじゃない? 思春期の自然な反応だとしたら世のお父さんに同情を禁じ得ないよ。

 幸い嫌悪感までは抱かないものの、自分の中に悪い感情が溢れるのは気分も良くない。父親に近寄らなくなるのも納得だ。


「それでは、帰りましょうか」


「キュイ!」


 お母様の言葉にエッテが元気よくこたえ、私の頬を舐めてきた。


 そうだ、やっと帰れるんだ。


 実感が沸けば、心が求める。

 暖かく包み込んで、好きなだけ甘やかしてくれる、ふかふかのベッドを。


 きっと気持ちいいだろうなあ……、だけど。

 いや、と妄想で緩んだ頭を振って思考を切り替える。


 まだだ、まだ早い。

 遠足は帰るまでが遠足。まだ私には空飛ぶタクシーの運転手という使命が残っている。

 だけどそれさえ終われば愛しのベッドで、ああ……。


 よし。一刻も早く帰ろう。


連絡役までこなす万能ペット、フェル&エッテ。万能過ぎてメリー&マリーの出番がない。頑張れぬいぐるみ。

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