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日本語の力


 魔法を使う時は、日本語を意識すると良いらしい。


 創造神でもある唯ちゃんの言う事とはいえ、初めは意味がわからなかった。が、この世界が一人の人間、それも日本語に執着するとある馬鹿な日本人によって作られたものだという前提が入るのならば話は別だ。


 要はこの世界、日本語で命令するように出来ているらしい。


 もちろん創造神でもない私の命令が全て通る訳では無いんだけど、少なくともこの世界の共通語で呪文を詠唱するよりかは、日本語で「水出して」とか言った方が魔法は発現し易いみたいなのだ。驚愕の事実だよね。


 ……さてさて、ではその事実を知った今。

 ただでさえ魔法の得意な私が唯ちゃんの情報を踏まえて日本語を意識したまま魔法を使ったら、一体全体どういうことになるのだろうか。気にならない方が嘘じゃない?


 ――試した結果、こうなりました。


「お母様」「どうですか?」「我ながら」「今回の」「魔法は」「中々」「上手くいったと」「思うのですが」「どうでしょう?」「どう思いますか?」


 お母様に煽られて作った魔法《しゃべる君》が爆速で量産できるようになりました。やったね!


「…………ソフィア、」


「もちろん」「長い言葉も入れられるんですけど」「今朝にですね」「改良を」「施した」「ところ」「ほぼ」「同時に」「大量の」「声を」「閉じ」「込める」「ことに」「成功」「しまして」


「分かりましたから、貴女が凄いのはとてもよく分かりましたから、この魔法を一旦止めてください!」


 調子に乗って間隔を出来るだけ狭める遊びをしていたら、痺れを切らしたお母様に止められてしまった。自分でもちょっと「これは鬱陶しいかな」と思い始めていたところだったのでちょうど良いタイミングであったと言えよう。


 いやしかし、すごいなこれは。意識だけでこんなに変わるもんか。はー、すんごい。


 我が事ながらしみじみと感心してしまった。

 魔法を完全に日本語で組み立てるの、めちゃくちゃ効果あるわこれ。


 元から私は、こちらの世界の言葉を操り出した幼少期の頃から、頭の中では日本語で考え事をすることが多かった。


 それはもちろん今まで慣れ親しんできた言葉だということもあるし、同時に魔法や魔力に由来するこの世界独自の仕組みなど、単語だけ聞いても「なにそれ」ってなる言葉を自分なりに理解しやすくする為に必要な手段だったことも理由にあがる。


 いわば生活の知恵だった訳だね。


 ……当時は私はまだ、ハイハイもできない赤ちゃんでしたが!


 ともかく。そんな幼い頃から頭の中で扱う言語を日本語と定めていた私は、成長した今となっても頭の中は日本語まみれな訳であります。


 幸いにしてこの世界には、リンゴの見た目をしたバナナ味の果物だとか、「にゃーん」と鳴く犬なんて不思議生物も存在してはいなかったので、私の日本語←→共通語変換が不便に感じたことはあんまりない。日本語のダジャレを思い付いて一人笑いしている時に「どうしたの?」と聞かれて本当の理由を答えられないくらいのものだ。


 なので、今までも魔法を使う時は脳内標準語である日本語を使用してた。


 なのに、今回「日本語で魔法を使う」と意識した途端、目に見えて魔法の精度が上がった。


 喩えるなら……今までは足の指を使いながら目隠しで折り紙を折っていたのが、なんと目隠しを外すどころか片方の手まで解禁されたような、新時代の幕開けとも思える劇的な変化が起きたのである。


 これはちょっと、他の魔法でも試したくなるよね。


 以前に試して断念してた「エッテに成りすましてお兄様のなでなでを思う存分堪能する作戦」が遂に実行に移せる可能性が出てきたんじゃないかなー、とかさ。

 なんなら時を止める魔法を改良して、お兄様に永遠に近い時間頭を撫でてもらうなんてことも可能になっちゃったんじゃないかなー、なんて、素晴らしいアイディアが次々と浮かぶの。やめられねぇとめられねぇなの。ぐふふな妄想が止まりませんよマジで。むふふ。


 魔法ってやっぱりいいよね。


 夢と希望が満ち溢れてて、成功するまでのうんともすんとも言わない失敗の数々や、単調で退屈な魔力の精査作業とか全然苦じゃなくなっちゃうもん。便利な魔法を生み出した時の達成感はホント格別だわ。


 ……ついでにお母様の悔しそうな顔を見るのも、それなりに格別な気分だったり。


 うふふ。


「……ソフィア? 貴女の魔法はもしかして、声を閉じ込めている訳では無いのではないですか? 声ではなく……記憶? いえ、そんな馬鹿なこと……」


 おおー、流石はお母様。

 閉じ込めているのは記憶じゃなくて情報だけど、初見でそこまで見破るとは流石ですね!


「お母様の仰られるとおり、私の魔法は声を閉じ込めているわけではありません。この魔法のキモはですね……」


 そこからはもう、いつも通りの魔法談義。


 メリーの中身を量産したとバラしてお母様を驚愕させたり、音を情報に置換する考え方を伝授して感心されたりと、知的好奇心を満たす楽しい時間を過ごした。



 ……それはいいんだけど、この日本語で作る魔法。可能性の塊すぎてヤバいね!?


 いくら仏のソフィアさんといえど、これは欲望を抑えるのが大変ですよ……!


ソフィアを煽ると魔法マウントで反撃される。それも同系統かつ、かなりの改良が施された新種の魔法で。

お陰様で無言の魔女様は、今日も研究内容が充実してホクホクだったみたいですよ。

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