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天に召され……てなかった少女


「ちょっと創造神のトコ行ってくるー」と出ていった私がその後音信不通となったことで、私は神さまより天に召された扱いとなってたそうだ。本当に、色々とちょっと待って欲しい。


 まず、私は死んでない。

 いや正確には一回死んだけど、無事にこのとおり生き返った。


 まだ口内に残ってる気がする苦味を駆逐するためにもう一回口を濯いでから、味わい深いリンゴジュースでも飲みたい所存とか思ってるくらいには元気もすっかり回復している。


 そして時間。時間の経過が明らかにおかしい。

 私の感覚では出ていってからまだ半日すら経過していないのに、この時間のズレはどういうことだ。


 それにさ。私が「あ、これ死んだわ」と認識した時に発動するよう設定していた魔法が発動したということは、今は出ていった日の朝の時間に戻ってるはずでしょ? だのに戻るどころかひと月も過ぎてるとかどーなってんの。


 誤作動か? 魔法が誤って作用したのか?

 ってこんな器用な失敗するかボケェ。


 ――烈火の如く叱られたと思ったら、心配したと泣き付かれ。


 身体防御越しでない、生身の身体を痛みを感じるほどに強く、強く抱き締められて。


 あまりにも肩が涙で濡らされるもんだから、何となく頭を撫で撫でしてみたら、涙で目元を真っ赤にしたお母様による超至近距離でのお説教が始まった。


 こんな状況でもお説教優先とかマジですか。

 せめて、あの。おでこくっつけないでくれませんか。あまりに圧が強すぎるので。


 お母様の必死さに罪悪感を覚えつつも、どーせ魔力が回復したらもう一回過去に戻るんだからとお説教を話半分に聞き流し、私は僅かに回復した魔力を思考加速に回しながら現状についての認識を整えることにした。


 そして導き出された結論がー……これだァ!


 ――私の身に起きた、数時間しか経ってないと思ってたのに、実際にはひと月ちかく経ってた現象。


 これは多分、あれだ。宇宙飛行士がちょっぴり若くなるってやつだ。宇宙と地球では時間の流れが違うってやつ。所謂(いわゆる)「ウラシマ効果」ってやつだね。


 唯ちゃんの居たあの場所は世界の端っこ。

 だからその分だけ、時間の流れが早かったんだか遅かったんだか。要はそんな理由じゃないかと思う。


 だとしても、時間遡行が発動してるのにそれでもまだ時間のズレがあるとかどんだけ……いや、ああ。魔力が足りなかったのか。


 魔力が枯渇してたんなら《時間遡行》の魔法が完全に発動しなかった理由にも納得がいく。


 危険度の高いこの魔法は「もしも」や「万が一」がといった事故を減らす為に思いつく限りの条件付けを行っているのだけど、その中の一つに「供給された魔力が必要量に満たなかった場合、身の安全を最優先とする」というものがある。つまり「身体の保全」→「安全な場所への移動」→「過去への跳躍」と重要度と必要な魔力別に優先順位が定めてあるのだ。今回はこの三番目が省略されたわけだね。


 時間の移動が全くなかったのか、それとも少しは戻ったけど残りひと月程戻るための魔力が足りなくなったのかは分からないけど、危機は無事に脱したわけだ。


 折角唯ちゃんと仲良くなれたのに、まさかあんな間抜けな理由で死ぬなんて有り得ないもんね。


 突然放り出した唯ちゃんにもびっくりしたけど、唯ちゃんは外に出れないんだから環境の変化なんて実感に乏しくて当然だと思うし。あれは普段から無意識に魔法に頼ってた私のミスだ。予見できたはずの事故だったんだ。


 ……たった一回のミスで取り返しがつかなくなりそうな辺り、かなり救いようがないけど。幸いにして、私はこうして無事に生きてる。次からは気をつければ済む。それだけの話だ。


 ……あれ? でも魔力がない空間から宇宙に放り出されるのってどう対処したらいいんだろ? あらかじめ安全圏を用意する? でも魔道具じゃ無理だから、えっと……………………メリーに魔法を仕込む、とか……?


 ぬいぐるみって宇宙に生身でも平気だよね? あれ、これって案外妙案だったり?


 咄嗟の閃きに自画自賛していたら、表情を取り繕うのを忘れていたらしい。気付けば大分落ち着いた様子のお母様が私にジト目を向けてきていた。


 あらやだ、そんなに熱い視線で見つめちゃいやん。ソフィアちゃん恥ずかしくなっちゃうじゃないですか。


「……ソフィア、反省していますか?」


「反省してます!」


 ええ、それはもう反省していますとも。確認はしっかりするべきだってね!


 ハキハキと元気よく返事をした私に、お母様も毒気を抜かれたようだ。はあ、と大きな溜め息を吐くと、固かった表情が笑み崩れた。


「……ええ、ソフィアはそういう子でしたね。もちろん覚えていますとも。さあ、そろそろ連絡を受けたロランドが戻ってくる頃でしょうから、一緒に迎えに行きましょうか。ロランドに叱られた後でも今の気楽な言葉を聞けるのか、楽しみにしていますね」


 ……お、おおう。

 お兄様のシリアスはちょっと……辛いなあ。



 ――その後、お兄様とお父様にもめいっぱい抱き締められ、泣かれて、安堵され。


 私はもうちょっと、自分の身体を大事にしようと思ったのでした。まる。


「勘違いしてるようだから言っておくけど、時の流れに差異が出るのは、距離ではなく速度。この星から離れれば離れるほど時間がズレるのではなくて、その場所が光の速さに近い速度で移動し続けていたからこそ、ソフィアだけが時を短く感じていたのよ」

「……リンゼちゃんって本当に小学生?」

「?小学生ではないわよ?」

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