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最低の父親


 世界が生まれてから人が産まれるんだから創造神ちゃんが私の姉な訳が無い。うん、証明終了。


 そもそも創造神ちゃんって髪の毛黒いんだから、あるとしても前世地球での姉の方で……っていやいや、そっちも無いでしょ。年齢も合わないし私はこんな美少女の血統じゃなかった。


 ……美少女の血統ではなかったんだ!! くうっ!



 ――ともあれ。


 よくよく話を聞いてみれば、前世の私が確かに創造神ちゃんの血縁であるのと同時に、彼女がなんか勘違いしてるっぽいことが分かった。


 まず、この世界は創造神ちゃんが作った世界だから、外から入り込むためには創造神ちゃんと血の繋がりが無くてはならないらしい。


 だから「死んだ! あれ死んでない! 異世界に来ちゃってるー!?」なんて、漫画的な展開で簡単に来れるよーな場所ではないのだとか。ちゃんと理論に基づいた手順を踏んだ上で、条件の合った人しかこの世界には来れないらしい。


 つまり、私はその条件に合致しているはずなんだって。


 創造神ちゃんと血の繋がりがあったから。この世界に来れる条件を満たしていたから、彼女の父親に無理やり連れて来られたと。襲われたんだと。どうやらそういう事らしい。


 マジふざけんなって感じじゃない?

 こんなかわいー子と血が繋がってるってのはちょっと嬉しかったりもするんだけど、それ以上に話聞いてるだけでその父親の異常性が際立っててヤバい。


 彼女の父親はいわゆる天才というやつで、研究の為にお金を出してくれる機関はいくらでもあるのだとか。


 反面、その優秀過ぎる頭脳を巡って争いが起こることも珍しくなく、彼女が神様になった経緯も争いの最中に起こった偶発的な事故みたいなものだったらしい。


 とはいえ、実の父親から「しばらくここに隠れていろ」と異世界に閉じ込められ、そのまま今の今まで放置されていたと言う創造神ちゃんの心情を思えば、父親だろーがなんだろーが殺す気で殴りかかって良いと思う。事故の一言で済まないでしょそれ……。


 そんでね。まあそんな最低最悪な彼女の父親なんですけど、彼女と私に血縁があるということは、まあそういう訳でして。


 多分私の父親もそいつだわ。ホント、最悪の気分だよ。


 創造神ちゃんの名前は雛形唯(ひながたゆい)最低の父親(諸悪の根源)の名前は雛形(たすく)と言うらしいのだけど、幸か不幸かその名前に聞き覚えはない。そもそも私、父親の名前とか知らないし。


 片親で育った私には父親なんかいらなかったし、お母さんも必要ないと考えていたと思う。私たちは二人だけでも幸せに生きていた。


 それでも、たまーに父親の話題が出ることはあって。


 それは決まって他人から父親が居ないことを揶揄された時だけだったけど、笑い飛ばすように話すお母さんの中で、私の父という存在は「お金に不自由したことが無い」「頭の良いバカ」で、「子供のまま大人になったような人」という散々な評価だった。


 だからいない方が助かる。むしろ居たら邪魔だから私が追い出すと、お母さんは快活に笑っていて。


 ……それらの断片的な条件が、唯ちゃんの父親にも当てはまると思うんだよね。


 つまり、私と唯ちゃんは異母姉妹。

 まさか異世界に来てまでこんな運命的な出会いがあるとは思わなんだ。


 ……しかも、しかもそれが、こんなに可愛い姉妹だなんてどれほどの幸運だ!? あらかじめ知ってたらありとあらゆる知り合いに死ぬほど自慢したのに、勿体ない!!


 そう興奮する私に、唯ちゃんも「私もこんなに綺麗な妹がいたら、友達に自慢してたかもね」と発言したことで、彼女の勘違いが発覚した。


 なんと私、前世でもこのソフィアちゃん並みに素敵可愛い美少女子だと思われてたっぽい。もしそうだったらどんなに良かっただろうね……ぐすん。


「私はハーフでもクォーターでもなく日本人だったよ。唯ちゃんと同じ黒髪黒目で、容姿……あ、いや。顔の作りも、まあその、……普通の日本人だったよ」


 こう訂正した時の私の心が、どれだけ悲しみに暮れていたことか。


 美少女はとんでもない希少価値なのだということを、唯ちゃんには是非とも正しく認識して欲しいと思う。


 ともあれ、その勘違いの発覚に端を発し、私達はとある重大な事実を確認するに至った。


 この世界が創造(つく)られてから流れた時間、つまりは唯ちゃんがこの世界に来てから私がやって来るまでには、数千数万にも及ぶ年月の差があったにも関わらず、()()()()()()()()()()()この矛盾。


 そこから導き出される結論は……この世界と外の世界との時間の流れが、圧倒的なまでに違うという現実で。


 下手したらこの世界での一年が、地球では一分くらいしか経っていなかったという可能性だって充分ありえる。そんなの……めちゃくちゃ困るじゃないか。


 折角復讐すべき相手が判明したというのに、これじゃあたとえ地球への帰還を果たせた所でゆっくり探すことも出来ない。


 運良く用事をさっさと済ませて帰ったしても、その頃には家族みんなが天寿を全うしていてお亡くなりに、ということだって起こりうるのだ。


 ――復讐を取るか、家族を取るか。


 そんな二択なら、私は迷わず家族を選ぶ。



 私の中に永らく居座っていた復讐心はこの日、ようやく終焉の刻を迎えたのだった――。


マザコンソフィアちゃん、生まれ変わってブラコン&シスコン属性を追加するも、ファザコンだけは発症せず。

コンプリート未達成。

パパさんはソフィアの理想のファーザーにはなれなかったようです。

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