魔物を探そう
「肝が冷えたぞ」
「全くです」
「ごめんなさい」
能力はあってもまだ子供。
全てを任せすぎた責任もあると言ってはくれたけど、すみません私がバカなだけです。
よく転がりそうだから転がしてみたなんて口が裂けても言えない空気だった。
でもねえ、あんなに丸々としてたらねえ。
転がしたくなるのは仕方ないと思うよ。
我ながら反省してない私だった。
せめてものお詫びにと大岩のせいで窪んでいた道を均していたら、やたらでっかい虫が飛び出してきてびびった。キモすぎて思わず誅してしまったよ。
岩をどかすと下から虫が出てくることがあるのは知ってたけど、大岩の下からは大虫が出てくるものなの?
近づかずに処理したのは正解だったかもしれない。
もし始めから近づいてアイテムボックスに大岩を仕舞っていたら、あんな、幼児並みのサイズの虫たちが驚いてわらわらと飛び出してきたかもしれない。
……想像だけでも地獄絵図だね。
叱られることにはなったけど、次があったらやっぱり初手は岩を投げ捨てることにしよう。遠くからね。
道を塞いでいた大岩を処理し道も通れるようになった。
次の仕事は、原因となった魔物の排除だ。
自然と仕事とか言っちゃったけどお給金は多分出ない。
おねだりすればお小遣いくらいはもらえそうだけど、お金に不自由しているわけでもない。
急に連れ出されたのに思ったよりハードで、これがタダ働きってどうなのと思っただけだ。
「道が塞がっていたのも問題だが、魔物が増えすぎて山賊の手が足らないという話もあったからな。アイリスとソフィアがいれば魔物くらい朝飯前だろう!」
今は朝飯後だけどね。
というか、妻と娘に戦わせる宣言をしてふんぞりかえれる神経よ。
お父様は戦わないんですか、そーですか。
囮にしてやろうかこの男。
「ソフィアの魔法を見て気が動転しているんですよ」
えー、私のせい?
なんだか納得いかないけど、お母様みたいな素敵な人がこんな最低な発言を聞いても愛想を尽かしてないんだからお父様にもいいところはあるんだろう。きっと、多分、恐らくメイビー?
「まあついでだついで。少し周辺を見て回って、見つからなかったらそれでいいんだ」
確かに言われてみれば、お父様はどこか投げやりというか、とりあえず全部笑い飛ばしとけー! って感じだけども。
そういえば諸問題の解決に私を起用したのはお母様だって言ってたっけ?
お母様との約束もあったからお父様の前では魔法を見せないようにしてたし、頭を悩ませていた問題を私が文字通り飛び回って解決していくのは領主の立場からしたら、うん。あははー俺の苦労はー、ってなるかも。
そんな意識で改めてお父様の顔を見れば、笑顔なのに涙の跡を幻視しちゃったりして。
……もうちょっとお父様に優しくしてあげよう。
そう心のメモに書き足しておいた。
悪い魔物はいねがー!