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覗き見情報収集


 お兄様の職場環境がブラックな予感。


 そんなことが認められようか? いや、認められていいはずがない!!



 ――というわけで、お兄様の最愛の妹たるこの私。ちょっぴり本気を出しちゃいました。


 反省はしている。だが、後悔はあんまりしていないっ!


 自室で横になりながら、みょんみょんみょんと《遠見》の魔法を発動していたら、知りたくもなかった王様の苦労なんかを知っちゃったりもしたけどそれほど後悔はしてないんだ。


 だってね、あのね。

 王様が一人でいる時間、つまりは誰にもおべっかを使う必要のない完全なプライベートタイムにね。あのおじさんってば「ロランドは本当に優秀だな……」なんてしみじみ呟いていたんだよ? 独り言だよ? これって間違いなく本心からの言葉だよね?


 国家の中枢に居て優秀な人材なんて見飽きてるだろう立場の人が、お兄様が成した仕事の成果を見て「優秀だな」って。んふふ。


 そうでしょう、私のお兄様は優秀でしょう! それが理解出来る貴方はなかなか見る目があるようですね!!


 王様がお兄様をちゃんと正当に評価していると知って、私は《遠見》の魔法を打ち切ったのだった。っていうか、お兄様がいないところなんていくら見ててもつまらないしね。お兄様どーこー。


「ふーむ。やっぱり人ひとりを探すのって大変なことなんだなぁ……」


 普通なら。と心の中で付け足しながら、次なる魔法を発動する。


 私を中心にぶわりと広がる魔力。

 人に影響の無いように、精度はそのまま薄くして。


 お兄様の魔力にだけ反応を返すようにした《探査魔法》である。


「どっかの王様みたいに、とりあえず高いトコにいるとかなら探すのも楽なんだけどなー」


 まあ初めから、視覚頼りで見つかるとは思っちゃいない。


 思ってはいないけど、私とお兄様の運命力なら、あるいは……くらいには、まあ、ちょぴっとだけ、思ってたかな。


 あとやっぱ、視覚に頼るなら高いところからの方が探しやすいしね。


 なので別に《遠見》の魔法だけでお兄様を見つけられなかった事は私とお兄様の絆の力を否定する材料にはならない。あれはどちらかと言うと、お兄様が通勤する際の風景を私も体験してみようかな〜的な……まあ、私の趣味みたいなものだ。


 ……っていうか、お兄様ってマジで何処で働いてるの?

 家にいなければ王城か神殿にいるものと思ってたのに、そのどちらからも反応がないよ? このまま王都中に探索範囲を広げるってのは、流石にちょっとキツイんですが……。


 ミュラーの道場にも反応は無し。


 これはいよいよ、私の運命力を試す時が……とか思っていたら反応が出た。王城を挟んで向こう側の……これはどこだ? この距離だと北街? いや、まだ貴族街の中かな?


 探査魔法と入れ替えるように視覚を飛ばすと、中々立派なお店が建っているのが見えた。


 壁を透過して、店舗部分を更に奥に……あ、いた。



『――やだなぁ、そんなに警戒しないでくださいよ。僕は貴方に無茶を言いに来たんじゃない。ただお願いをしに来たんだ。貴方にだって利益のある話でしょう?』


『それはそうだが、こちらにも体裁というものがある。私の一存だけでどうにかなるものでもない』


『でも、どうにかすることはできる立場にある。……知ってましたか? この薬、実は最近更に改良が進んだみたいですよ』


『それが、噂の。……そうか。その薬にはロランド殿が絡んでいたのか……』



 ――なんか悪の取引現場みたいのが展開されてた。


 いや、いや。そんなはずはない。私のお兄様は悪いことなんかしない。本人も言っていたじゃないか、お互いに利益のある話であると。


 つまりあれはー。えー、えーと……。


 ……ていうか、あの時作った育毛剤って改良とかしてたの? そして案外有用な取引材料だったりするの? 私もいくつか在庫持っとくべきかな。


 巡り合わせさえ良ければ、私も自力でブラッドメイプルみたいな希少材料を手に入れることも……いやでも、私って運はあんまり良くない感じで……いやいや。


 ……とりあえず、今見た事は忘れようかな!


 内容はちょっとアレだったけど、見た感じお兄様も結構楽しそうな感じだったし、嫌々働かされているわけじゃなさそうだ。それなら私としては何の問題もない。帰ってきたら愛妹パワーでたっぷり癒してあげちゃおーっと。


「リンゼちゃん。お兄様が帰って来たら知らせてくれる?」


 私の洋服を手直ししていたリンゼちゃんが、私の言葉に顔を上げた。


「構わないけれど……あなたの方が正確にわかるでしょう?」


 それはそうなんだけど。ほら、私ってひとつの事に集中しちゃうと時間を忘れちゃうようなところがあるからさ。頼むよ。


「私はこれから……瞑想するので」


「はいはい。帰って来たら知らせればいいのね」


 キリリとキメ顔で言ったのに、リンゼちゃんは何事も無かったかのように机に向き直ってしまった。……相変わらずクールだなぁ。


 ボケをスルーされるのは寂しいけど、お仕事の邪魔をしてもいけない。大人しくひとり遊びでもしているとしよう。


 お兄様、早く帰って来ないかなー。


あわよくば、偶然、たまたま、訓練後の汗を流すお兄様を不可抗力で見ちゃうかもしれない……!

なんて思っていたソフィアの目論見は見事に外れました。

本人も自覚している通り、運はそれほど良くないようです。

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