次の目的地に出発しよう
翌朝、目覚めたのは私が最後だった。
「遅かったですね」
「申し訳ありません」
そもそもいつ寝たのかすら覚えていない。
食堂ではお母様に厳しい視線で迎えられたけどそれも仕方がないことだと言える。
時刻を確認すればまだ朝とはいえ、決して早くはない時間帯。
押しかけてきた立場の者として体裁はかなり悪い。
でもひとつだけ、ものすっごく物申したいことがある。
なんでレニーは元気いっぱいに動いてるの。
私と同じ程度の時間しか眠っていないはずなのにあのエネルギー量、信じられない。
胸に元気の素でも詰まってるんじゃなかろうか。
いかん、まだ寝ぼけてる気がする。
寝不足だろうとしっかりしないと。
朝食はまたリンゴが出た。
美味しかった。
私のせいで遅れたんだから、食べながら聞くから先に話してていいよって言ったんだけど誰も聞く耳持たなかった。
朝食が終わるのを待ってくれるんだからお父様もお母様も育ちがいいというか、さすが貴族って感じ。余裕を持てるっていいよね。
でもこれ急かされてる感じがしてゆっくり食べられないんだけど、実は急かされてるのかな。
昨日の村とは違ってここではお父様ではなくお母様が主体で話すみたいだ。というか、話したみたいだ。
全ては私が起きる前に終わっていて、私への説明が終わったら即出発なんだってさ。なんかごめん。
でもでも、言い訳っぽく聞こえるだろうけど苦情はぜひともレニーにお願いしたい。
私の不手際なんか目覚ましのかけ忘れぐらいなものだよ。悪いのは全部レニーなんだよ。怒られるから言わないけどさ。
話の内容は私の魔法関係も含むため、秘密保持の為の別室を用意された。
食後のお茶を頂きながら家族の秘密会議を聞いているといくつか疑問点が浮かんだので聞いてみる。
「道が通れなくなった商人さんから荷物を預かったりはしないのですか?」
落石で通行止めの箇所だ。
不通の解消は前提としても、既に引き返している人達がまた同じ道を通るならば二度手間だし、時間のロスの割りに実入りが増えるようにも思えない。
商売の事は詳しくないけど、思っていたところに売れなくなった商品は早く確保しないと別のところに売られてしまうのではないだろうか。在庫処分セールとかで。
「通行さえできるようになれば商人の方々が生活に必要なものを届けてくださるでしょう。確かにソフィアが運んだ方が早いでしょうが、ソフィアの力は万能ですから。他に困ってる場所を優先した方が良いでしょう」
よく分からないけど商人さんはちゃんと必要な荷物は必要なところへ届けてくれるようになっているらしい。
こういう仕組みづくりは大切なことだ。お父様の功績だったりするのかな。
というか、お母様からも私の魔法は万能に見えるんだね。
私のというか、魔法が万能なんだと思うけど。みんなももっと有効活用すればいいのにね。
とにかく方針は分かった。
もう全部お母様の言う通りにする!
あと私の仕事は、道を塞いでる岩を退けて、その原因となった魔物の駆除と、食糧配達がもう一件?
ちゃっちゃと済ませて帰りたい!
帰って、ゆっくり寝る!
安らかに眠るんだー!
「今日のお嬢はなんだか艶々してますね」
「それにくらべてソフィアちゃんのあの顔……」
「「お嬢の部屋で一体何が」」




