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不意打ちには不意打ちを


 ヨルが創造主に会ったらしい。


 この世界を創ったのがヨルだと思っていた私からすれば、神だろーが創造主だろーが似たようなものだと思うのだけど。要はヨルよりも更に格上の神様らしい。


 まあ私と関わることさえなければ、この世界を創ったのがヨルだろうと創造主だろうと、はたまた破壊神だろうと正直どうだっていい。危険が無い相手だというのなら、今まで通り、お互いに非干渉でいるのがいいのではないかと思う。


 ……そう、思ってたいのに!!


「そういえば彼女、あなたのことを知っていたわよ」


「え!?」


 なんで神様連中はみんなして私のことを気にしてるの! 放っておいてくれれば! いいのに!!


「……まさか、連れて来いみたいな話を?」


「それはなかったけど」


 けど? けど、なんですか? 不安を煽るのやめてください!


 ジト目で睨みつけると、ヨルは不思議そうな顔をしながらも話を先に進めてくれた。


「やっぱり世界の隔たりは、彼女が管理をしていたみたいよ。ソフィアの案内であの場所を特定出来たのだと伝えたら『完全に塞いだはずの穴をよく見つけられたわね』って褒めていたわ」


 ちょっと、ねぇ。それ本当に褒めてる? 褒めてるかな?


 私には「よくもやってくれたわね」的な発言にしか聞こえないのだけど、ヨルのこと信じていいんだよね? 本当に創造主様、私のことを褒めていたんだよね!?


 っていうかその前に、ヨルってばなんで私に被害が及びそうな事してるの!!


 私が地球に繋がるアイテムボックスを開こうとしたって情報は他所には漏らさないようにって、依然ちゃんとお願いをしてた……はず、で…………。


 ……? あれ? あれって前のヨルにしたんだっけ?

 いやでも、記憶はリンゼちゃんから受け取って……違う。あれは一部の記憶だけって話だったから……。


 ………………地球への道は私が知ってるって情報は覚えてたのに、その時に交した約束を忘れたヨルが悪いね! うん、そうに違いない!


 過ぎちゃったことは仕方ないけど、今後も私に危険が及びそうな行動は控えてくれるようにってあらためてお願いしておかなくっちゃね!


「――ソフィア、聞いてないでしょう」


 ――そんなことを、色々と考え込んでいたら、気付いた時にはリンゼちゃんから胡乱な瞳で見つめられていましたとさ。いやん、ソフィアちゃん照れちゃう。


「いや、聞いてるよ? 聞いてるけど、ちょっとショック受けてたっていうか。私の知らない所で私の命運が尽きてた可能性もあったんだなーって、ちょっと考えちゃった感じでさ」


 うん、これは嘘偽りのない本音だ。だからこそタチが悪いとも言えるのだけど。


「リンゼちゃんはどう思う? その、創造主って人のこと」


 とりあえず追求から逃れるついでに、リンゼちゃんの感想を聞いてみた。


 リンゼちゃんでは女神寄りの感想になるのは必然とはいえ、当事者ではない第三者の意見として、ある程度は信頼のおける返答が来るという確信もある。だってほら、それがリンゼちゃんだしね。


「どう、と聞かれてもね……」


 信頼した通り、リンゼちゃんは私の質問に真剣に頭を悩ませてくれた。


 私との会話は楽しむけれど、私を対等な相手と看做していないヨルではこうはいかない。


 リンゼちゃんは可愛らしく「そうね……」なんて呟いたあと、率直な意見を聞かせてくれた。


「少なくとも、ソフィアが地球に帰りたいと願うのであれば、いつかは会わなくてはならない相手でしょうね」


 …………不意打ちでそーゆーこと言うのやめてよう! 今のすんごい不意打ちだったよ!?


 やだもー、リンゼちゃんがこんなこと言うだなんて思ってもみなかったから変な汗かいた。目もなんかシパシパするしぃ。


「そーゆーことを聞きたかったんじゃなくてね?」


 そーゆーんじゃなくて、こう、もっと単純に、ヨルの話から推察できる人柄というかね……? ヨルの言葉の精度を高めて欲しかった感じなんですよ。ヨルと魂で繋がってる存在としてね?


 だからお願い、いつもの勘の良さで察してェ! と心で叫べば、リンゼちゃんは心底不思議そうに小首を傾げて。


「でも事実でしょう? そもそもあらかじめ危険を承知していたにも関わらずヨルに協力をしたのは、あなたにも得となるものがあったからでしょう?」


 …………や、やめてください、リンゼさん。

 私の心をぐっちゃぐちゃと掻き乱すような所業は即刻おやめくださいじゃないと泣くよ!?


 う、ううう。恥ずかしいやら、悲しいやら。


 私がそんな分かりやすかったってのもショックだし、リンゼちゃんが意外とサディストなのも知ってたけど想像の五割増で容赦ないしで、なんかもう心折れそう。私の部屋の安らぎを返せちくせう。


 ……あー、なんかそう考えたら怒りが悲しみを超越してきたわ。


 いいやもう。リンゼちゃんにやられた怒りはリンゼちゃんに返してしまえ。


「リンゼちゃん」


「なに?」


 全く警戒していなかったリンゼちゃんの頭をおもむろに掴み、むぎゅうっ! と力いっぱい抱き寄せてみた。


ほひあ(ソフィア)!? まみふるもほ(なにするのよ)……!」


「おお、何言ってるのか分かんないけど、かーわい」


 ふふふ、無力な抵抗が心地好いね。


 リンゼちゃんには悪いけど、私の気分が落ち着くまでもうしばらくはこのまま可愛がらせてもらう事としよう。


 ほーらほら、なでなで〜。なでなで〜。


 ご主人様に逆らうとこうなるって事を、賢い頭で学習してね〜〜。


ソフィアの唯一の誤算は、この行為を見たヨルが後に真似をし始めたことだ。

リンゼちゃんがんば。

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