早く夢から目覚めよう
安眠できたと言ったな。
あれは嘘だ。
「なにこれカワイイッ!」
眠気も限界だったしね、レニーの抱き心地もいいしね、安眠できたはずなんだよ。
実際安らかな眠りに落ちたはずなんだ。少しの間だけ。
私たちに挟まれて苦しくなったのか、服の中にいたはずのフェルたちがレニーに見つかったことで安息の時間は失われた。
「え? これがあの時の魔物!? 飼ってるの!? ホントに!?!」
もうねー、もう、ねむたいのにー。
なんか興奮してるみたいで寝かせてくれないの。寝ようとすると肩ガックンガックン揺すられるの。勘弁して〜。
「だって大きさも違うし、魔物なのに、え? 魔物って飼えるの? 何食べるの?」
それ今でなくても良くない?
明日の朝起きてからでも良くなくない?
「ねぇ〜寝ないで〜気になって眠れないよ〜!」
レニーって寝なくてもこんなに元気なの? 本当に人間?
寝ないとダメダメな私は普通の人間なのでアイッタァ!!
「あ、ごめん」
「ごめんじゃないでしょ! さすがに壁に頭ぶつけるのはダメでしょ!」
痛いなんてもんじゃないよ! 目の前に星が飛んだよ!
「ごめんって〜。あ、でもほら、目が覚めたみたいだしお話しよ?」
コイツ、まるで反省していない。わざとだったら強制的な眠りにつかせてやるのに。
いかん、眠りを妨げられて怒りが。
いやいや、怒るのは良くない。良くないよー。
静まれ私の怒り。
ストレスはお肌の大敵っていうし、心を穏やかに保つことで毎日を綺麗&健やかに過ごしたいよね。
「ほらほら、この子達もソフィアちゃんのお話を聞きたいな〜って、ほらほら〜」
今頑張って怒りを抑えてる最中なのになんで追撃してくるの?
レニーって私をイラつかせる天才じゃないかな。
そのくせ何故か憎めない顔してるんだから、これはもう天敵と呼べるかもしれない。
この顔がカイルだったら心置き無く眠らせてやるのに、女の子相手だとどうも強く出にくい。
フェルとエッテの手を掴んでお願いポーズをさせて遊んでるレニー。
楽しげなレニーとは対照的にフェルたちの目が死んで見えるのは気の所為だろうか。
巻き込んでごめんと思考が流れかけたけど、いやいや悪いの全部レニーだから!!
でも見捨てられないから仕方なく相手をする羽目になるよね。トホホ。
「へえー本当に飼ってるんだね。いいなあ。ボクも飼いたいなあ」
めっちゃ疲れる。というか疲れた。今何時よ?
寝落ちそうになると顔を突っついて起こすの止めて。
魔物ってだけで倦厭されがちなフェルたちを初めから魔物と知りつつ好意的に接してくれるのは正直嬉しい。
でも今は、嬉しいとか羨ましいとか、そんなことより寝かせて下さい。
あのね、空を飛ぶのだって自分一人とは訳が違うの。
みんなの命を背負ってるんだーなんてプレッシャーだってあるし、しかも今回は領民のみなさんの命も関わってるらしいから文字通り責任が重大だったの。
そんな中頑張ってお空を飛んで、ヴァルキリー様も違和感持たれないように動かしたりしたし、酔っ払いの相手だってしたの。疲れてるの。
お願い。お願いしますレニーさん。
「もう寝かせて下さい……」
「うん、いいよー。あっ、手もちっちゃくてかわいい! ほら見て見て!」
誰か……この子の電池抜いて。
これは夢だ。
現実の私はスヤスヤと安らかに眠っているに違いない。
そう思うことにした。
「眠ってるソフィアちゃんもかわいいなー。わーほっぺたぷにぷにーすごーい」