表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
820/1407

目的地を決めようとしただけなのに


 昼食も済ませ、準備は万端。


 楽しい楽しい友人達との街探索へといざ出発! ……という私の目論見は、開始一秒で崩れ去った。


「さてと。じゃあどこから行く?」


 自分から聞いておきながら、「お菓子屋さんかな? それとも女の子らしく、お洋服やアクセサリーでも見て回るのかな?」などと気楽に考えていた私は、友人達の性質をあまりにも理解していなかった。


 この子達が行きたがる場所なんて、少しでも考えれば分かったはずなのに。


「武器屋」


「やっぱり剣が見たいわね」


「鍛冶屋さんに、興味ある、かも」


 言い方は三者三様。

 それでも、目的の品は全員一致しているようだった。


 要はあれよ。魔物とまともに戦ってより良い武器が欲しくなったって事でしょ。わかりやすい人達だねホントにもう!


 凄いよね偉いよね。みんなは私と違って、この観光もまだ神殿騎士団としての任務の一環だと思ってるらしい。……って、そんなわけあるかーい。ただのバトルジャンキーですよこの子らは!!


 誰だこの世界を「平和な世の中」だなんて称したのは。

 そりゃ人間同士の争いのない、気持ち悪いほどに平和な世の中であるのも事実かもしれないけれど、魔物を初討伐した子供達が「次はもっと上手くやれるように!」って武器を買い漁ろうとする姿は、果たして本当に平和だと言っていいんでしょうか。ねえ女神様、そこんとこどう思うよ?


 戦わなくて済むのが一番だよねーと、肩に乗ったフェルの頭を撫でながら同意を求めてみれば、フェルは首を傾げた後に「キュッ!」と元気よく一声鳴いた。


 はいかわいい。

 もはや議論する必要すらなく、ウルトラスーパー最強にかわいい。


 とてつもかわいいもう一方はどうしているのかと思い、お兄様の方へと視線を向けてみれば、そこには私と同じように肩に乗ったエッテを優しく撫でるお兄様の姿が。至高の愛撫を受けたエッテはといえば、当然既にでろんでろんと幸福に蕩けきっている状態だった。……う、羨ましい。


 じゃないや。なんだっけ。そう、武器を見に行くんだったね。


「どこか知っているお店があるの?」


 これほどの熱意を持って目的地を定めていたのなら、既にお店の当たりは付けてるのかもしれない。そう思って尋ねてみれば、その想像は当たっていたようで。


「ええ。剣は騎士にとっての命だもの。優秀な職人たちの情報は全て覚えているに決まってるじゃない」


 なんて言葉が、まさかのミュラーから飛び出した。


 全てって、本当に全てなのかな?

 だとしたらその記憶力、是非とも筆記試験の時に発揮してもらいたかったのだけど……。


 なんて、思いはしても口にはしない。


 なにせ今は楽しい旅行中。

 野暮な事を言う暇があったらひとつでも多くの楽しい思い出を作ることに尽力するべきなのだから!!


「ミュラーって案外記憶力悪くないんだよな」


 と思ってたのに、あっさり本音を吐露しちゃうのがカイルという男。


 気持ちはわかるけど、言い方ってものがあると思うの。


「特別クラスの他の人たちが優秀すぎなのよ!」


 空気を読まないカイルの発言に真っ向から反論するミュラー。


 その意見は、まあ、うん。そうだね。

 あの子ら、普段の年相応の言動が信じられないくらい優秀だったりするよね。わかるわかるー。


 なにせ恋バナ振られてあうあう言ってる私と、厨二病全開で独特な空気感を持ってるネムちゃんがツートップだったりするんだから、勉学に全てを捧げている一部の学院生はさぞかし理不尽な思いを抱いていることだろうと容易に想像がつく。実体験込みの話しで。


 まあ私としては、彼女の努力は無駄ではないと、きちんと理解しているつもりなんだけど……。結果的にはそのー、……申し訳ないことになっちゃってるかなー? としか言い様にない。


 幸いリチャード先生からの評価はクラスでも随一の高評価だから、その辺りでどうか、満足してくれないものだろうか。時折じっとりとした目で見つめられてると、その。害意がなくても気になっちゃうからね。


「大体カイルだって元はそんなに成績良くなかったじゃないの。実は私達には内緒でソフィアと秘密の特訓をしてるとかじゃないの?」


「してねーよ」


 良かった。咄嗟に反論しなくて本当に良かった。危うくカイルと発言が被るところだった本当に危なかった。


 あのタイミングで二人同時に反論なんてしてたら「ほらやっぱり怪しい」ってなるに決まってる。


 不穏な気配を察知して反論を思いとどまった私、グッジョブだね!


「分かった、じゃあカレンとしているんでしょう! カレンの様子も最近おかしかったし、きっと二人っきりでどこかで……!」


 今度の標的はカレンちゃんか。


 あまりにもカイルの反応が淡白だった為か、ミュラーは「ソフィアと勉強している線はなさそうだ」と判断したらしい。が、まだカイルがこっそりと勉強している説自体は諦めていなかったみたい。


 まあ私とのやり取りで慣れてるカイルなら、この程度の煽り、そつなく聞き流して終わるはず……と、どこか安心した様子で眺めていたら。


「いや、してねーから――」


「ししししてないよ!?」


 カイルの発言に被せるように。

 なんと、カレンちゃんという大物が、見事釣り針に引っ掛かりました。


 ……これは尋問の必要がありそうですね。ねえ、カイルくん?

女の子に慣れてるカイルくんは、男一女三の男女比率が偏った現状にも何も思うところはないようです。イケメェン。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ