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 各人の奮闘により、周囲一帯の魔物は全て消滅。私たち神殿騎士団は今、休息の時を迎えていた。


「二人共、ありがとうね」


「「キュッ!」」


 魔物の誘導を担当してくれていたエッテたちの頭を撫でながらお礼を述べれば、「あれくらい朝飯前だよ!」とでも言いたげな声が返ってきた。


 魔物を追いやるために元の姿へと戻った二人はとても大きい。後ろ足で立ち上がると、熊と見紛う大きさがある。


 いつもは手のひらに収まる小さな頭が、今は身体いっぱいを使わないと抱き締められないサイズになっていて……その大きな変化を思うと、私はもう、もう……っ!


「う〜ん、もふもふぅ〜!」


 魂の衝動が囁くままに、がばちょ! と二人同時に抱え込み、その首筋を思いっきりわしゃわしゃした。


「「キュ〜」」


 うーむ、気持ち良い。よきかなよきかな。


 魅惑のもふもふを堪能していると、さっきまで疲れ果ててバテていたカイルからお呼びがかかった。


「おーい、ソフィア。水くれ水ー」


「はいはい」


 さっきあげたばかりじゃん。と思いはしても、空になったことを示すように容器を振って見せられては無視する訳にもいかない。私はお兄様に頼まれ、この任務中に必要な物資を全て預かっている立場なのだ。


 御要望通り、冷たい水の入った水筒をアイテムボックスから取り出しカイルに渡す。「おう、ご苦労」と偉そうに受け取るカイルに一瞬顔が引き攣ったものの、意識して気分を(なだ)め、透視を発動。他の人たちの水筒の残量をチェックしていく。


「ヒースクリフ王子もどうぞ」


「ああ、ありがとう」


 水筒と一緒に、未使用のタオルも渡す。汗をたっぷりと含んだ使用済みの物は、受け取ってすぐにアイテムボックスへポイした。


 さて、次は……もうないか。ならお兄様のお茶菓子でも準備するかな? なんて考えていたら、王子様の視線が私から外れていないことに気がついた。


 なんだろ、汗付きタオル受け取った後にこっそり手を洗浄したのがバレたのかな? なんだろ。


「……あの、なにか?」


 神殿騎士団としての立場であれば、私の方が上位のはず……と気持ち強めに聞いてみたら、王子様の関心はタオルとは無関係のところにあった。


「君も魔物を何体か倒していただろう? 疲れてはいないのか?」


「まあ、あのくらいであれば……疲れはありませんね」


 なんだ、そんなことかと内心で安堵するも、次なる脅威が迫っていることを探査魔法が感知。避けるのは悪手。気付かないふりをして甘んじて受ける。


 背中に軽い衝撃。


「そうよね。ソフィアはぜーんぶ、一撃で倒していたものね。ちょっと一瞥して、指をついっと動かして、それだけ。疲れるわけがないわよね!!」


 ミュラーさんが荒ぶっておられる。


 なんでだ。あんだけ魔物と戯れられたんだから満足してるはずでしょう戦闘狂さん。まさかまだ戦い足りなかったとでも?


 どう答えるのが正解かと迷う私に、心を癒す天使ちゃん様が近寄ってきた。


「私も、ね。聞きたかったんだけど……。ソフィアの魔法と、カイルくんたちの魔法って、何が違うの……? その、魔物を倒すまでの時間が全然違くて、不思議だなって、思って……」


 カレンちゃん一番大変なポジションだったのによく周り見てるんだね。案外余裕あったのかな。


 ともかく、質問の意図は理解した。明確な答えも用意できる。


 念の為、お兄様に確認をして……了承がもらえたので、答えさせてもらうとしよう。


「あれはね、魔法に込められた魔力の量が違うんだよ」


「魔力の量?」


 ミュラーさん、何故にほっぺをつつくのか。


 どう説明したものかと考えつつ、抵抗するようにぷくうと膨らませた頬を更にツンツンされていると、横で話を聞いていた王子様も会話に混ざってきた。


「じゃあ僕とカイルの魔物を倒す速度が違ったのも、その魔力の込め方が違ったせいなのか?」


「あ、それはカレンのせいですね」


「私……!?」


 あ、しまった。言い方を間違えた。


「ええと、魔物って魔力を与えると消えるでしょ? だから魔法で倒すんだけど、カレンは武器にも上手く魔力を乗せてるから、カレンが攻撃した後だと倒すまでに必要な魔力が減るのね。消滅させるまでに時間のかかってたカイルが担当してた魔物は、初めにヒースクリフ王子とカイルで無力化した魔物だったでしょう?」


「……言われてみれば」


「確かに……」


 (つたな)い説明ながら、なんとか理解は得られたようだ。分かってもらえて何よりです。


 カレンちゃんのせいではなくて、カレンちゃんのお陰で早く倒せた魔物がいた。それだけ理解してくれていればいい。


「つまり剣だけで魔物を倒せる私も、知らないうちに武器に魔力を乗せてたってこと?」


「まあ、そうだね」


 そうなんだけど、間違ってないんだけど、ミュラーの場合はどちらかと言えば、力押しに近いんじゃないかと……。


 魔物の体力が百としたら、カレンちゃんの攻撃は十。ミュラーの攻撃は二か三くらい。ただし、ミュラーの攻撃はその全てが連撃だ。


 一回の攻撃で十も二十も叩き込むミュラーを相手にした魔物さんの恐怖は如何程かと同情しちゃう。


「何? 煮え切らない言い方ね」


「あ、あはは……」


 これ、伝えなくてもいいよね……?


 とりあえず、笑って誤魔化すことにした。


 ……ちゃんと誤魔化せたかどうかは知らん!!


「……もしかしてソフィアって、ものすごく強くない?」

「そうだね」


アリシアは妹への理解を深めた。

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