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神殿騎士団の初仕事!


 ――(主にカイルが)待ちに待った当日。


 私たちは国からの依頼を請けた公的集団『神殿騎士団』として、初の任務に赴いていた。


 ……のだけど。


「はー……」


「…………」


「ねぇ、ねぇソフィア! あれ、帰りも乗れるのよね? 帰りはもっと速くしてくれない? もっと速くできるって言ってたわよね!?」


「しません」


「なんでよケチー!!」


 空気がもうね。完全に旅行気分になってる。


 メンバーとしては、お兄様と私、カイルにミュラー、カレンちゃんに王子様と神殿騎士団のフルメンバーに加え「心配だから着いてく!!」と同行を強く希望したお姉様を連れての計七名。それに護衛役としてフェルとエッテを連れてきたんだけど。


 移動方法がね、私の空飛ぶ荷馬車だったせいでね。初めての魔物討伐に気合を入れてたカイルが「はあ!!?」ってなって、カレンちゃんも「はぇ……?」って放心したみたいになって、ミュラーが「なにこれすごく楽しい!!」ってなってとても大変でした。主に運転する私が。


 ミュラーさんは、もうちょっと自重を覚えた方がいいと思うの。


「団長、あれは止めなくていいのか……?」


「まあ、ここには僕たちしかいないからね。帰りにはもっとすごい方法を使う予定だし、あれくらいの反応は可愛いものじゃないかな」


 別行動から帰ってきたお兄様とヒースクリフ王子の話を盗み聞きして、話の内容にちょっとげんなり。確かにワープなんて見せたら「ちょっと何よ今の!!?」と迫ってくるミュラーが目に浮かぶようだ。というか、今の状況が正にそれなんだけどね……? 揺らすのやめてぇ。


 ちなみにヒースクリフ王子は事前に私が使える魔法を把握していたようで、飛行魔法を使ったところでたいして驚いてはいなかった。浮く瞬間にはカイル同様、取っ手をがっちりと握りこんでたけど、その程度だ。


 団長のお兄様と、隊長のヒースクリフ王子。


 二人の指示に従って、私たちはこれから貴重な森の資源(甘味料)採取を脅かす魔物たちを撃退する。空気はだいぶ……いや、かなーり弛緩してしまったけれど、逆に肩の力が抜けてちょうどいい……かもしれない。


 なんにせよ、相手は何の変哲もない魔物がいるだけ。


 お兄様にも「いざという時以外は手を出さないでいい」と言われているし、私はみんなの戦いぶりをお姉様と一緒に見学させてもらうこととしよう。


「さて、そろそろ出発しようか。森は既に封鎖済みで、これから魔物の排除をすることも通達してきた。戦力は充分とはいえ、ここから先は魔物の領域。不測の事態が起こることも想定して、以後、気は引き締めてかかるように!」


 どうしよう。真面目お兄様がテラカッコイイ。


 お兄様の号令に気合いの入った返事をする皆を見ながら、私は呑気にそんなことを考えていた。



 ――程よい木漏れ日が溢れる森の中は、正に魔物の巣窟と呼ぶに相応しい状況になっていた。


「カイル! トドメはまだか!? もっと速度を上げろ!!」


「これでも精一杯だって!! 魔法の制御はあんまり得意じゃ、うおっと! わりぃカレン!」


「私こそごめんね! 思ってたより、再生が早くて……っ!」


 ヒースクリフ王子を隊長とした三人が、八体の魔物を相手に戦っている。


 既に二体は消滅し、残りの六体も一体を除き行動不能。現在、王子とカイルが必死こいて魔法を浴びせている真っ最中。カレンちゃんはその間、二人が魔法に集中できるよう、残りの魔物の手足を再生する傍から斬り飛ばす役割に専念している。生き物相手じゃないから血が吹き出したりはしてないとはいえ、絵面は中々にエグい。


「ロランド様ぁー! これ不測の事態ってやつじゃないですか!? ソフィアの魔法で一掃しちゃえば良くないですか!?」


 水魔法の詠唱の合間に喚いたカイルの方を一瞥し、お兄様はにこやかな笑みを浮かべた。


「思ったよりは多かったけど、きちんと対処出来てるじゃないか。ソフィアがやるなら君のこれまでの頑張りは無駄になるわけだけど、本当にそれでもいいのかい?」


「ああもうっ、この兄妹は本当に……っ! 分かりました、自分でやります!! やってやりますよ!」


 わっは、スパルタなお兄様もいいな〜。あの視線で見つめられたらゾクゾクしそう。私も手を抜いたらあんな視線で見つめてくれないかな〜、ムリかな〜。


「ソフィア!! 一匹抜けたわよ!」


「はいほ〜い」


 ミュラーの注意に従い、お姉様に向かってくる魔物に魔法を一発叩き込む。


 サンッ、と風が枝葉を打つと、その通り道にいた魔物は影を揺らして消滅した。


「〜〜〜〜ッ、だからなんでっ、そんな簡単に倒せるのよ!? いくら魔法とはいえおかしいでしょう!?」


「剣で倒せる方がおかしいんじゃないの?」


 私に文句を言う前に、ミュラーはまず自分の異常さを自覚するべきだと思う。魔法でしか倒せないはずの魔物を剣で滅多打ちにするだけで十体以上倒してる人におかしいとか言われたくない。


「みんな強いのねぇ……」


「そうだね」


「ですね〜」


 私の周りだけ平穏な時間が流れる森の中。

 魔物と人とが入り乱れて戦う荒々しい空気がさらなる魔物を呼び寄せる。


 カイルたちが落ち着けるようになるには、もう少しだけ時間がかかりそうだった。


学院はみんなで公休したそうです。

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