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あれ?私の騎士団、強すぎ……?


「アジールくんがそれはもうかわいくて、かわいくってね〜!」


「そうか、良かったな」


 カイルの無関心っぷりが酷い。


 学院に来たらカイルたち神殿騎士団のメンバーが集まって「魔物怖いよう」的な話してたから緊張を解してあげようとしたのに、なんて酷い扱いだろうか。カイルなんて魔物に脅かされておしっこ漏らせばいいと思う。


「赤ちゃんって、かわいいよね」


「確かに。ソフィアが赤ちゃんを抱いていたらすっごくかわいいでしょうね」


 女子メンバーも同意してくれるのは嬉しいのだけど、カレンちゃんとミュラーの言葉が似て非なるものに聞こえるのは私の気の所為だろうか。


 最近のミュラーからはどうも友情を超えた熱量を感じてしまって、そこはかとなく不安になる。私にそっちの()はありませんのことよ?


 まあ赤子といえど、かわいいかどうかは実際に見るまでなんとも言えないという事なら、分からないでもないけど。


 かわいい子供はかわいいけど、かわいくない子はかわいくないもんね。


「ソフィアの子供も、きっととても可愛いのだろうね」


 そして最後の一人が、もうどうしようもなくキモイ。


 最近は少しはまともになったかなと思ってたんだけど気の所為だったみたい。王子様はどこまでも王子様だった。


 発想がもうね、堪らないよね。いやらしい目で見られてはいないんだけどそれが逆に怖いというか。この国のあけすけな性事情はいつまで経っても慣れる気がしない。


 外見も中身も小学生男子のアーサーくんにチビと揶揄される私を見て「かわいい子供を産みそうだね」って、それもうセクハラとか通り越して精神異常者じゃない? 十五歳で成人、同時に結婚・出産も当たり前のロリコン世界にしたって、物事には限度ってものがあると思うの。


 これ以上アジールくんの話を続けようとすると私の精神が耐えきれなくなる予感がしたので、不本意ながら一番興味の薄そうだったカイルに別の話題を振ることにした。


「それに比べて、カイルはほんっとかわいくないよね。魔物の討伐だってした事ないんでしょ? 内心では『怖いよ〜』とか『行きたくないよ〜』とか思ってたりしないの?」


 そうだったら面白いのにな、と思いながら聞いてみたら、カイルに馬鹿を見る目で見下された。心底馬鹿にした目で見下された。しかも盛大な溜め息を惜しげも無くオマケにつけるサービスっぷりだ。ソフィアちゃん修羅っちゃいそう。


「お前は本っ当に常識ないのな。騎士にとって魔物の討伐は一人前の証みたいなものだろ。むしろ楽しみすぎて震えてくるぜ!」


 お、おお。なんだか私が馬鹿にし返すまでもなく、自らバカになりにいったぞコイツ。これはこれで面白いけど、なんだかちょっと不完全燃焼な感じ。カイルが満足そうなのがとても不満だ。


 とはいえ熱血おバカさんに成り下がったカイルに絡むと面倒な事になりそうなので、カイルと同じく武門の家柄である二人に今の話の真贋を聞いてみることにした。


「ねえ、騎士の家ってそうなの?」


「ええ、そうね。昔は魔物が少なかったから特にそういう傾向が強かったみたい。まあ【剣姫】である私は既に、一人で何体もの魔物を倒した経験があるのだけどね!」


 どうしよう、なんかミュラーが急に天狗になっちゃったんですけど。


 戦うのが趣味の人達にとって魔物ってそうなの? 倒した数が誇れるバロメーターになるの? フェルなんか一分もあれば五匹くらい狩れちゃうアレが? ホントに??


 以前騎士の人達が魔物を倒す場面を見ていなければ「きっと私が思ってるのとは違う魔物がいるんだね!」で終わる話が、悲しい現実を知っているせいで混乱しかできない。


 ミュラー程の強さがあって、魔物を倒した程度で喜ぶ……? ありえなくない……?


 ネズミかな? ネコがネズミを甚振って満足そうにしてるあの感じかな? ミュラーってそーゆーの好きそうだもんね!


「最近だと、ね。魔物の討伐を、子供に見せる家も多いみたい……だよ? 私もね、この間、連れていってもらって――」


 ふむふむ。カレンちゃんはミュラーとは違って、魔物の討伐経験はないらしい。つまりは今度の旅行が初体験になる訳だ。ドキドキワクワクだね!


 そして聞いてもいない、騎士の家でもない人からも返事をもらった。


「僕も魔物の討伐に同行したことがあるよ。一体倒すことも経験させてもらった。魔物に射竦(いすく)められるあの感覚は、一度は体感しておかないと危険だと思ったね」


 ふむん、王子様の言うことも最もだけど、子供にあの感覚を味合わせるのは酷ではないかとも思う。


 いやまあ、学院生は大人と子供の中間で、この世界では大人寄りの存在なのかもしれないけど……対抗魔法なしで魔物と対峙するのは、結構怖いよ?


 ちらりとカイルを見る。

 まだ見ぬ魔物との対決をとても楽しみにしているご様子。


 一方カレンちゃんは……カイル同様、魔物との対決を楽しみにしているように見える……。


 うん、平気だねこれ。このメンバーなら魔物退治くらい楽勝だわ。私もいるしね。


 いっそ退治される魔物の方が可哀想に思えてきた。明らかにこれ、過剰戦力が過ぎるでしょ。


 流石はお兄様と言うべきか。万が一も有り得ない完璧な布陣。


 つまりはそれだけ、私が愛されてるってことだね!


ロランドがソフィアの為だけに集めた戦闘用集団。

弱い道理が無かった。

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