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お姉様を説得します!


 人を困らせる魔物を退治する。


 それは、魔物を討伐する能力を持った貴族として当然の行いである。


「まあ、確かに、そういった面もあるかもしれないけど……」


 貴族がお金持ちで、のうのうと暮らせているのは誰のおかげか。汗水垂らして働く国民のおかげだ。


 ならば私たち貴族は、国民の為に汗水を垂らして働く義務がある。それが、国民のお金で育ててもらった私たちの恩返しに他ならない。


「感謝をすることは良い事だわ。ソフィアが優しい子に育ってくれて私も嬉しい。でもね……?」


 私には魔物を倒すために必要な魔力が有り余ってる。私にとって魔物を倒すことは容易い。けれど、他の人もそうだとは限らない。魔物が脅威になっている人も現実に存在するのだ。


 魔物を簡単に倒せる私が魔物を倒し、代わりに私に出来ないことを出来る人にしてもらう。これが助け合いというものだ。


 世の中はそうやって、助け合いで回っている。


 ならば、私が魔物を倒すことに何の問題があろうか。私の力が人の役に立つのならこれ以上嬉しいことは無い。私は喜んで危地へと飛び込み、魔物を倒す。それが私の存在意義と言ってもいいくらいだ。


「いいわけないでしょ。それならソフィアは魔物を倒していれば満足なの? そのメイプルシロップで作ったお菓子はいらないわけね?」


「それとこれとは話が別です」


 くっ、しまった! つい返事を!!


 後一歩のところでお姉様の説得に失敗してしまった!! 貴重な甘味の魅力には勝てなかったよ……!!


「後一歩どころじゃなかったけど……まあいいわ。それで、ソフィアは魔物退治に行くのを諦めてくれるの?」


「それとこれとは話が別です」


「も〜頑固ねぇ……」


 いやいや、頑固なのはお姉様の方でしょうと、心の中で反論する。


 私の考えをいくら説いてもお姉様は全然納得してくれない。

「私が魔物退治に行く」というその行為自体を忌避しているように感じられる。


 こうなるともう、ここでいくら言い合ったところで言葉だけで説き伏せることは叶いそうにない。お姉様の魔物に対する考え方を変えるには、実際に魔物がどれだけ弱っちいかを証明するしかないと思う。


「お姉様は、魔物を見たことはあるんですよね」


「ええ、あるわよ。黒い異形に、全身を支配する恐怖……思い出しただけでもゾッとするわ……!」


 そうだね、ゾッとするよね。

 でもお姉様なら多分、魔法一発撃つだけで簡単に退治できたと思うよ。


「魔法撃ってみました?」


「逃げたに決まってるでしょ!?」


 ちょっと聞いただけじゃん。そんなに怒んないでよ。


「魔物って見た目とは違って本当に弱いんですよ。魔法当てるだけで嘘みたいに倒せちゃえるんです。だから本当に危険はないんですよ」


「そんなわけないっ…………ないわよね?」


 おお、あれほど(かたく)なだったお姉様がついに聞く耳を持ってくれた! ソフィアちゃん感激!!


 私が諭すように伝え続けたのが功を奏したのか、お姉様は「本当にそうなの?」とお兄様に確認の視線を向けている。


 お兄様の言葉には説得力があるからね。お兄様に断定されたらいくらお姉様と言えど、認めざるを得ないでしょう。


 さあお兄様、お姉様に現実を教えてあげてくださいなっ!


「えっとね……魔物が魔法に弱いのはその通りなんだけど、簡単に倒せるかというと、必ずしもそうではなくて……。ああでも、ソフィアが簡単に魔物を倒せるのは本当のことだよ。そこは信頼してくれていい」


 ん? ってなった。

 なんか思ってた答えと違うぞ? ってなっちゃいました。


 お姉様は渋々納得したようで、お兄様に追加の質問をしてるけど私はちょっとそれどころじゃない。ここで認識の違いを正しておかないと取り返しのつかない事態に陥る可能性がある。


 え? 魔物って弱くないの? 簡単に倒せるものじゃないの?


 フェルとかエッテに任せたら走りながら退治するレベルのスピードで狩ってたから、てっきり戦闘行動すら起こってないと思ってたんだけど、実は二人が強すぎたってオチ? 騎士の人達が小さな魔物をリンチしてたのは適切な行動だったの? あの騎士さんたちが特別弱くて慎重だっただけの話じゃないの??


 もう何が正しいのかが分からない。


 分からないけど、お兄様が正しいってことだけは疑いの余地なく理解してる。


 つまりあのまま話が進んでいれば、危険な魔物たちの前に大切なお兄様や友人たちを無防備なまま差し出すことになってたって訳だ。


 魔物って怖いね!


「あの、お兄様? 私しか簡単に魔物が倒せないのなら、私ひとりで行ってきた方が……」


「ああ、不安にさせてごめん。確かに確証はないんだけど、彼らなら危険は少ないはずなんだ。ソフィアだけじゃなくて僕やミュラーも魔物を退治した経験はあるから、ソフィアが心配しているようなことにはならないと思うよ」


 あ、そうなの。それなら良かった。


 不幸な事故が起きる可能性の高い旅行とか気が休まらないもんね。お兄様のお墨付きなら何の心配もいらない。安心して旅行を楽しもう。


「というわけなので、安心してくださいお姉様!」


「……ロランドも大変ね」


 あっれ。何故かお姉様に呆れられてしまった。解せぬ。


 でもまあ強硬な反対姿勢は解けたみたいなので良しとしよう。


 これもお兄様の説得のおかげだね! さすおに!


恐怖を軽減する魔法を覚えてから、ソフィアにとっての魔物は害虫並みの存在となった。

なんなら数が多くていくらでも湧いて出る虫の方がソフィアにとっては面倒な相手かもしれない。

まあどちらにせよ、フェル&エッテが退治してるんですけどね。

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