表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
802/1407

おや、お兄様の様子が……?


 ピンチです。

 私は今、女として一世一代のピンチを迎えているところであります。


 ああ、気を抜くとニヤニヤが表に出てしまう! でもそんなの絶対にダメッ! 初めては雰囲気を大事にしないと!!


 葛藤する私に、お兄様が。遂にその一歩を踏み出してきて――っ!!





 ――思えば、初めからちょっと変だった。


 お城からお母様と共に帰ってきたお兄様は、お出迎えの挨拶を交わすなりそっと私に身を寄せてきて「ちょっといいかな」なんて囁くと、あれよという間に私を連れ出し人気のない場所へと連れ去ったのだ。


 人気がなくて、ベッドのある場所。


 そう。私は今、お兄様の部屋に軟禁されています。


 有無を言わさず強引に手を引いて連れ込まれ、唯一の扉はお兄様の背中側。かよわい女の子と成人した男性が部屋に二人っきりだなんて、もうもうこの先の展開が予想出来すぎちゃってソフィアちゃん困っちゃいますうぅぅ!! な状況であります。


 心の中がヨダレで溢れかえりそう。いやどうせならお兄様のヨダレで……いやいや、それもどうなんだ。どうせ汚されるならもっとこう、定番の白い液体……やめよう、なんかこっ恥ずかしくなってきた!!


「お、お兄様……」


 いつもとは少し様子の違うお兄様に、遂に運命の時がと不安になっているのか。思いの外声が震えた。


 これは訓練ではない。繰り返す、これは訓練ではない!!


 お兄様の我慢が限界の模様! 私に受け入れる覚悟はあるんですか!!?


 脳内のミニソフィアちゃんが全力で返答。


 はい! あります!!

 ホントはないけど、そんな無理矢理チックなのも男の人は好きだって学院で女の子たちが話してました!!


 ならばよし!! 既成事実さえあればお兄様なら絶対に責任を取ってくれる!! 茨の道だろうとお兄様と二人ならなんだって超えていける自信が私にはあります!!!


 ――今日この日に、私は大人の階段を上るのだろう。


 だがそれは、あくまでも始まりの一歩に過ぎない。

 ずっと憧れ待ち望んでいた、お兄様とのめくるめく新婚生活は、今日を第一日目としてようやく始まりの鐘を鳴らすことが許されたのだぁっ!!!


「ソフィア――」


「お兄様っ!!」


 駆け寄る二人は力強く抱き合い、そして――


「すまないっ!!」


「愛――」


 愛の言葉を交わし――……あー、愛、が…………あー、うん………………。


「…………相手が相手なんだから、仕方ないですよ……」


 なんとか誤魔化す言葉を絞り出した時には、あれほど荒ぶっていた熱量なんてすっかりさっぱり晴れていた。人の感情ってすごいよね、パワーが。


「ごめん、ソフィア……。王家の力だけじゃ、どうしても解決できない問題が起きたみたいで……」


「お兄様が謝ることではありません。詳しい話を聞かせてもらえますか?」


 はー。それにしても、はーー。


 まあそんなこったろうと思ってたけど、やっぱり王様の用事って私に関係することだったのね。


 お兄様に頼むのは無理!! みたいなこと言ってたから別の用件かとも思ったけど、やっぱり面倒になるのは避けられないのね。うん、そんな予感はしてたよ!!


 シンの暴走。お母様と王様の会話。早々に帰された私。代わりとばかりに呼び出されたお兄様。


 これってあれでしょ。お母様ってばその場で私の利用方法を話し合うと私がなんとか面倒事を回避しようとするのを予測して口を挟めないように私を帰したんでしょ。お母様はリンゼちゃんに弱いもんね!!


 企み事を断れないよう王命としてお兄様に伝えることで、万が一にでも私が「聞いてませんでしたあ!」なんてことを言えないようにするこの念の入れよう。お母様がそこまでするほどに私が逃げたくなる事が確定してる案件とか、もう話を聞く前から憂鬱すぎてツラい。


 いっそさっさと終わらせて、清々しい気分でお姉様とのおしゃべりに戻りたい……とか考えてたんだけど。


「それで、魔物の数が想定より多くて――」


「街の人達が困って――」


「神殿騎士団の経験にもなる――」


 …………なんか、お兄様の話を聞くに、それほど面倒そうな話でもない? ってかシンの件とは関係なさそう?


 どうも想定していたのと話の内容が違うっぽいので、それとなく確認してみた。


「あの……この件、お母様は何か言ってました?」


「母上がかい? ……そうだね、『ソフィアなら危険はないでしょうし、他の子達も優秀なので問題なく解決はするでしょう。ただ、「陛下が学院の生徒(未成年者)を魔物退治に駆り出した」という事実が残る事だけはお忘れなく』と言っていたかな」


 あ、お母様が味方側だ。


 つまり私がさっきまで考えてたことはまるで的外れだったって事だね! やったね、思ったよりも大分楽そうなただの仕事の依頼だったよ!


 つまり考えようによっては、これは小旅行みたいなものだ。

 お兄様や仲の良い友達と一緒に旅行をして、旅程のついでに道端で出会った魔物を駆除するだけの簡単なお仕事だ。


 そう考えたら、なんか俄然やる気が出てきた。


「分かりました。お兄様からのご依頼、完璧に遂行してみせます!」


「うん、依頼は王家からのものだけどね」


 依頼元はともあれ、旅行の予定が入りました! 楽しみ!!


年がら年中妄想はしていても、実際に可能性が生まれると腰が引けちゃうチキンちゃん。

そんな彼女は恋に恋してる程度がお似合いなのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ