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お姉様だあー!!


 学院にいたら、呼び出しを受けて。


 呼び出された先の王城では、シンやヨルの相手をして、精神的にも疲弊した。



 だからね、もうおうちに帰ったら「ベッドにダーイブ!」しようと思ってたのよ。いっそ夕食の時間まで寝てるのもありかなって。頑張った自分へのご褒美として。


 だから、こんな展開は予想していなかったんだ。


「ソフィアっ、おかえりなさい!」


「お、お姉様!?」


 ――まさか我が家にお姉様がいるなんて!!


 嫁に行ったきり、お手紙でしかやり取りのなかったお姉様が喜色満面で私をお出迎えしてくれた。その横には、赤ん坊を抱いた見慣れない使用人の姿もある。


 家に入る前まで考えていたはずの「うちの屋敷には穴あいてなくて良かったなあ」とか「ヨルが無事に帰ってきた時用のお菓子でも作っとくべきかな」なんて、どーーでもいい思考が全て吹っ飛んだ。私の頭の中は今、何故お姉様がここにいるのかという疑問と、久し振りに会えたお姉様がまた一段と美人になってたことに対する興奮でいっぱいだった。


「うーんっ、ソフィアは相変わらずかわいいわね〜〜!! うちの天使もかわいいけど、ソフィアはまた格別のかわいさがあるわ〜! この胸の中に収まる感じ、堪らないわ〜〜!!!」


「私も、お会いできて、嬉し、です」


「かわいい〜〜〜!!!」


 感極まったように、ぎゅむうっ! とお姉様の胸の中にかき抱かれる私の頭。


 感動の熱量は私だって負けていないと自負してるけど、如何せん体格差が。あとその、胸部装甲の差が。圧倒的で。


 息がね、あのね。

 お姉様の豊かなお胸に、ソフィアさん押し潰されそうです。


「奥様。そんなに強く抱きしめられては……」


「ああ、そうよね! 何年も離れてたのは初めてだったからついね! ソフィア、会いたかったわ!!」


「ぷはっ……。……はい、お姉様。お久しぶりです。私も会いたかったです」


 奥様だって。この元気の有り余ってるお姉様が、奥様。なんか変な感じ。


 でも確かに、以前のお姉様だったら私を抱きしめたまま会話を続行していたとしてもおかしくはない。今は興奮しているけれど、きっと普段は母として、もっと落ち着きのある淑やかな女性として他所の家で立派に奥様をしているのだろう。


 それに、ほら。お母様も分厚い仮面被るのが得意な人だし。私も私で、相手によって表情を変えるのが当たり前の生活してるし。


 お姉様も我がメルクリス家の淑女としての教育を受けてて、しかも優秀な人だからね。


 何も心配はしていないよ!


「それで、あの。今日はどうしてこちらに?」


 とりあえず再会の感動を分かち合ったところで、そもそもの質問をしてみた。


 何故お姉様が我が家にいるのか。お母様はこのことを知っていたのか。


 少し立ち寄っただけなのか。それとももしかして、今日は泊まっていったりするのだろうか。なんなら数日滞在したり? 子供の世話が落ち着いたからしばらく実家で過ごそう的な? 親子三人での初めての家族旅行とかかな?


「あら、まだ聞いてないの? なら私も秘密にしておこうかしら。勝手に話したらロランドに怒られちゃうかもしれないしね〜♪」


「え〜、教えてくださいよう〜」


「うふふふ〜、だぁーめ♪」


 そっか〜お兄様が関係してるのかぁ〜、それなら仕方ないかな〜〜。


 お兄様のすることに間違いはない。

 すなわち、お兄様が秘密にしようと思ったのなら、秘密にされたままの方が絶対いい結果に繋がるのだ!!


「それにしてもソフィアってば、ロランドの名前を聞いた途端に表情が崩れたわね。まだロランドのことが好きなの?」


「いつまででも好きですが?」


 あれ、変だな。お姉様が頭のおかしいこと言ってる。その言い方だとまるで、私がお兄様を好きじゃなくなる時が来るみたいじゃないか??


 断言しますけど、そんな時は一生来ません!!


 近い現象が起こるとしたら、それは私とお兄様が結ばれて幼い恋心が熟年夫婦のようなしっとりとした愛情に変わった時だけです! 「好き」から「愛」への変化だけですうー!!!


 そんな簡単なことも忘れてしまうなんて、お姉様は元気そうに見えて案外お疲れなのかもしれない。


 よろしい。ならばお兄様にもっとも詳しいこの私が、お姉様に思い出させてあげましょう。


 ――お兄様がいかに優秀でいかに最高でいかに魅力的でいかに扇情的か。


 大脳新皮質に焼き付いて二度と忘れられないくらい、徹底的に解説して差し上げましょうっ!!


「……うふふ。お姉様ったら――」


 ああ、嗚呼。なんて悲しいことでしょう。


 まさかお姉様が、お兄様と離れた悲しみのあまり、お兄様の素晴らしさを忘却してしまっているなんて。


 ――お兄様の優しさを語るだけで、涙が止めどなく溢れるのに。


 ――お兄様の頼もしさを語るだけで、胸がキュンキュン高鳴るのに。


 その全てを(うしな)っているなんて悲しすぎる。だから。


 ペロリと舌舐めずりをして気合を入れる。今日は久し振りに本気で、語ることとしよう。


 お兄様が如何に素晴らしいか。お兄様の魅力とは。その全貌を、余すことなく。



 ……聞き終わる頃には、お姉様もきっと、お兄様ハーレムに入りたくなってますよ? なーんて……。


 ……うふふふふふふ♪


Q.ソフィアの前でロランドを軽んじるとどうなるか?

A.洗脳されます。

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