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「ヨル様はとてもすごい(棒)」


 ヨルは、シンとは別の神様に処された可能性が高いらしい。


 そして復活して同じ存在でありながら別の個体となった新女神ヨルは、以前の自分を処した神様にこれから会いに行こうとしているらしい。


 自殺志願者かな?


「そうじゃなくてね。ほら、私はまたこうして存在しているわけじゃない? なら一度存在を失った私を再び女神として蘇らせたのは、私を滅ぼした本人としか考えられないと思わない?」


 思わない? と言われても……。全く思わないんだけどどうしよう。


 私なら、そもそも復活させるくらいなら初めから殺さないし、むしろ神なんて厄介そうなものを殺したなら、二度と復活できないように拡散する前の魔力を専用のアイテムボックスに隔離処理するくらいのことはする。復活させるなんて手間も相応にかかるし、わざわざそんな面倒なことをする理由は…………うっかり間違えて殺しちゃった時くらい?


 でも間違い程度でヨルは殺せ……、……相手も神ならいけるのか? どうだろ。


 私としては、ヨルは私が保険として常用してるみたいな遅延性の魔法でなんとか復活したのかと思っていたのだけど、そーゆーわけでもないのかな。よく分かんないけど、ヨル自身は自分を復活させた存在がいることをほとんど確信しているらしい。女神の勘だね。


 だからまたちょっとしたことで処されないように、あらかじめ交友を持っておきたいのだと言うヨルの主張は一貫している。


 言っていることは理解できなくもない。もし本当にヨルの言うような事が起こったのなら、それは確かに接触しておくべき相手だろうと私も思う。でもさ。


「魔力を融解する空気を浴びて抵抗する間もなく分解されたヨルが、時間を掛けてなんとか自力で復活までこぎつけたって説は、やっぱりないの?」


 私としては、やっぱりこの説が有力だと思うの。


 わざわざごり押すほどの根拠がないのは分かってる。でも……なんだろ。やっぱり無意識に地球との道が繋がっていて欲しいとか思ってるのかな。私の中で「地球へと続く穴は開いた」ってことを認めさせたい勢力が優勢なのよね。


 ……まあ、ヨルよりも強い神様なんて存在して欲しくないって願望も入ってるのかもしれないけど。


 やっぱり私は、まだ前世への未練が、捨てきれていないみたいだ。


 だけどヨルにはそんな事情は関係ない。

 女神のうっかり説を強硬に推す私の言葉を、不思議そうな顔をして否定するだけだ。


「ないでしょうねぇ。……貴女向こうの世界の空気をどうしても毒物だってことにしたいの? それとも、女神という存在を軽く見てる?」


「軽く見てないですっ!!」


 待ってやめて、お母様の前で滅多なことを言わないで!!


 ホント、女神をバカにしてるとかそういうことではないですから! 私のことを煽りまくって勝手に消えたヨルの最期が間抜けな感じだったら面白いかなーってちょっと思っちゃってるだけですからどうかゆるして!! 新生ヨル様は最上可憐な美女神様であらせられますっ!!


 ……ただそのー、ね?


 一回思い込んじゃった前提はそうそう消えてくれないと言いますか。ほら私、想像力が豊かなもので。


 ヨルがこう、地球に繋がる穴を無理矢理空けた途端、噴出してきた魔力を無効化する空気に呑み込まれ、悲鳴を上げる間もなく消滅していく姿がですね。まるで目の前で見ていたかのように思い浮かんでるわけでして、はい。


 この構図よりも印象的な絵ってちょっと思い描ける自信が無いんですよね。


 まだ見ぬ神様との壮絶バトルってのも、想像の余地がありすぎて逆に想像しずらいっていうか。神同士の本気バトルとか恐ろしすぎて、想像するのすら無意識に避けちゃうっていうか……ねえ?


 やっぱり平和が一番ですよ。


「ソフィア。今すぐに謝罪なさい」


 そして思考を読んだかのようなタイミングでの謝罪強要。

 暴力に頼らなくても、平和なんて簡単に脅かせるんだというありがたぁい御教示に涙が出そう。


 でも今は涙を流す前にやることがある。


 私はお母様の言葉が終わるや否や、即座に頭を低くした。


「ヨル様誠に申し訳ありませんでした女神様が不慮の事故で消滅するなんてこと絶対ないですよね私が浅はかでしたっ!」


「分かってくれればいいのよ」


 当然のように謝罪を受け入れるヨル。その横柄な態度のなんと見覚えのあることか。


 この女神、ホントは記憶があるんじゃないか? なんてちょっぴり疑いたくなっちゃうけど、わざわざそんなことをする理由がない。


 ヨルが偉そうでなんとなく癇に障るのは、もはや女神としての特性と考えて良さそう。なんて嫌な特性なんだ。謙虚で料理好きで世話焼きな特性とかだったらいいのに。女神っぽくはないけど、女神としての仕事もしてないんだから何も問題ないと思う。なんならリンゼちゃん同様、我が家に勤めてもらっても――


「ソフィア」


「はいっ」


 ごめんなさい嘘ですなんでもないです。


 心の中で全面降伏していると。


「納得したのなら、『穴』を用意してください」


 あー……そっか。そうよね。そうなるよね。


 ――第三の神。リスク。情報。対応策。


「分かりました」


 安全の為には情報がいる。


 リスクを承知で、再度、地球へと続くアイテムボックスを開くことを承諾した。


暴力がないから平和なのか。

暴力すらいらないから平和じゃないのか。


平和ってなんでしょうね。

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