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第三の神の存在


 ごめんなさいと話を聞いていなかったことを素直に謝罪し、神を相手に失礼を働く私にちまちまとしたお小言を呈するお母様を何とか鎮めた頃、ようやく「穴」を再度開くことを求められた理由が判明した。


 その理由というのが――


「……別の神様がいる?」


「その可能性が高いと思っているわ」


 シンやヨルよりも上位の神。もしくは、地球の神。


 そういった未だ認知されていない超越的な存在が、以前のヨルを消滅させたのではないかとヨルは言う。


 リンゼちゃんから渡された記憶を元に女神としての知識を統合して考察した結果、その可能性が高そうだという判断に至ったのだそうだ。


「私はヨルが消滅した原因って『地球の大気が逆流して、ヨルの構成魔力を分解し尽くしたから』だと思ってたんだけど、そうではないってこと?」


 私の言葉に、ヨルは「その可能性は低いでしょうね」と否定を返す。


「あちらは非魔力依存の世界だものね。あちらの大気がこちらの存在にとって有害な可能性はあるかもしれないけど、私と同等の存在がそんな事態に見舞われた程度で消滅するとは思えないのよね。彼女だって消滅の危機ともなれば無抵抗ではいなかったでしょうし、そうなると、彼女を封じ込めて処理した相手がいると考えた方が無難でしょう?」


 処理て。


 いやまあ、神様的には処理って認識で合ってるのかもしれないけど……なんとも価値観の違いを突き付けられる言葉だね。


「うーん……」


 それに、ヨルの最期の状況。


 確かに、言われてみれば……そう、なのかな? とは思うのだけど……。


 なんだか素直に「そうだね!」とは言えないもやもやしたものが胸の内にあるのを感じる。


 何かが違うのではないかと。既に得ている情報の中に否定する材料があるのに、それに気付いていないような。そんな違和感が拭えない。


 うーーん、なんだろ。私は何が引っ掛かってるんだろう。


 ヨルの言っていることは間違っていないと思うのに、なにかがズレてるよーな……。…………うーむ、ダメだ分からん。


 こーゆー時は思考をリセットするに限る。


「その『相手』は、なんでヨルを消滅させたのかな」


「そんなの決まってるじゃない」


 思考を整理する為に投げた言葉は、今度はリンゼちゃんに受け止められた。


「神が直接手を下すというのは、基本的には神の気に障った時よ。彼女が直前までしていた行動を思えば、今回の原因は、世界を跨ぐ穴を開けようとしたせいでしょうね」


 そう言って、いつもどおり感情の薄い瞳で私を見つめるリンゼちゃん。


 だがその言葉を聞いた私の方は、心穏やかではいられなかった。


 ……えー。それって、あのぉ。


 …………もしも、その「穴」が空く場所を教えたのが私だって相手方の神様にバレてしまいましたら、私もヨルと同様、ヨルより強い神様から抹殺対象として認定されかねないってこと、なんじゃあ、ないのかな……?


 ――以前求められるままに行動したように、何も考えずに地球へと続く(アイテムボックス)を再度開いた瞬間、闇の奥から伸びてきた手によって頭部が一瞬で砕かれる様を幻視した。


 ……荒唐無稽な妄想だと笑い飛ばせないのがキツイよねー。


 死亡時リセットのチート魔法があったって怖いもんは怖い。

 それに魔力無効化の特性が本当に存在するとしたら、時間遡行も条件付き発動魔法も全てまるっと無効化されて、私の第二の人生はそこで強制終了だ。ようこそ第三の人生が始まっちゃうかもしれない。


 ……いやいやいや。やっぱなしだわ怖すぎるわ。

 魔力が無効化されたら私ってば本当に無力すぎて生き残れるビジョンが見えない。


 小さく縮こまって強大な存在の目に止まらないようにせせこましく生きるくらいしかできることが思いつかないというか……。あ、わざわざ縮こまらなくても私ってば今のままで十分小さくて目立たなかったね。やったあ!


 …………いやいや、「やったあ」ではなく。

 抵抗する手段が皆無な現状をどうにかしないと。


 本当にそんな危ない存在に狙われてたんだとしたら、ヨル経由で私の居場所が特定される気がする。そしたら私だけじゃなくて家族も問答無用で巻き込まれる。私だけならともかく、お兄様を初めとするみんなが理不尽に命を落とすなんてことは到底許容できない。早急に何か対策を考えないと。


 それにしても、なんなの? なんで私にはこうも苦難が次々と降りかかってくるの? 神と敵対する対策とか人が考えることじゃなくない?


 私もできることなら神様の庇護の元でぬくぬくと生きていきたいんだけど、お目溢しとかしていただけませんかねぇ。無理ですかねぇ。


 眼前にいる女神様にちらと視線を向ける。女神様はお母様を恐縮させて実に楽しそうなご様子。庇護なんて与えてくれる気配や雰囲気は微塵もなかった。女神ぇ。


「リンゼちゃん。女神様って普通、苦労してる人を救ってくれたりするものじゃないの?」


「……? それは、創作物の話? そんな面倒なこと、あなただってしようとは思わないでしょうに」


 そう言われちゃうと返す言葉もない。現実って救いがないよね。


 悲しすぎる現実から目を背け、私はそっと瞳を閉じた。


 私の救いはやっぱりお兄様に求めるしかないみたいだ。脳裏に描いたお兄様のお胸に躊躇なくダイブする。


 はぁん、ソフィアちゃんはもうお疲れちゃんだよう。

 お兄様癒して〜。


自分の命<<<越えられない壁<<<お兄様の命。

ソフィアの愛は、お兄様を救う!……かもしれない!

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