村人の反応を見よう
「誰だ?」
「カッコイイでしょう?」
「ソフィアが以前作った人形です」
お父様にこそーり聞かれたので自慢しようと勿体ぶっていたらお母様にあっさりバラされた。
合ってるんだけど、人形の一言で済ませられるのはちょっと悲しい。
でもまだ自律式じゃないから自動人形は名乗れないし、人形ではなくもっとカッコイイ……だめだ、案山子しか浮かばない。
もう人形でいいや。
「それでゴテゴテとしてるのか」
貴族が身を飾るのはいいのに騎士様が身を飾ると文句を言われる文化は未だに分かんないな。
ゴテゴテいーじゃん。
「一応、従者と騎獣のつもりのようです。鎧はソフィアが動かせるそうなので問題ないでしょう」
「騎獣……いや、まぁそうなるか……ん? 鎧を動かす? ソフィアが中に入るのか?」
「入りませんよ、中身詰まってますし。動かすのはほら、こうやって」
疑問にお答えして、ヴァルキリー様をお父様の前に跪かせてみた。
ガションガションといい音が鳴る。これぞ鎧の醍醐味ね。
お父様はなんか呆けてるけど、近くで見たヴァルキリー様の繊細な造りに感動したとかじゃないんだろうな。
鎧の質感出すの結構苦労したんだけど、理解者がいないのは寂しいもんだね。
「……これはどうやって動いているんだ?」
「どうやってって、普通に魔力でですけど。見られてもバレないように足の先から伸ばした魔力を地中を経由して鎧に送って、内部から全身に行き渡らせて、後はこう関節を曲げて、ガションガションと」
跪いて俯いていた体勢から立ち上がって右手を胸に当てる体勢へ。
自然とこのポーズを取らせたけど、どこで見たんだっけなこれ。
あ、そうだ。おじいちゃんに命令された時の青兄様のポーズだ。
命令され慣れてる感出てたから印象に残ってたんだねきっと。
「地面、に……」
「ソフィアの非常識に驚くのは後にしてください。村長さんがお待ちかねですよ」
非常識とは失敬な。
確かに地中は魔力を多く含んでいて自分の魔力が放散しないようにする余分な手間がかかるけど、むしろその工程が楽しいというのに。
ただ動かすだけなら魔力なんか直線で飛ばすし、見えなくするだけなら魔力を透明化するか遠目では視認できないほど細い線で繋げればいい。
わざわざ有線で魔力供給してるわけだし充分常識的だと思う。
「ソフィア、動かしてください」
「あ、はい」
また聞いてなかったけど配送の続きですよね。
すぐそこだし、もう歩かせればいいか。
お父様にゴテゴテと言われた装飾をした騎士様は普通に歩いているだけでも確実に浮いている。
だがそれは注目の的であるということと同義。
誰もが注目したその時の顔を見れば、私の感性に共感し「あのカッコイイ騎士様は!?」となっている人を見抜くことも容易い。
ふふ、同志には手慰みに量産したミニヴァルキリーちゃんをプレゼントしてあげよう。
とりあえずオリジナルのヴァルキリー様にはフェルの手綱を握らせて、お父様の後を追わせた。
「ありがとうございます! みんな、食糧が来たぞ! 祭りの準備じゃ!」
「「「おお!!!」」」
お父様から食糧を受け取った村人達は大盛り上がりで、男性も女性も祭りの準備に走っていった。
ヴァルキリー様に目を留める人なんていなかった。
そりゃそうですよねー。
がっくし。
フェルとエッテがヴァルキリー様で遊びたがっているのに気付かないソフィアちゃん。
同志は身近にいるもんです。