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私ら、三角関係らしいよ?


「じゃあ、行ってくるね」


「行ってらっしゃ〜い」


 なんでもない休み時間。

 授業と授業の合間にある短い休息。


 カレンちゃんがお花摘み(トイレ)に行くのを見送っていると、そのタイミングを見計らっていたかのように、ひとつの影が私の前に滑り込んできた。


「ねねね、ソフィアソフィアソフィア! 今ってどっちが優勢なの!?」


「何の話?」


 前置きもなく、全く身に覚えのない質問をされて、頭の中に疑問符が浮かぶ。


 その僅かな時間に「待ちなさい!」と慌てた様子で駆けてくる女子が一名。なんだろ、いつもみたいにおふざけが過ぎて怒られてるとか? それともクイズでもしてたのかな?


 いずれにせよ情報が足りない。

 聞き耳でも立ててみようかと考えたところで、機先を制するように耳元に顔を寄せられていた。


「カレンとカイルくん取り合ってるんでしょ? 隠してても分かるよォ〜?」


「はぇぁ!?!」


 なんっ、なにそれどっから出た話!? そんな事実はどこにも転がってないんですけど!!?


 思わず変な声が出てしまい、さっと顔に血が集まるのが分かる。やばい、これ絶対誤解されるやつ! 血液の操作を――いや、その前に早く否定しないと――!


「ないない、そんなの無いから!! そんな事実無根な――」


「あ、カイルくんだ」


 バッ! と振り返り遮音魔法を――と身構えたところで、カイルが見当たらないことに気付く。同時に、罠に嵌められたとも理解した。


 ……ゆっくりと視線を元に戻せば、そこには想像通りの顔があった。


「……違うからね?」


「まだ何も言ってないけどぉ〜?」


 にやにや、にまにまと、まあ〜嬉しそうな顔しちゃって。

 妄想で楽しむのは勝手だけども、期待通りの展開にならなくても文句言わないでよ?


「やっぱり奪われそうになったのがきっかけで自分の恋心に気付いたの? それともまさかカイルくんの方からとかっ? そうなるとカレンは、二人の関係を知りつつも勇気を出して……?」


 ぶつぶつと一人で考え込む彼女の中では、私たちはなんと三角関係になっているらしい。


 現実には三角どころかただひとつの矢印(好き)すら存在しないというのに、どのような視点で見たら私たちが恋愛関係なんかに見えるんだろうか。ご自慢の恋愛センサーはとっとと修理にでも出せばいいんじゃないかな。


「こーら」


「あいたっ!?」


 そして虚言を弄する迷惑者は、お縄につくのが世の道理。


 私で遊ぶことに熱中していたせいか追っ手の存在を忘れていた逃亡犯は、あっけなく逮捕されてしまいましたとさ。ちゃんちゃん。


 これでやっと平穏な休み時間が戻ってくるよ。

 私の恋愛絡みの話じゃなければもう少し話してたいところだったけど仕方ないね。まだ次の授業までは時間があるし、残りの時間はお兄様へ差し入れるお菓子のメニューでも考えてようかな〜。


 ――なんて、この件は終わったと安心しきっていたのに。


「気になるのは分かるけど、直接聞くなんて思い遣りに欠けるわよ? ソフィアは恋愛に関しては初心もいいところなんだから、フォローは優しくさりげなく、でしょ?」


「えー、でもそんな消極的なやり方だとソフィアがカレンに負けちゃうよ? 身体で誘惑できないなら、やっぱり昔馴染みって強みを生かすべきでー」


「何言ってるの、カイルくんはソフィアみたいな子の方が好きなのかもしれないじゃない! 無垢な女の子が好きなんじゃなかったらなんでカイルくんは他の子に手を出さないの? あれだけ誘われてたら普通はつまみ食いくらいするものでしょう? それを全部断り続けるだなんて、好みに合わなかったからとしか考えられないわ。つまり、カイルくんは初物が好き。それ以外の理由はないでしょ?」


 ……この人たちは、なんでわざわざ人の席まで来て猥談を始めるんだろうか。慎みというものが欠如しているのだろうか。


 初めに座っていた者が追い出されるという構図には若干納得がいかないものの、それよりもこの話を間近で聞き続けることの方が苦痛だと判断し、私はそっと席を立った。


「……なんでみんなエロいこと好きなんだろ」


 それは、魂の嘆き。


 折角の特別クラス。

 見目の良い、貴族の少年少女たちの中でも選りすぐりの家系が集まって、さながら美男美女の博覧会のように目が幸せなこの空間に()るというのに、聞こえてくる会話がエロ談義。


 軽く悪夢じゃないかと。


「それはね、私たちが女の子だからなんだよ」


 独り言に返事をされて、驚いて顔を上げると。


「女の子がエッチじゃないと、子供は生まれてこないからね」


 先程私をカイルが好きな子に仕立てあげようとしてたのと同じ顔が、真面目っぽいことを言いながら、優しく微笑みを浮かべていた。


 ……それはいいんだけどさ。


「……手、離してくれない?」


「…………えへ?」


 いや、えへじゃなくて。ちょっと、そっちは。やぁだ、連行しないで!!


「あ、ソフィアおかえりー」


「本当にこういう話が苦手よね、ソフィアは」


 分かってるんなら違う話しようよ!?


 てかいくら双子だからってこんなとこまで似なくていいのに! 片方が不真面目ならもう片方は真面目なのが鉄板でしょう!? 両方不真面目とか迷惑すぎる!


 エッチな話は私抜きでやっててくださぁーい!!


ソフィアがクラスメイトで目の保養をしているのと同様に、クラスメイトもソフィアで目の保養をしています。

そしてソフィアは、照れてる時が一番可愛い。


byクラスメイト一同

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