姉妹の村に向かおう
「大変な思いをさせてすまない。領主として詫びよう」
村の食糧事情を聞いたお父様が姉妹に詫びていたけど、領主システムが難しかったのか理解度は半分といったところ。
お母様が丁寧に説明してアンちゃんから許しを得ていたけど、メイちゃんにはよく理解できなかったみたい。
それでもパンをおなかいっぱい食べて幸せそうではある。良かったね。
それでこそ私のおやつを食べ尽くされた甲斐があるというもの。
次からはもっと多めに保存しとこう。うん。
「村はもう大丈夫なんですね」
「ああ。遅れてすまなかった」
村では節約生活が始まっていてみんなでひもじい思いをしていたらしい。
早く食べ物を届けてあげないとね。
とは言っても、ここは森の中。
部外者の姉妹がいるのにまた空の旅をする訳にもいかず、かといって村への道も分からない。
当然、荷車を引いて通れる道もないし、そもそも誰が引くのって話でもある。
アンちゃんには幸い聞かれなかったけど、荷車をどうやって運んできたのかと問われれば湧いて出ましたとでも答えるしかないこの状況。
全部フェルのせいだね。
でも魔物に襲われてた幼い姉妹の危機を救った功績は責められない。
ペットの責任は飼い主の責任なのだ。
人命が第一だからね、仕方ないんだけどね。
でもどうしよう。
とか思ったのにフェルたちには村の位置が分かるみたいだった。
どうなってるんだろうねこの子達は。便利な魔法があるなら飼い主特権で教えて欲しい。
なお荷車については、
「貴女が仕舞っておきなさい」
「見られちゃうけどいいんですか?」
「やむを得ません」
お母様と相談してたらそういうことになった。
しかも将来的にアイテムボックスの魔道具化を検討して欲しいとか、なんか楽しそうなことまで言われてしまった。
アイテムボックスの最適化は長年の課題だったんだけど、最近はもう自由度が高すぎるのが逆に問題なんじゃないかと思い始めてたところなのだ。完全に行き詰まってたの。
これが魔道具となれば制約もりもり。
まだ作る側のことはあんまり知らないけど、発想の転換にはいいと思う。てゆーか単純に魔道具にも興味あるしね。
量産するならどんなアイテムボックスがいいかな、なんて、もう完全に頭がそっちにいってたのにアンちゃんが「神様なんですか?」なんてワードを出すから現実に引き戻されてしまった。
数日前にも神様なんて単語でプチナイーブになったばかりなのにとも思ったけど、荷車ひとつ消しちゃえばそんな発想が出るのも分かる。
正に人知を超えてるからね。
「私は神様じゃないよ」
「あ、ごめんなさい。ソフィア様、のことじゃなくて、あっ、でもなくてえっと、ソフィア様のことではなくて、ですね。この子、この白い子って、神様なんじゃないかなって」
はっずっかっしい!
私今、自分を神様だと思ってる痛い子になってた! 私ってそんなに神様に見えるかしら〜、とか思ってたよ! 自意識過剰でごめんなさい!
くそう、フェルかよ。フェルのことですかよ。
そりゃあ、絶体絶命の大ピンチに颯爽と現れて魔物を薙ぎ倒しちゃったー、なんて活躍を見たら神様にも見えるでしょうよ。
その挙句フェルが喋ったとか言っちゃうくらいフェルを神聖視しちゃうのも? まあ子供ですし? あるかもね?
でも自分が神様って、子供でもないわ。
しかも私、もう子供の言い訳が使えなくなってきた歳なのに、第二次性徴期なのに、神様って。
ちょっと魔法が使えるからって調子のってたよね。うふふ。
この黒歴史、どうしてくれよう。
「あの……」
「ああごめんね、敬語は無理に使わなくてもいいから。それとフェルは神様じゃないよ」
「そうなんですか……」
何故か落ち込まれた。
てかフェルが神様だったら君達神様に乗ってることになるんだけどそれはいいのか。
もう子供の考えは分からん。てゆーか私もフェルに乗りたかった。
でっかいフェル、乗り心地良さそうなんだもん。
あのふかふかふわふわに私も顔を押し付けて癒されたい。
「キュイ」
うぅ、エッテ〜。私の癒しはエッテだけだよ〜。
「ソフィア、遊んでいないで前を見て歩きなさい。危ないですよ」
「お母様、違うんです。私は癒されていたんです」
「変な事言ってないで二人の話し相手になってやれ」
「お父様まで!」