魔力=幽霊パワー?
私は考える。
そもそも、魔力とはなんぞや、と。
ものすんごく雑な言い方をすれば、魔力とは魂じゃないかと思うのだ。
先祖の霊とか、一寸の虫にも五分の魂的なあれ。
死者の念や幽霊と言い換えてもいい。
つまりはそーゆー非実態の存在達が、意志という己が己たる標を失った時に、現世への僅かな干渉力のみを残した存在となる。それが魔力なのではないかなーと、私は勝手に思っている。
魔力って意思の無い力って感じがするんだよね。
幽霊ってほら、ポルターガイストっていうの? 物揺らしたり電灯チカチカさせたりできるじゃん。首筋をそっと撫でたりとかするじゃん。要はあれが、魔法と似た現象なのではないかと思うわけさ。
その幽霊のイタズラが、レベルアップしたものが魔法。
幽霊たちの力を借りて、超常現象を起こすのが魔法。
ね? それっぽくない?
大体さ、もし本当に魔法が詠唱句の中で謳われるように精霊の力によって発現しているんだとしたら、私が今まで精霊を見たことないのっておかしいじゃないかって思うの。
私、常時魔法使ってるじゃん。むしろ使ってない時がないレベルで使いっぱなしじゃん。
もし精霊が魔力を糧に魔法を行使してるんだとしたら、私のトコにいて魔法使ってくれてる精霊さん、休みなしで延々と扱き使われ続けてることになるよね。ブラック企業も真っ青な極悪労働環境ですよ。精霊さんに寿命があったらこれまでに何人使い潰してるのか分からない非道ぶりですよ。
でもね、だからこそ「そんなのありえるの?」と私は強く問いたい。
この学院では魔法が上手く使えない人に「精霊の気を引くためには――」と指導するらしいんだけど、もし精霊に使われる人間の選り好みができるのだとしたら、私は間違いなく選ばれない自信がある。
当たり前だ。誰が好き好んで自分たちを虐げる存在に力を貸そうなどと思うのか。
……まあ世の中にいる一部の変態共の中には、私のように見目麗しい幼女……じゃなくって、少女に罵倒されることを至福とする人達がいることは、私が身をもって経験したから知っているが、流石に神秘の存在である精霊たちがそんな特殊性癖を患っているとは考えられない。というか、そんな事実はあって欲しくない。
――ネムちゃんと私が特段優秀な点を考えると、精霊変態論にも一考の余地が……。
いやないな。ないわ。魔力は私の指示に忠実だもん。勝手に集まってきたりとかキモイ動きしないもんね。
…………えっと、何の話だったっけ。
そうそう、魔力が実は力を失った魂なんじゃないかって話だったね。
リンゼちゃんによれば、世界の魂は全て輪廻転生で賄われており、基本的に増えたり減ったりはしないそうだ。私のアイテムボックス内に取り込まれた魂はその輪から外れるそうなのだけど、今はその話は置いといて。
で、この「増えないし、減らない」って特徴、実は魔力にも当てはまるんだよね。
……現在進行形で魔力を増殖させまくってる私が言っても説得力が無いかもしれないけど、これは本当のことなのだ。
素となる魔力が定量であれば、増やせる魔力にも限界はある。
言わば私の魔力を増幅させる魔法は、魔力を材料に魔力として使える魔力を増やす、魔力の嵩増し魔法なのだ。
それでね、魔法を使うには魔力がいるわけなんだけど、魔法に使われた魔力は何かしらの現象を引き起こしたあと、大部分が魔素へと戻るの。
で、魔法の発動に必要な力を失った魔素は、生き物の体内に取り込まれることでまた、魔力になる。
輪廻転生。
終わりのない永久機関の一部ってわけ。
このあまりにも似通った特性から、魂と魔力は本来同一のものではないかという仮説が成り立つ……と、思うのだけど。
まー確証もないし、実際にそうだったとして何がどーなるって話でもない。
魔力から魂作れそうだなーとか、生きてる魂からなら魔力いっぱい採れそーだなーとか思うけど、生命を弄くり回すのは私の中でも禁忌という意識はある。実験する気もないし証明したいとかも思わない。
ただね。
「魔法陣の中央、そこが起点……? 構成が魔力に変わる時には静止していた様にも見えたけれど、やはりボールでは形に特徴がなくて正確な状況が判りにくい……。いえ、出現した時には静止していたのだから――」
「可能性として最も考えられるのは――」
「証明に必要な条件は――」
ヘレナさんが私と同じ結論にたどり着いた時、ちゃんと我慢できるのかなって、ちょっと心配になるというかね……。
――人より魔力がよく視える魔法があって。
――魔力をしっかりと捕まえる魔法陣があって。
――魔力を変質させる魔法も使える。
……ヘレナさんって悪い人じゃないんだけど、出来ることを箇条書きにすると、かなりヤバい人な気がするんだよなぁ……。ヨルが目を付けるのも無理ないって言うか……。
ヨルがいなくなっちゃった今、ヘレナさんが何かとてつもない事をしでかさないか見張るのも私の役目になっちゃった感じがするんだよね。
願わくば、ヘレナさんには平穏な研究生活をずっと続けていて欲しい。
自分の世界にのめり込んでいるヘレナさんを見ながら、私はそんなことを思うのだった。
頼むよ、ホントに。
……頼むよ?
頭を使うと、甘い物が欲しくなりますよね。
ソフィアさん。タルト二種類、完食です。




