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主人公の特性


 泣き顔を見られるのは恥ずかしい。それは当然の感情である。


 でね。ここからが重要でね?


 恥ずかしかったら、顔隠すじゃん。俯くじゃん。


 そしたらお兄様が傍に寄ってきて、肩を優しく抱いてくれるじゃん?


 抵抗しようと思えば出来るけど、案外力強くて、振りほどくには大きく拒絶を示さないといけない絶妙な力加減で。

 甘えちゃってもいいんだろうかと迷う心を優しく後押しするように、ゆっくりと込められる力が強くなっていくのにも愛情を感じちゃったりなんかしてね。


 まあ、つまりだね。


 相変わらずお兄様は最強に最高ってことだよ!



 うっかり元の世界のことを考えすぎたせいで泣きまくった私は、タイミングよく部屋を訪れたお兄様に促されるまま、現在膝枕をしてもらっていた。


 私これめっちゃ好き。


 フェルたちもよくこの位置に納まってるけど、頭を撫でられるにはこれがベストなポジションだと認めざるを得ない。


 本当はねー、さっさと顔洗ってきた方がいいって分かってるんだけどねー。お兄様からは見えない角度だからまあ後でもいっかー、なんてねー。


 お兄様に撫でられてるだけでそーゆー、なんてーの。理性? 常識?


 そんなめんどくさい色々が溶けて消えちゃってく気分なんだよねー。あー落ち着く。


 頭をぐりぐりって擦り付けてみても、お兄様は嫌そうな反応なんかしない。


 それどころか、私が動いてる間は動きやすいように手を止めて、落ち着ける場所を見つけたのを見届けてからなでなでを再開してくれる優しさのエキスパート。こんなダダ甘な対応を泣いてた理由も説明しない私に施してくれるお兄様はもう聖人指定でも受ければいいと思う。


 そしたら聖女と聖人でお揃いだね!


 並んで歩いてたら「お似合いの二人ですね」なんて言われる未来もあるかもしれない! そしたらそしたら、仲睦まじく腕なんか組んでみちゃったりして、それを見た人から「式はいつですか?」なんて冗談混じりに言われちゃったりなんかしちゃったりして!


 ……うん、よしよし。ようやく調子が戻ってきたぞう。

 やっぱりお兄様は昔から、私の精神安定に必要な重要なファクターになってるんだよなあ。


 だいたい幼き日の私がお兄様に惚れたのだって、その溢れんばかりの優しさに、ハートがどっきゅんと撃ち抜かれちゃったからなわけだし。


 ……まあ、そのね?

 見た目がかなーり私好みなショタだったとか妹である私に優しくしようと試行錯誤する様子が愛らしすぎて心臓に過負荷がかかったとか私の異常性を知りつつ兄としては負けられないと頑張ってるのにどーしても上手くいかなくて泣いちゃいそうになってる姿に魂が震えたとかその他も色々エトセトラ、惚れる理由なんかいくらでもあるというかむしろ惚れる要素しかないとも言うべき極上ラブリーショタお兄様の健やかなる成長記録は私の優秀な海馬にいくらでも保存されてて語り尽くすにはとても一晩では足りないほどの量があるし当時の私が抱いていた感情や感想まで含めれば三日三晩を費やしても語り尽くせやしないんじゃというくらいにはお兄様への愛は昔からずぅっと変わらないオンリーワンでナンバーワンなトップオブに特別な愛情であるわけなんですけども。


 その長年の連れ合いにも似た二人の関係から、私たちの間には言葉にしなくても伝わるものが数多くあるんだけど、それにしたって最近のお兄様はちょっとイケメン度数が上がりすぎなんじゃないのかと思うのですよ。


 だってほら。例えば今って、もうすぐ日が変わる時間なわけじゃん。いつもなら寝てる時間帯ですよ。


 リンゼちゃんも部屋に帰して後は寝るだけ〜、な状態からちょっと想定外のハプニングが起きたからこそこんな時間に起きてたわけで。


 当然今日も、お兄様とこんな時間に会う予定なんかなかった。

 夜這いはいつでも歓迎だけど、夜中に遊びに来ることさえ今までには無かったというのに。


 なのに、今日は来た。

 今日に限って、お兄様は来てくれた。


 お兄様が来なかったら、悲しい夢を見ることが確定していたはずの今日というこの日に、お兄様は訪れた。


 私知ってる。こーゆーの主人公補正って言うんだよ。


 そしてお兄様が主人公なら、私は最終的にはなんやかんやの末攻略されちゃうメインヒロインポジションなんだよ!!!


 どうしよう。私はどうしたらいいんだろうか。


 ここは少女漫画的には最終巻の一歩手前だったりするんだろうか? だとしたらここで「実は私には、お兄様にも言えなかった過去が……!」とカミングアウトすることで最大の障害を乗り越えた二人の距離が一気に縮まったりするのだろうか。ゴールインへの道筋はこの方向であってる? どう?


 確認するようにお兄様の顔を見上げれば、とても優しい微笑みで迎えられた。物語終盤にありがちか悲壮感やら焦燥感なんて皆無。ちょーいつもどおり。


 ……打ち明けるのは今じゃないな。


 冷静に状況を分析した私は、眠くなるまでお兄様のお膝にお世話になることにしましたとさ。



 ……それにしても、お兄様の膝枕気持ち良すぎない?


 これ再現して商品化したらめちゃくちゃ売れそうだよね。商品名は「兄の愛」とかどーよ?


気持ちよさそうに撫でられているソフィアを見て、フェルとエッテはそわそわしている。

もちろん情報提供のお礼を兼ねて、後程たっぷりと撫でてもらったそうです。よかったね。

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