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魔力消失現象への対策案


 自分でも、偶に思うことがある。


 私はいったい何処へ向かっているんだろうかと。



 リンゼちゃんからヨルの話を聞いて、やはり対策は必要だと改めて思った。


 私、身体まで魔力で出来てるヨル程じゃないけど、魔力を消失させるタイプの攻撃に無力なんだよね。


 魔力の薄い場所に行くような状況に陥っても快適な常駐魔法を切らさないでいる為に魔力の複製なんて魔法を編み出したわけなんだけど、この魔法って、実はある程度の魔力が存在することが前提なんだ。


 魔力を生成する魔法じゃなくて、あくまで魔力を分裂させて増やすタイプの魔法なので。元となる魔力もその作業を行う魔力も必要なのさ。


 だからヨルの状況がどうだったかは定かじゃないけど、「身体中の魔力が消えていくぅー! うわああ魔力が少しも残ってないよー!」みたいなことになると流石に困る。困るというか、本当に何も出来なくなる。


 普段から魔法に頼りきった生活をしてるから、なんなら世界の見え方すら変わりそう。


 魔力で壁向こうにいる人の判別なんて当然できなくなるし、そうだ、視力だって下がるよね。

 目の届く範囲しか見えなくなるのに緊急時に身体強化することさえもできなくなるとか……、あっ、そもそも思考も……? 思考速度が落ちて、学院での成績が目も当てられない状態になるかもしれない。運動能力だって、ちょっと走っただけで息切れする可能性すら十分にある。


 うわあ。こうして改めて羅列すると、魔法を使えない私なんて本当に見た目通りの価値しかないな。完全に観賞用の美術品だな。


 大人に押さえ付けられたら逃れる術もないとか怖くて外に出られなくなっちゃうよ。それに今までは回避出来てたストーカーにすら気付けなくなるとか怖すぎる。今まで実害は殆どなかったけど、この機会に根絶させた方がいいのかもしれない。


 とまあ、ちょっと考えただけでも魔力にどれだけ依存してたのかが分かろうというものだ。


 だって便利なんだもん、魔力。

 水や火だって道具も使わずに好きなだけ生み出せるし、無人島に漂着したって魔力さえあれば何も問題は無いと断言できちゃう万能感あるよ、実際。


 なのでこれからも快適な魔力に頼った生活を永久に続けていくために! 魔力を消し去る何かに相対した時の為の対策を考えたいと思います!!


 でも私の思い付く対抗策って殆どが魔力頼り!!

 ぶっちゃけ逃げの一手しか存在しない気もするんだけど、それじゃ対策とは言えやしない!!


 なのでここはいつも通り、とても優秀な頭脳をお持ちのリンゼちゃん様にお知恵を拝借したいと思います。


 どうか魔力をこねくり回すしか脳のない私にもできる対処法を教えてくださいお願いします!


 聞いてみた。


「魔力の存在を許されない空間に閉じ込められた時の対処法? ……魔力を使わずに脱出するしかないんじゃない?」


 そうなんだけど、そーゆーんじゃなくてさ。


 意図がうまく伝わっていないように感じたので、私は女神ヨルの消失に端を発する私の不安をぶちまけてみた。


 そして改めてのクエスション。


「魔力を失わせる空気みたいなものが広がってたとしたら、どう対処したらいいと思う?」


「……空気なら、風でも起こして押し戻せばいいんじゃない? 得意でしょう、そういうの」


 何かが致命的に噛み合ってない。


 何度か会話を続けて、私はようやくその原因に気付いた。


 そもそもリンゼちゃんには「魔力の存在しない世界」というものがあまり想像できてなくて、それに加えて漫画なんかではよくある「お前の魔法は封じさせてもらった!」「な、なんだってー!?」な展開も知らないみたい。


 リンゼちゃんの中の常識では魔力はあるのが当たり前で、その存在を拒絶するような大気やらなんやらなんて存在は言われるまで考えたこともなかったそうだ。


「そもそも魔力がなかったら人も植物もみな死に絶えてしまうわよ」とか言われたけど、そうならない為にもこうして対処法を考えてるんですよ?


 それで、まあ。これまでの流れで想像はできてたけど。


 リンゼちゃんの最終的な回答はこんな感じでした。


「なんとかできる方法があるのなら、ヨルは消滅しないで済んだでしょうね」


 ごもっともな意見をありがとうございます。


 でもその答えを聞く為だけに無駄な時間を費やしたってなるとかなーり不貞寝したくなっちゃう感じなので、できれば私の労力に見合った情報もちょっとくらいはお願いしたい。


 私は信じてる。リンゼちゃんの可能性を。


 リンゼちゃんは正しい入力をすれば正しい出力を返してくれる優秀なアドバイザーだって、私は信じてるよ!!


「でもヨルは不意打ちだった可能性だってあるじゃん! あらかじめ魔力が消失する特性を知っていたらどうしてたと思う?」


 次こそ希望に満ちた返答が得られると期待する私に、リンゼちゃんは。


「……逃げたんじゃない? 彼女は存在自体が魔力の塊なのだから、その特性は天敵に過ぎる。何も出来ることなんてないわよ」


 元女神の観点から断言した。



 ……私にだって、天敵なんだよ?


 たかが人間が頑張ろうとしてるんだから、元女神様ももう少し気合い入れたアドバイス下さい。


 はい、別の意見よろしく〜。


ソフィアのストーカーにはいくつかのタイプがある。

オーソドックスな「可愛い子を見かけたら身体が勝手に!」。欲望に忠実なタイプ。

割りと多い「可愛いから見守ってあげなくちゃ!」。保護欲に忠実なタイプ。

少数派の「あの子供、迷子じゃ、ない……ないよね?」。お節介を踏みとどまったタイプ。


ソフィアの対応は基本的に放置。

なにせ彼女には、欲望に忠実な人の気持ちがとてもよく分かるので……。

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