森で出会った姉妹を餌付けしよう
でっかくなったフェルに抱きついている二人の女の子は仲良くもふもふに埋まっていた。
多分、姉妹かなにかだろう。
「フェル〜」
相手は幼い女の子だ。
警戒させないように子供の私だけで近付くことになった。
距離のあるうちから声を掛けつつ手を振り振り。
私、その子の飼い主ですよ。怪しいものではありませんよアピール。
「あれ、寝てる」
だが近づいて分かる新事実。女の子たちは夢の世界の住人になってました。
分かるよ、もふもふだもんね。
とか思ったんだけど顔を覗きこんでみればどうもそれだけじゃないっぽい。なんだか疲れてるように見える。
訳ありかなー。こんな森にいるんだもんね。
とりあえずお父様とお母様に報告したら、少し休憩をとることになった。
急ぐ事情がなければもっと良かったんだけど、これはこれでピクニックみたいでいいかも。
乗ってきた荷車をテーブル替わりにして食事をしていると突然お腹の音が鳴り響いて、音の発生源たる女の子が目を覚ました。
目覚めてすぐに辺りを見回す女の子。
私たちの姿を認めて警戒を露わにして、隣で寝てる小さな子を見つけて安堵の吐息。枕にしてたフェルには無反応アンド無警戒。ふむ。
「食べる?」
とりあえず手に持ったパン籠を差し出してみた。
これは出発前にお母様に渡された食事ではない、私のおやつである。
森の中で食べると美味しそうだけど食べ過ぎは良くないしどうしようかな、と迷っていたところへの人数追加。
渡りに船とはこのことか。
反応は劇的。
まだ警戒してるんだろうけど目がパンに釘付けになった。
やっぱり子供はお菓子か玩具で釣るに限るね。
再度お腹を鳴らした女の子が、意を決した様な顔で近づいてきた。
「い、いいんですか?」
「いいよ。そっちの子も一緒に、話を聞かせてほしいな」
素直な子は好きだ。
かわいい子ならもっと好きだ。
この子は両方合格。大好きだー。
「美味しいです」
「おいしい」
お名前はアンちゃんと言うらしい。妹ちゃんはメイちゃん。
起こされてすぐにお姉ちゃんと同様、パンに目を輝かせていた。微笑ましい。
早く話を聞いた方が良さそうかとも思ったけど、双子ちゃんの食べっぷりに同情した両親から「話は食事の後で」との許可も出ている。
「たくさんあるから好きなだけ食べてね」
「ありがとうございます」
お姉ちゃんはしっかり者だね。
妹がいるとこんな風にしっかりするのかな?
私の脳裏にソフィアソフィアと連呼するお姉様が浮かんで消えた。
アンちゃんがしっかりしてるだけだね。
ちなみに妹ちゃんは食事に夢中だ。
私も自分の食事に手をつけよう。
緩やかな風が吹く森の中、私と姉妹、三人の背もたれになっているフェルが欠伸をしていた。
なごむ。
異世界。それは、空からフェレットが降ってくる世界。