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リンゼちゃんが起きました


 私、これでも頑張ったんだよ?


 ちゃんとリンゼちゃんの体調にも気を付けて、異変があったらすぐに対処出来るよう気を張りながら事を進めて、無事リンゼちゃんが目覚めたと安心してたら起き抜け一番不意打ちドン。


「やってくれたわね」って、そりゃないよリンゼちゃん。


 もしかして寝てる間も意識あった系? だとしたらあの、胸の成長を念入りに確かめた件はどうか内密にお願いしたく。


 あれはほら、健康診断みたいなものだから。触診だから!


 やましい事はなーんにもないよ!


 きっとリンゼちゃんが実は起きたくても起きられない状態だったと気付いていた私の無意識が私の身体を勝手に動かしたとかそーゆーアレだよ。むしろ救いの一手なんだよ。いやー無事に目覚めてよかったよかった! これで何も問題は無いね! 無いよね! ねっ!!


 ぱちりぱちりとアイコンタクトを飛ばすも、リンゼちゃんは私の方を見てもくれない。


 気だるそうに身体を起こすと大きな嘆息。


 思わず身体がびくりと跳ねちゃう。

 ごめんよ、そんなに怒るほど嫌がるとは思わなかったんだ。今度お菓子でも差し入れるから許しておくれよう。


「……急に起きても大丈夫なのですか? 体調に問題はありませんか?」


 私がビクビクしてるのを見かねてか、お母様が声を掛けた。


 その声を聞いて、リンゼちゃんはまるで、今初めて周りに人がいることに気が付いたような反応を見せた。


「…………ああ、そうよね。いえ、失礼しました。体調に問題はありません。ご心配をお掛けしました」


「そう、ですか……」


 問題は無いと本人が言っているのに、お母様はまだまだ心配そう。


 その心配度合いたるや、実子である私にすら向けられた事がないようなレベルなんだから、お母様にとってのリンゼちゃんがどれほど大切な存在なのかが分かろうと言うものだ。


 私もそのくらい心配されてみたいなー。

 病気も怪我もなったことないから、その機会がなかっただけってのは分かってるつもりなんだけどさー。なんだか寂しいなー。


 少しだけ居た堪れなくなって二人から距離を取ったところで、肩をツンツンつつかれた。なんでしょうとアイラさんの方へ振り返ると「アイリスっていつもこの子にこんな丁寧な態度なの?」と疑問顔。「そうですよ」と無難に返事をしておいた。


 まーね。神様が自ら望んで使用人になりに来たとか前もって話を聞いてたところで訳わかんないよね。


 家族の中で一番信仰心が(あつ)いのに立場的には雇い主になっちゃったお母様の心の中はさぞかし複雑なことになっちゃってそうだよね。もっと適当に扱えばいいのに。


 今だってほら、リンゼちゃんは何か考えながらぼーっとしてるだけなのに、お母様ってば自分が見つめられてると勘違いでもしてるのか、なんだかアワアワしちゃってるし。


 いつもあれくらい近づきやすい雰囲気だったらいいのにね。


 せっかくの美人顔なんだから、もっとあどけない表情とか、照れた表情とか。色々見せてくれたらいいのに。


 美人には周囲にいる人の目を楽しませる義務があると思うんだけどなー。いっつも貼り付けた仮面みたいな顔ばっかりじゃ、そのうち顔がその形に固まっちゃって……はっ!? まさか既に、その段階に!?


 おお、なんということだぁ!!

 となれば久々に見たオロオロお母様も、もしかしたら今日が最後になる可能性すらあるのか! これはいけない、しっかりと目に焼き付けておかねば!!


「ん? ソフィアちゃん何してるの?」


「気にしないでください」


 録画を、録画をせねば。


 魔力を用いた魔法的記録媒体にお母様の貴重な映像をしっかりと焼き付けねば! と沸き上がる使命感に背中を押され、瞑目したまま指をちょいちょい動かしながら集中を高めていく。


 あとは遠見の魔法の要領で、お母様の間抜け面を至近距離で――ッ!?


「……ソフィア? 何をしているのですか?」


「何もしてません」


 至近距離どころか近づける前にバレた。


 なんでだ。本当になんでだ??


 世界の理に真っ向から喧嘩を売るお母様の感知能力をそろそろ解き明かすべきかと考え始めた私の視界に、なんだか深刻そうな雰囲気のリンゼちゃんが目に入っ……、……いや、リンゼちゃんはいつもあんな顔だよね。何考えてるのか分かんない真面目顔。なんでいつもと違って見えたんだろ?


 不思議に思って観察してたら、リンゼちゃんと目が合った。


 ふむ、やはりいつもと違う……いや、これは寝起きで目が垂れてるだけ……? わっかんないなこれ……。


「ソフィア。話しておきたいことがあるのだけど」


「はいっ!」


 やばい、完全に油断してた。


 リンゼちゃんは悩んでたんだ。

 私が寝ているリンゼちゃんの身体にイタズラしてた事を、いつバラすのが最も効果的か悩んでたんだ!! おお、ジーザス!!


 もはや万事休すかと身を固くする私を見据え、リンゼちゃんは口を開く。


「ヨルが……女神が昨夜、消滅したわ。その時に意識の一部を私の中に緊急避難させてたみたいで、今の私は、ヨルの意識が混ざった状態になっているの」



 ……………………何を言ってるのか、イマイチよくわかんないけど。


 とりあえず、今すぐお母様に怒られる心配はなさそう! 良かった!


「あの子、本当に女神様の関係者なのねぇ……」

「この家に来てから驚くことばかりですね」

伯母主従は当たり前のように交わされる会話に密かに驚いていた。

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