幼い姉妹を保護しよう
妻と娘を守る為、果敢に魔物に立ち向かうお父様。
と、珍しくカッコいいお父様のジャマをするのは大変恐縮なのだけど。
残念、お父様が対峙しているのは我が家のペットだ。
なんとなく、居た堪れない空気が流れた気がする。私とお母様の間で。
「あれはフェルです」
私この空気苦手。
微妙な雰囲気はドカーンとぶち壊してさっさと楽な空気に変えちゃうに限る。
「フェル? そういえば元々は大きかったと聞いていたが、あんなにでかいのか?」
「あんなにでかいんです」
そうだよね、普段は肩に乗るサイズなのに急に大木サイズになったらビックリするよね。私も驚いてるよ。
なんで元のサイズに戻ってる上、あんなに悪意振りまいてんの。
大丈夫なのかなあれ。魔物に戻ったとかそーゆーのじゃないよね?
「あれは大丈夫なのですか?」
「えーっと、大丈夫なの?」
「キュイ!」
大丈夫らしい。
まあ大丈夫じゃなくても転ばせてくるだけだから害はないんだけど。
「大丈夫みたいですよ」
そもそも子供抱きついてるしね。
もしもフェルが野生の魔物に戻っていたら、大人だろうと子供だろうと、目を逸らした傍からすってんころりんされているはずだ。
それをあんな風に身体に抱きつかせているなんて、なんて……羨ましいなあれ。モフモフに半分埋まってるよ。
すっごい気持ちよさそう。
「確かに、以前よりは悪意も魔力も少ないですね」
へー、そうなんだー。
お母様の解説めっちゃ助かる。
以前は魔力の見方とか知らなかったから、魔物時代のフェル達の怖さがよく分からないんだよね。
でも今は私たちの家族で、癒し担当で、しかもモフモフ担当まで兼ねられそうなことが判明したかわいいペットである。
あとで存分にモフらせてもらおう。
でも今は。
「あの子達、どうします?」
「まずは話を聞く必要があるでしょうね」
フェルに抱きついてる二人の女の子。
幼すぎる。私よりも年下だ。
「子供がこんな森にいるなんて不自然ですよね?」
「……そうですね」
一瞬お母様が私を見た気がしたけど、気のせいということにしておこう。
「おい、本当に大丈夫なんだろうな。フェルと似てる別の魔物とかじゃないんだな?」
「大丈夫ですよ、エッテが見分けられますから。ね?」
「キュイ!」
未だ剣を収めないお父様。まだ警戒してるみたいだ。
フェルみたいなかわいい魔物がそうそういるわけないのに。
そんな天国みたいな魔物の群生地があったら私のアイテムボックス内は動物園になってしまう。
あ、いいなそれ。フェレットの楽園。
アイテムボックス内の楽園化プロジェクト、ありかもしれない。
自分だけの動物園計画を真剣に検討しながら、私たちはフェルの元へ向かった。
お父様の見せ場はまだ来ない