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転移魔法陣にできること


 ……あのね。


 …………全部。


 ……………………勘違いでした。


「ふむふむ、成程……。あ、ソフィアちゃん。次はこれをお願いできる? 私は魔力の回復にまだ時間が掛かりそうだから」


「はーい。いくらでもどーぞー……」


 いや全部が全部ってこともないんだけどね?


 少なくともこの魔法陣で人を害する事はできなさそうだし、もちろん私をどうこうって事も……うーん、可能性としては無くもなさそうだけど、これ単体ですぐにどうこうってのはなさそうな事は確認できた。最低限の安全は確保されたとみていいだろう。


 まあ普通に考えたらそうだよね。

 そんな女神(ヨル)にまで通用しそうなアイテムがポンと作り出せるわけないよね。なにせ基幹となる魔法陣は女神の分体であるリンゼちゃんからの提供だった訳だし。リンゼちゃんは常識あるからそんな危険物だったら軽々しく渡さないって多分、ははは。



 ……あの魔法陣のお披露目の後、それとなぁーく魔法陣の危険性について確かめてみたわけさ。ヘレナさんはどこまで危険性を把握してるのかなーって。


 そしたら「危険性なんてないわよ。むしろスゴいんだから!」と自信満々に大奮起。自ら出口側の魔法陣をひっぺがして、書棚の側面に裏向きでペタリ。続いて地面に置いた魔法陣もシャルマさんの手伝いを経て四分の一ほど回転させ、中心部分に(まき)をポン。

 私を手招きで呼び寄せると「さあ、魔力を注いで頂戴! この状態だと、薪はどこに出てくると思う? うっふふふ〜♪」と実にいい笑顔。どこまで楽しいのか身体も左右に揺らして上機嫌。確かに危険は無さそうな雰囲気だった。


 それならばと僅かに警戒を弛め、言われるままに出現予想地点を割り出そうと魔法陣が貼られた書棚を見れば、紙の束が隙間無く詰まっていて余分な空間なんて皆無。


 間違いなくあの紙束をくわえ込んだ世にも奇妙な薪が書棚に新たな芸術アートを花開かせるだろうと予想したのだけど、私の予想は見事に外れた。


 魔法陣に魔力を注ぎ込み、薪が消失。ここまでは先程と同じ流れ。


 だが消えた魔力が現れた場所は、書棚の()

 魔法陣が貼られた場所のほぼ真横に現れた魔力は、即座に薪へと変貌。そのまま重力に逆らわず落下を開始し、今度は絨毯にでも当たったのか、ボスっと鈍い音を立てながら椅子(視界)()へと消えていった。


 なんかね、転送先に物があるとその近くの空間にズレて出てくるらしいんだよね! 意図してのものではないらしいんだけど、ヘレナさんは「片付ける必要も無いなんてすごいわよね!」って自慢してたよ、あはははは!


 マジで意味わからん。


 意味わかんなすぎて何回か試させてもらったんだけど、どーも転送する物体の大きさをあらかじめ把握してるっぽい。


 多分送り元の魔法陣で魔力浸透させた時? もしくはその後、物質を魔力に変換した瞬間とかかもしれないけど。


 で、送り先に現れるスペースが無い場合は、近くに出てくる。

 出口側の魔法陣が向いてる方向限定で、範囲は半球状? 限界距離は不明だけど、少なくとも数十センチくらいはズレてても平気そう。空間に余裕のある場所に出てくる。


 数回程度の試行じゃ原理なんてわかんないけど、私が心配したよーな事は起こりそうもないって事だけはよーく分かった。わかんないけど分かった。


 で、そんな確証が得られるほどにポンポン転送してたら、ヘレナさんがね。「もしかしてまだ魔力に余裕があるの? だったらちょっとお願いが……」って魔力タンク役に指名されちゃった訳さ。


 そーだよね。一回であんなに息切れするようじゃ、ヘレナさんが満足するまで実験なんてできてるわけないよね。シャルマさんの目もあるしね。


 その心配の目が今度は私に向いているんだけど、ここはなんと言って誤魔化すべきだろうか。

 私には魔力切れとか無いから心配される要素は皆無なんだけど、シャルマさんにそんな純粋な目で見詰められると騙してるみたいで心が痛い。


 ハロー、ようこそ罪悪感。

 傲慢な私は今こそ仕事しろ。いつもみたく「美人に心配されるなんて役得いやっふぅー!!」とお気楽になりたい。スイッチ切り替わるまでそんなに見ないで。


 そう思いながらも、つい普段の調子でパクパクお菓子を食べてたのが良くなかったのか、お茶菓子の補充に近寄ってきたシャルマさんから遂に「あの……本当に大丈夫ですか? 無理したりしていませんか?」と優しいお言葉を頂戴してしまった。無論、即座に「大丈夫です。無理なんてしていませんから」と返すも当然の如く信用されず、シャルマさんはますます心配そうな顔になってしまった。ああああ、どうすればいいのこれ。


 内心で慌てていると、補充されたばかりのお菓子に伸びる手が。


「そーよ。ソフィアちゃんはすごいんだから大丈夫よ。私と違って自己管理くらいできるわよ! ねー?」


 バリボリと咀嚼音を立てながらヘレナさんが宣言。


 あの、食べカス。食べカスがめっちゃ落ちてる。もっとゆっくり食べて。



 そんな感じで、女三人。

 わいわいしながら転移魔法陣の検証を繰り返したのだった。


シャルマが心配したのは残存魔力量もあるけど、むしろ精神面が主。

入室時から、楽しげ→緊張→疲弊、と来てからの魔力タンク要請。

お菓子の減り方がいつもより明らかに遅かったのも心配の原因だったみたいですよ。

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